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七つの瓶  作者: リコヤ
青-オアシスに映る祈りの姿-
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1

 五つ目は青。『オアシスに映る祈りの姿』。

 何事にも苦労は付き物であり、そうして得た物は何物にも代え難い。

 ――橘昌二郎の旅行記より



「ルリ!久しぶりっ!」

「お久しぶりです、クルフさん、ミランさん!」

「おう。リヒトも元気そうでなによりだ」

「どもー」

 わたしとミランさんは抱き合って再会を喜んだ。門倉さんとクルフさんはそれぞれ手を挙げただけ。


 ここは交易路上で最大の都市トスラ・ジェラシェ。東西を走る路と、南北を走る路の交差点。

 そして交易路といったら放浪の民《ウルファ》だ。

 『赤』の瓶のとき知り合った二人、クルフさんとミランさんがなにか知らないか、知らなくてももし近くにいたら会いたいと思って、別れ際にもらった通信札を使って連絡してみたのだ。すると偶然にも近くに来ているということで、こうして再会できた。


「連絡くれて嬉しいよ。どう、順調にいってる?」

「はい。これから五つ目の『青』の瓶を探すんです」

 ミランさんの瞳が大きく開かれた。

「ここにあるってのかい?」

「……たぶん」

 おじいちゃんの旅行手帳の中で『七つの瓶』に関するあたりは、もう地名が書かれていない。「もったいなくなってきた」そうだ。それでも立ち寄った町の名がちらちら書いてあるので、そこから推測して、今ここにいる。

 たとえここに『青』の瓶がなくても、商品が集まるなら、情報も集まる。手がかりは得られるはず。


「ルリは相変わらず、目のつけどころがいいねえ」

「え?」

「ここにはな、交易路のことなら知らぬものナシっつー物知りがいるんだ。もういい年寄りだけどな、元気なばーさんだ」

 そんな人が……

「おいで、紹介してあげるよ!」

 わたしが返事をするより先に、ミランさんはさっさと歩き出した。手を取られたままのわたしは引きずられるようについていく。

 嬉しいんだけど、いきなり訪ねてもいいのかなぁ。



 大通りは馬車が行き来しやすいようにかずいぶんと広かったけれど、裏の通りは狭い。そして、路地はもっと狭い。人がすれ違うのがやっとの幅のところもある。

 その上迷路のように入り組んでいて、元いたところに戻れと言われても絶対に戻れない。方向音痴ではないけれど、階段を登ったり降りたりする上に目印があまりなくて、覚えていられない。

 トスラ・ジェラシェに限らずこの地域の建物は、茶色い真四角の箱が積み重なっているような感じだ。雨期はあっても降り込められるほどじゃないからか、屋根瓦がない。窓にガラスがはめ込んであるのは珍しく、大通りでちらほら見かけた程度だ。開けっ放しじゃないと暑いってことも関係しているのかもしれない。

 見なれないわたしの目には建物の区別はつきづらく、看板があってようやくだ。

 クルフさんとミランさんの足取りに迷いはない。なにが目印になってるんだろう?


 どこをどう歩いてきたのか、もはやわからなくなった先に、小さな構えのお店があった。占いのお店みたいだ。

「こんにちはー」

 クルフさん達がさっさと入っていくので、わたしも後に続いた。

 小さな部屋の中は、お香の匂いが充満していた。臭くはないんだけど、ちょっと気になる。いろんな匂いが混ざってる感じだからかな。

 部屋の一番奥、大小様々な物に埋もれるように、小柄な人が座っていた。薄暗くてわかりにくいけど、おばあさんだ。この人が……?

「ケルミーアのクルフとミランか。久しぶりだね」

 声はしゃがれているけれど、口調がゆったりしているので聞き取りやすい。ミランさんと口調が似てる……いや、ミランさんが似てるのか。

「さすがに驚かねぇな、おババは」

「客が来ることは知ってたからね。後ろの二人が本命だろ?」

「ん、そうだよ。紹介するね。ルリとリヒト」


 ミランさんに前に押し出され、わたしは急いで挨拶した。

「マホロ、カーラクの終点の、さらに先の国だね。ずいぶん遠いところから来たもんだねぇ」

 おばあさんはそう言って、にっこりと笑ってくれた。

「あの、カーラクって?」

「東西を走る交易路のことだよ」

「交易路にそれぞれ名前があるんですか?」

「もちろんさ。今じゃだいぶ大雑把になっちまったし、あたしらウルファしか使わないけどね。東西を結ぶ道がカーラク、南北を結ぶ道をウナーラクと呼ぶのさ。枝道にもそれぞれ名前があってね、地名がわからなくったって道の名前さえ言えばどこを通ってきたのかわかるんだよ」

「へえ……」

 初めて聞いた。

 地名より道、か。行った場所より、通った道のほうが重要なのかな。


「あたしはおババだ。ちゃんと本名はあるけどね、もう誰も呼ばん。あんたもみんなと同じようにおババとお呼び」

「は、はい」

「……それで、探し物はなんなんだい?」

「え?」

 わたしはまだ旅の目的を言ってないのに、どうしてわかったのだろう。

「占いで探し物をしている客が来るのがわかったのさ」

「え、あ、占いですか?やっぱりこのお店は占いの……」

「そうだよ。客は少ないけどね。ほれ、そこにお座り」

 急かすように自分の前の敷物を指すので、わたしはワタワタと従った。うーん、靴を脱がずに敷物の上に座るのは、ちょっと抵抗がある。

 とりあえずなんとか落ち着くと、『七つの瓶』を集めていること、『青』がこの辺りで手に入るはずだという推測を話した。

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