2-[A mythical opening.]
Memory of T
やっと、有利が出てきた。こいつ絶対僕がまだ遅いと思ってたんだ。
「おはよう」
有利が出し抜けに言う。
「お、おはようぅ!!」
「また、今日は朝からうるさいなw」
「そんなことは無い、君が遅いからだよ」
「いつもより少しばかり早く来たからって威張れることじゃねーよw」
少しむっとしたが、言い返す言葉が無くて俯いた。
少しして、有利が思い出したかのように言う、
「そういやお前宿題終わったのか?」
「むぅ、失敬な!ちゃんと終わったよ!!」
また、イラッとすることを。でも、まぁこんな会話も久しぶりだと思うとなんだか楽しい。
しかし、黙って馬鹿にされ続けるわけにもいかない。何か言い返そうと口を開いた。
「君だってさ、t――――――――」
「キャーーーーー!!!」
一瞬何の音かわからなかった。それが悲鳴だとわかると、有利と顔を見合わせうなずいた。
「いこう!!」
「あぁ!!」
声の方向へと走り出す。そのときはただ好奇心だけだったんだ。僕はまだあんなことになるなんて思っても見なかった。
Memory of Y
ドアをくぐり朝日の下に出る。
冬真の顔を見ると少し怒っているのが見て取れる。
「おはよう」
突然俺が言うと、
「お、おはよう」
と、鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔で言い返してくる。
「また、今日は朝からうるさいなw」
「そんなことは無い、君が遅いからだよ」
「いつもより少しばかり早く来たからって威張れることじゃねーよw」
そんな風に冬真をからかう。こいつが怒るのはわかっていた。でも、こいつがそんなことはすぐ忘れるのもわかっていた。
「そういやお前宿題終わったのか?」
「むぅ、失敬な!ちゃんと終わったよ!!」
もう一度からかう。こんな会話も久しぶりだったし、何より冬真の隣が心地よいせいか今日は口が軽い。
「君だってさ、t――――――――」
「キャーーーーー!!!」
珍しく言い返そうとしたが、近くの悲鳴にかき消される。冬真を見る。まだそれが何なのか分かってないのかぽかんとしている、が、すぐにこちらを見る。俺はうなずいた。
「いこう!!」
「あぁ!!」
声の方向へと駆け出す。そのときはただ、何かあったのかという疑問だけだった。
俺はまだあんなことになるなんて予想もしてなかった。