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Unknown  作者: 朔望
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5-[Down the Rabbit‐Hole]




Memory of N


「うぅ・・・ユ、ユーリ、、、ユ、ウリ」弱った声がした。

 最初に切った餓鬼の声だと気づく。

「お、何だ!お前起きてたのか」俺が殺し損ねていたことに驚き、玩具がまた動き出したことに喜んだ。

「トーマ、お前生きて・・・・・」さっき、倒れた餓鬼が言う。こいつも虫の息だな。

 二人とも放っておけばそのうち死ぬだろう。

「うぐぅ・・・・」最初の餓鬼(確かトーマとか呼ばれていた)が、呻く。

「大丈夫か?」二人目(こいつの名は知らん)が言う、テメェも死にそうなんだっつの。

「あらあら、痛いかい?洩らしそうか?死にそうかい?なら俺が楽にしてやるヨw」興奮してきた 俺は笑い声を上げながら言う。

「や、め、、、ろぉ」二人目が言う。

 俺は、腕を振り上げる。そして、餓鬼に振り下ろす。そうしようと思った。だが

「うわぁ、道路が真っ赤だぁ〜〜」幼い女の声。

「おっと、また生贄だ、お前らはもちっと待ってろ。すぐ終わらせるからよw」全く次から次へと、神ってやつは何考えてんだか。ま、そういうの俺は好きだぜ。

 今日はまさに人殺しの為にあるような日だな。そう思うと笑いが漏れる。

 少女の前に立つ。腕をゆっくり上に上げる。世の中の汚いことを何も知らない、そんな目で俺を見る。止めてくれ、止めてくれぇ、ヤメテクレ、ヤメテクレェェェェェェェェ そんな目で見つめられると・・・・おれは、俺は・・・殺したくなるだろぉ!!?

 腕を振り下ろす。



Memory of T


 上へと上っていくと穴が見えた。

 黒くて暗い穴だ。入ったら最後何処までも落ちていきそうな・・・・

 そんなことを考えていても、僕の意思とは関係なく体は穴へと吸い込まれる。

 やがて、床に降り立つことができた。

 穴の中は思ったとおり暗かった。入ってきたところは見えない。消えてしまったかのように。

 周りは漆黒の闇に包まれていた。だがどういうわけか自分の手や、足はよく見えた。

 そのうちに目の前にそれまでとは違う景色が現れた。暗闇の中にはっきりと。

 森だ。城もある。遠くには山々も広がっていた。いろいろな動物もいる。飛んでいるもの、地を這うものさまざまだ。それは途轍もなく沢山いた。

 だが、歩いていると気づく。この景色はどこかおかしい。

「そうか!!!」思わず声を出す。

 この中には死んだ、生命の活動が停止したものがない。枯れ木も、枯れ草も、虫の死骸も、動物の死骸も・・・・・・

 そのうちに城へとたどり着く。

「すいません、誰かいますか?!!?」そう、門へと向かって叫ぶ。

だが返事はない。ためしに門に手をかけてみる。すると驚くほど呆気なく、簡単に開いた。

 人の気配は全くない。だが、城の中が荒れているというわけではない。

「ここには人は一人もいないのか!!?」愕然とする。

そうか、ここは人ではなく自然が世界を支配することでできる世界。

 人がいなくなることで成立する世界。

 そんな寂しい世界はいやだ。有利と笑い会える世界に戻りたい!!

 僕は戻りたい!!!

