APRIL 13DAY 23:30 SAIJOU RESIDENCE DUCT(西条家邸宅ダクト)
「上堂 歩、今から潜入任務を開始する」
ダクトの中でパートナーに開始の合図を送る。
「へいよ」
俺のインカムからあくび混じりの気だるい声が聞こえてきた。この声の正体は森崎 元号。俺の仕事仲間でクラスメイトで親友でもある。そしてコイツ森崎元号の性格は、変態の一言に尽きる。
そう、コイツの半分は変態で出来ている。残り半分はバカで出来ている。そして頭の中
には大量のエロフォルダとハッキング能力が入っている。
「おい、簡単な任務だからって気を抜くなよ。変態」
「よし! もっと罵れ! オレの業界ではご褒美だ!」
……ブチッ
「――さてと、いくか。」
「おい! 勝手に切るなよ! 寂しいだろ!」
くそっ、ハッキングしてきたか
なんといってもこの森崎元号。バカで変態だけど世界で指折りのハッカーでありPCハックや通信信号ジャックなど何でもこなす意外とすごい奴だ。
「変態、オレはもういくぞ。」
「スルーかよ!? まぁいいや。監視カメラは全部ハッキングしといたぞ。」
「あぁ、ありがとな」
「相変わらずのツンデレっぷりだな」
「うるせぇ」
「ははっ、まぁ気をつけろよ」
「……あぁ」
よし、まずこの任務の事を振り返ってみよう。まず潜入するのは西条邸宅。そう、あの
大手企業の西条コーポレーションの社長西条 剛の邸宅だ。その邸宅に潜入し西条コーポレーションの情報を盗んでこいという簡単な任務だ。潜入の目的はこうだ。
実はこの西条コーポレーション。裏で銃や麻薬を密輸しているという情報がスパイ組織PSC(民間スパイ組織)の本部に入ってきたからで、オレ達がこの任務を受けてるって事は当然、オレ達もスパイの一員というわけだ。もちろん高校のみんなには知られていない。スパイって事を知られることはこの業界ではタブーだからな。
おっと、ちょっと時間を取りすぎたな。インカムから「グフフ……」となんとも気持ち悪い笑い声が聞こえてきた。どうせ暫く暇だから変な妄想でもしていたんだろう。
……仕事終わったらあいつのPCにウィルス送り込んでやる。
よし! 気持ちは整った。ダクトのふたを外し中に入る。ここは……倉庫か。
倉庫といってもここは敵地。人はいないと思うがオレの愛銃・ワルサーPPK(銃刀法違反にならない為ちゃんと麻酔銃)を胸ホルスターから抜き、警戒し慎重にクリアリング。
敵影は……ないな。
警戒を解き倉庫のドアから慎重に周囲を確認。
……ガードマンが徘徊してやがるな。
オレが見る限り黒スーツを着たアーノ○ド・シュ○ルツネッガーみたいなガードマンは2人だが一応元号に確認しておくか。
「おい、元号」
「イヤァン! お姉さんそんな所触っちゃら、らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「…………」
「ハッ! な、な、な、なんだ上堂。ど、ど、ど、どうしたんだ」
「……お前堕ちる所まで堕ちたな」
「う、うるせぇ! クラスの女子達にあんだけ避けられるなら妄想の中だけでもリア充してもいいじゃねぇか!」
「いや、お前のことはどうでもいい。早くシュ○ちゃんの人数を教えろ。早くしないとお前の今妄想してたことをクラスのみんなの前で一語一句正確に伝えるぞ」
「ひぃぃぃ! い、今調べる! 調べるから! え、え~と2人だ! 2人!」
「わかった。これから妄想は控えるように。お前、顔だけはいいんだからな。後、お前の想像しているリア充はちょっと違う」
「……危なかった。一瞬お前にトキメキかけたぜ」
「そうかよ」
2人か……なんとかやれるな。
オレは胸ホルスターからワルサーPPSを取り出した。よし、シュ○ちゃん2人が違う方向を向いた時をお休みGOODBYEするか。
オレはドアの隙間から1人に標準を合わせた。後はシュ○ちゃん達が違う方向を向くのを待つだけ……。
……来た。
バシュッ
「うッ……」ドサッ。
GOOD NIGHT
「ん?」
や、やばい。
オレは反射的に標準をシュ○ちゃんBに構える。
バシュッ
「ぐふぅ……」バタン
Beautiful
「ふぅ」
危うく見つかる所だった。まぁ、とにかく敵影は消えた。これで後はデータを盗んでメシウマするだけだ。
「元号、倒したぞ」
「お、さすがだなLEGEND(伝説の) BOSS」
オレはその言葉を聞いた瞬間、昔の事を思いだしてしまった。
しかし、オレはすぐに思い出すことを止め
「もうその名で呼ぶな。オレはあの世界から消えたんだ」
「でもお前がLEGEND BOSSなのは変わりない」
「今は任務に集中だ」
オレは曖昧に答え、この話題から話をそらした。
「後はデータをメシウマするだけなんだが。元号、社長の部屋はどこだ?」
「えぇ~と一番右のドア」
それを聞きオレは倉庫からその社長の部屋らしいドアの前に移動。
「なぁ、その部屋に人がいるか分かるか?」
社長の部屋だからいないとは思うけど、
「監視カメラがないから分からん」
当たって砕けよってか。
「ドアを開けたらシュ○ちゃんだったりな」
「おいおいそれは俺でもご勘弁だぜ」
元号のしょーもないボケにツッコみ、オレは社長の部屋らしいドアを開ける。
ガチャッ
ドアを開けるとそこは社長の部屋にはほど遠い……脱衣所だった。
……は?
