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七つの瓶  作者: リコヤ
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3

 むっつりと怒っているわたしの肩を、門倉さんがなだめるようにぽんぽんとたたいた。

「まーまー瑠璃ちゃん、機嫌なおして。二人がそんなこと企んだから、いろんなもん見れたんだし?ここはそれで許してあげなよぅ」

「それは……確かに、そうなんですけれど……」


 旅に出るなんて、しかも憧れの『七つの瓶』を探す旅なんて、ときどきボンヤリ思い描く程度で、実現できるものだなんて考えたことなかった。長期間の旅行なんてしたことないから、そもそも想像つかなかったこともある。

 それが、突然旅立つことになって。

 揃えられなかったら、家がなくなってしまう――そんな重圧を背負わされての出発だったけれど、考えてみると、すぐに薄れて『七つの瓶』探しに夢中になっていた。我に返って後ろめたさを覚えても、見るもの聞くものすべてが新鮮で、好奇心のほうが勝っていた。

 そうよね、せっかくの旅の締めくくりを、こんなことで台無しにしたくはない。


 ふうっと息を吐く。

「……わかりました、そうします」

「うんうん」

 お父さん達があーよかったと安堵する姿を見ると、やっぱり腹は立つけれど。とんでもない大人達だ。反省してほしい。思わずキッとにらみつけてしまう。


 切り替えるように、明るい声で門倉さんが言い出した。

「そんでさ?瑠璃ちゃん。これ集めるとなにかあるんじゃないの。ドロシーさんが言ってなかった?」

 ああ、そうだ。ハルシオンでお別れするとき、先代のノートに書いてあったと教えてくれたことがあった。

「え、なになに、なにかあるのかい?」

 聞きつけて身を乗り出してくるお父さん達。調子がいいんだから、まったくもう。

「蓋を開けて並べてごらんって、言われました」

「ふーん?んじゃ瑠璃ちゃん、順番に」


 わたしは端の瓶に手を伸ばした。

 『赤』、葡萄酒。『橙』、サイダー。『黄』、香草のお酒。『緑』、シロップ。

 なにが起こるのかという期待で、少し手が震えてきた。このままじゃ、そのうちこぼしてしまいそうだ。深呼吸をしても落ち着かないけれど、しないよりはマシ。

 『青』、果物水。『藍』、ブランデー。そして……『紫』、清水。

 最後の瓶の蓋を開けてテーブルに戻した。

 なにが起こる……?緊張して、自分の心臓の音がよく聞こえる。


「あ……」

 ふわっと『赤』の瓶から光が立ち上った。橙、黄、緑……と続けて光が立ち上る。

 七色の光の帯。

「虹、だ……」

 七つの瓶から、天井に届く程度の小さな虹が生まれた。小さいのに、とても美しい。

 空にかかる虹は鳳凰の軌跡と言われるけれど、これはなんだろう。中身が光になっているのではないよ

うだ。


「へぇー……」

「おお……!」

「親父もこれを見たのか……!」

 門倉さんやお父さん達も、目を見張って虹を見上げている。


 虹から小さな光が降ってきた。水ではないけれど雨のように、七色の光が。

「きれい…………あ、れ?」

 小さな光の中に、誰かの姿が見える。

「……オーダンさん……?あ、ミランさんにクルフさん……」

「おっ、喫茶クローバーの連中だ?」

 この旅で関わった人達だ。

 近くを通り過ぎた光の中に映った人物を見て、門倉さんが首をかしげた。

「え、これ誰だっけ?」

「えーと……あぁ、ウラナムの宿のご主人ですね……」

 光は次から次へと降ってくる。その中には必ず人の姿が映っている。

 情報を求めて訪ねた酒場の人、泊まった宿の人、馬車で乗り合わせておしゃべりした人、残念ながらどこで会ったのか思い出せない人もいる。

 でもすべて、一年の旅の間に出会った人達だ。

 一年の間に、こんなにたくさんの人と出会ったんだ……


「る、瑠璃?なにか見えるの?」

 きょとんとしたお父さん。なにを言ってるんだろう。

「うん、降ってくる光の中に……」

「降ってくる光?お父さんには見えないよ、虹ができてるだけじゃないの?」

「私にも見えないな」

 社長さんもいぶかしげに空中を見上げている。

「もしかして、わたしと門倉さんにしか見えていない……?」

「みたいだねー」


 旅をしたわたし達だけに見える人々。

 ふとおじいちゃんの言葉を思い出した。

『縁をつなげて広げるのさ』

「縁……」 

 誰一人欠けても、『七つの瓶』は揃えられなかった。

 自分でも意識しないうちに縁がつながって、こんなにたくさんの人に、助けられたんだ。

 きっとそう。でなければ『七つの瓶』が見せるはずがない。


 これが、すべて集めたら起こること……

 集めた人だけが見ることができる奇跡。

 旅の記憶がいっせいによみがえる。まだ新しいラピュタ=ハルシオンでのできごとも、懐かしさとともにある。

 うわぁ……わたしはなんて、すてきな旅をしたんだろう。

「楽しかったなぁ……!」

 うっとりとつぶやくと、隣の門倉さんもうなずいた。

「そだね、おもしろかった」

 わたしは光の中に映る人を見た。

「決めた。いつか、きっといつか、会いに行く!」



 幻の『七つの瓶』は、虹色の架け橋。

 もっとたくさんの人に会って、たくさんのものを、世界中に届けよう。




七つの瓶 終り

お読みいただき、ありがとうございました。




自分の読みたい物語を書いたので、求めるのは筋違いとは思うのですが。

感想などいただければ嬉しいです。

……批評はお手柔らかにお願いします……すぐヘコみますので……

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