 すると、さっき通り抜けた門のほうから下品な笑い声が聞こえる。

 振り向くと男の背中が見えた。門の向こうだけ世界が違う。

 男はその大きく尖った腕を天に向けている。その前には幼い少女がいた。

 その瞬間、さっきまでの記憶がよみがえる。


「や、やぁ、やめろぉおおおぉぉ!!!」

男へと手を伸ばしながら門に入っていく。


  一瞬目の前が真っ白になる。



Memory of Y


 下へと落ちていくと、穴が見えた。

 白く光り輝く穴だ。入ったら最後その光で身を焼かれそうな・・・・

 だが俺がどう思おうと、俺の意思に関係なく体は穴へと運ばれていく。

 暫らくして底に足が着く。

 穴の中は見た通り辺り一面すべて白かった。入ってきた穴はもうなかった。そう、まるで光に掻き消されたかの様に。

 この白銀の世界は何処までも続いていた。だが何故か眩しいわけではない。

 そのうち白銀の景色に違う映像がゆっくりと浮かび上がってきた。

 街だ。だが炎や弾丸の痕がある。戦場のようだ。そこには様々な死体が転がっていた。人の死体。うつ伏せで血を流すもの。焼け焦げたもの。銃で頭を撃ちぬかれたもの。犬の死骸。焼けた蝶。炭化した木。まさに地獄絵図だった。

 しかし、その中を進んでいくといやでもわかる。此処はおかしい。

「くそっ」思わず嘆く。

 この中には生きているものがいない。これだけの死骸の山だ、腐肉を漁る蝿がいてもよさそうなものだが・・・・・いない。

 そのうち中央が噴水になっている広場に出る。

 そこでは、何人かのさまざまな人種の少年少女が鬼ごっこのようなものをして遊んでいた。 生きている人に会えたことでいくらかホッとした。すぐ近くに戦場が広がっているのにこんなにも平和な風景が目の前に現れるなんて。戦争なんて関係ないんだろう。

 心からの喜びの笑い声が上がる。鬼が誰かを捕まえたのだろう、そう見当をつけ声の方向へと目を向ける。だが、そんな思いはすぐに掻き消された。

 笑い声の主は二人いた。一人はさっきまで鬼のようなことをやっていた少女、もう一人はその少女につかまったと思われる少年。これだけ聞けばよくある遊びの1コマだ。だが二つだけ違うところがあった。少女の持った赤黒く光るナイフと、少年の着ているTシャツに広がっていく赤いしみだ。だが二人とも子供特有の笑い声を上げている。心から楽しいときにあげるあれだ。俺が呆然としていると、子供の一人が俺に気づいたようだ。俺のほうを指差して何か言っている。言語は分からない、聞いたことのないようなしゃべり方だ。

すると全員が俺のほうへと近づいてきた。俺は一歩下がる。ほとんどの子供が凶器を持っていたからだ。

 一人が鎌を振り上げて走ってきた。俺は後ろへ逃げる。

「お、おい、なんだってんだ」

だが、所詮相手は子供、軽く走っていても追いつかれることはなかった。初めのうちは・・・

 そのうち足音近づいてくるのが分かった。後ろを振り返ると、そこにはさっきの子供は立っていなかった。代わりに刀を持った少年が走っていた。

「うそだろぉ!!」俺は走る速度を上げる。

 後ろの足音も早くなる。振り向くと銃を持った青年が立っている。

「ふざけんなよ!!!!」さらに速度を上げる。

 足音が遅くなる。振り返ると老人が何かのリモコンを持っていて立ち止まろうとしていた。

「あぁ?」俺も立ち止まる。

 老人が真ん中のボタンを押す。何も起こらない。だけど・・・

 そのうちに何処からか地響きのような音が聞こえてきた。

 音のほうへ、空へと顔を向ける。するとロケットのようなものが此方へと向かってくる。側面にあるマーク、マルの周りに台形が三つある、それだけはよく見えた。

「じょ、冗談じゃねぇ!!!」必死に反対方向へと逃げだす。

「畜生、何処なんだよ此処は!!!!!!!冬真は何処に行ったんだよ。あぁ、糞!!!」

ずいぶん走った、そんな気がした。角を曲がると目の前にアーチ状の門が現れた。躊躇うことなくくぐる。

 すると、後ろから野卑な笑い声が聞こえた。すぐになんなのか分からない。振り向くと門の向こうに男の背中が見えた。だれだ、分からない。その更に前に横たわっている体が見えた。これはよく知っていた。

「冬真!!!!!!!!!!!!!」思わず叫ぶ。

 刹那、さっきまでのことが頭を駆け巡る。

 俺は帰らないと・・・・・・・!!!


「やめろぉぉぉおぉおぉ!!!」

 叫びながら門へと走る。

 門の上に核ミサイルが見えた。


  目の前が暗くなる。



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