オレの思考回路は一瞬フリーズ。
「~♪」
そして脱衣所の横に隣接してある風呂場から綺麗なソプラノボイスが聞こえた。キレイな声だなぁ~って誰かいるってことじゃねぇか!
ヤ、ヤバイ! に、逃げないと!
しかし突然の事なので体がうまく動いてくれない。
ここから出ようとあたふたしていると、
「誰?」
き、気づかれたぁ~!
カラカラッ
風呂場のドアが開きそこにあらわれたのは、
メ、メロン!?
……いかん、さっきの事もあって頭がショートしたらしい
そこにいたのはバスタオルと言う名の全年齢対象向けのガードが体に巻かれた美少女だった。
白く透き通った肌、濡れて色っぽい銀色の長い髪、俺を見ている驚いた紅い目、そしてなんといってもあのバスタオルからはみ出そうなお、お、お、おっぱい!
オレはまだ頭がショートしていたみたいだ。気がつくといつもCOOLなオレが元号に、
「扉を開けたらシュ○ちゃんじゃなかったポール巨乳マンだった」
と口走っていた。
すると、その驚いた美少女が事を理解したらしい。だんだん顔が真っ赤になりそして、
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
やっばい!
オレはその悲鳴で我にリターン。オレは慌ててドアをあけて倉庫に向かって猛ダッシュ。
「元号! 運転手さんに車を出す準備をしとけって言っとけ!」
「了解!」
オレは倉庫に向かいながら元号に叫ぶ。
「てかポール巨乳マンってなんだ?」
「後で説明してやる! まずは逃げる事が先だ!」
「おう」
……あいつにどう説明するかな。
と考えているうちに倉庫に到着。オレは滑り込むように倉庫に入り、手早くダクトの中に入る。
しかし、ここで安心してはいけない。オレはすぐさまダクトの中を移動。ダクトは入り組んでいたが潜入する時に迷わないように印をつけていたので簡単に外に出れた。
そして西条邸宅の塀を乗り越え急いで元号が乗っているバンに走る。
「運転手さん! 早くだして!」
オレはバンに飛び乗り叫んだ。
「はいよ!」
キュルルルル
バンのタイヤが勢いよく回りだし、オレを乗せて走り出す。
「あ、危なかった」
オレはシートに勢いよく腰掛けた。
「災難だったな、上堂」
無駄にイケメン面した奴――元号がこちらを向き、言った。
「何が災難だったな、だ!見つかったのお前のせいだろ!」
「ご、ごめんって」
「あれがポールだからよかったものの、もしあれがシュ○ちゃんだったらどう責任とるつもりだよ!」
「……体で?」
「男のお前に体で責任取られても嬉しくないわい!」
「そんなつれない事言わないでぇ~アタイとあなたの関係じゃなぁ~い、アタイと楽しい事し・ま・しょ♡」
……ヤバい、こいつ末期だ。
「……なんかひどい事かんがえてなぁ~い?」
「あぁ、お前をそろそろ精神科にいれようかって考えてたところさ」
「マジでひでぇ!まぁいいや、オレもひどいと分かってたから」
わかってたのかよ……
「で、ずっと気になってたんだけど……ポール巨乳マンの事を教えてもらおうか」
元号がニヤけ顔でそう言った瞬間、オレは無言で自分の懐からスタンガンを取り出しそして、
バチバチッ
「んん~ぎもぢッ!」
元号は変な声を上げて気絶した。
「オレは疲れてるんだ、ちょっと静かにしとけ」
まぁ説明がめんどくさくなっただけなんだけどね。
そして、いつの間にかバンはオレの家に到着し、オレは自室のベッドの上で眠りについた。