記録3-2 【能力覚醒】リセマラ不可の十歳儀式。女神様、どうか星五(チート)を引かせてください!
「レスト!! この『息声草』、ちょっと数が足りないんじゃない?」
依頼品を納品した後、マリーさんは相変わらずケチをつけるような評価を下した。 さらに五歳の月日を重ねた彼女は、今や前世の俺にとって完全なタイプなのだが、惜しむらくは「君生じ我未だ生じず」。後悔先に立たずといったところだ。
「シビレ風熊がいたんだ、あの数でも儲けもんですよ」 そうだ、ウィンド・ベアは息声草を好んで食べる。なぜ熊が草を食べるのかは聞かないでくれ、ここはファンタジー世界なんだ。 「ほう? C級の魔獣ねぇ。まさかレシーナに片付けてもらったんじゃないでしょうね」
「いくら情けなくても、小さな女の子に魔獣を追い払わせるなんてことしませんよ」
「ガキんちょのあんたとは違うのよ。レシーナはまだ幼年期だけど、怒らせたらB級未満の冒険者が何人いようと全滅よ」
「B級でなんとかなる程度なら、せいぜいB級判定じゃないですか」 マリーさんの手刀が俺の頭に飛んできた。
「バカ! 純血の龍族は基本、最低でもA級魔獣だって言ったでしょ。虚空の龍なんて、幼龍の姿を見た者すらほとんどいないんだから。今の話は、彼女と私たちの付き合いから出した大雑把な見積もりよ」
「まあ、幼生期ならそこまで危険ってこともないでしょう」
「ふふっ、幼生期?」 マリーさんは見下すような視線と不敵な笑みを俺に向けた。 「数年前、龍の谷の外側で、ここ百年で初めて目撃された太古の龍の幼龍がはぐれて徘徊していたの。欲に駆られて契約を結ぼうとした冒険者と傭兵が、だいたい二百人。三日かけて準備して、戦闘は三十分もかからなかったわ。二百人以上のA級冒険者と傭兵は、全員龍の谷の外の花の肥やしになったわよ」
「さて、太古の龍と比肩される虚空の龍の幼龍はどうかしらね?」
おい! なんでそんな危険な生物だって当時教えてくれなかったんだ。 でもレシーナはとてもおとなしく、振る舞いも幼女の見た目そのままだ。龍族の知恵は生得的なものだが、今のレシーナにはまだ人間同士の交流方法を理解できるほどの知識はない。
現在、レシーナの対人関係や人間世界への観念はすべて俺の口から教えたものだ。俺の善悪の観念や好みが、直接彼女の将来に影響する。 つまり、子供の教育は幼いうちから、それもしっかりと叩き込まねばならない!! これほどレアな素材があるのだから、当然理想の姿に調……育て上げなければ。
「ところでレスト、確か今年は十歳になる年よね?」
「ええ、たぶんそうですね」
「じゃあ夜ごはんを食べたら、体を洗って清潔な服に着替えなさい。修道院へ行くわよ」 「えっ! 任務ですか?」
「バカね! 能力覚醒よ。夜になれば分かるわ」 いつの間にかこの世界に来て十年か。仕事をしている日々はやはり過ぎるのが早い。 前世の俺なら、これほど長い間期待し続けていたら、生活の重圧に押し潰されて熱も冷めていただろう。
だが、どんな能力が得られるかという期待感は、プレゼントを受け取る時のようだ。箱を開けて中身を確認する前の、あのワクワクする高揚感は抑えきれない。
今日、マリーさんは特別にギルドを早めに閉めた。普通なら許されないことだが、ここでの最高責任者は彼女だ。 その後、夜の内容について少し説明を受け、食事を済ませると風呂に入るよう急かされた。 正直なところ、風呂というのは実に面倒なものだ。魔石のエネルギーや魔導具を使ってシャワーを浴びるなんて、そんなのは想像の世界の話だ。
少なくともエコロ村にそんな生活水準はない。唯一の救いは井戸まで水を汲みに行かなくていいことで、生活用水はマリーさんが水魔石を使って生み出している。 お湯を使いたければ、自分で沸かすしかない。
以前の夏なら、天気が暑いうちに水で済ませていた。 だが今は、レシーナを湯冷めさせないようにお湯を沸かさなければならない。 そうだ! レシーナは俺と一緒に風呂に入る。 まだ人間形態になる前は、ペットを洗ってあげるのと同じ感覚だった。
人間形態になってからは、最初こそ自分で洗わせようとしたのだが。 自分でやらせると、体を濡らしただけで飛び出してくるのだ。 もしその日の任務で体が汚れていたら、体中の土が泥遊びのようになり、家じゅう泥だらけにする。
その上、やたらと俺にべたべたしたがるので、彼女が洗い終わったら俺がもう一度洗い直す羽目になる。 結局、マリーさんに「レシーナを一緒に洗ってあげなさい」と説教された。 マリーは何を考えているんだろうか。混浴なんてこの世界じゃ当たり前のことなのか? それとも俺たちがまだ幼いからか? あるいは彼女はレシーナをあくまで龍族として見ていて、人間ではないから性別を無視しているのか? ダメだ! 今接している人たちの観念はどこかおかしい気がする。将来、他の場所も見て回らなきゃダメだ。
「ほら、手を挙げて」 俺はレシーナの白いワンピースを脱がせ、脇に置いた。 レシーナの未熟な裸体が目の前に現れ、俺は思わず彼女の胸元に目を向けてしまう。
当然だが、俺に幼女趣味はない。後で時空を超えてガサ入れされたらどうするんだ?
レシーナの胸元には銀色の紋章のようなものがある。皮膚というより、龍形態の時の銀色の産毛に近い。 もしかして、逆鱗だろうか?
龍には逆鱗があり、触れれば必ず怒る。意外なことに、東西の龍には共通してそんな伝承がある。 これまでレシーナを洗う時も細心の注意を払い、そこには決して触れないようにしてきた。 だが、今夜能力が覚醒するということもあってか、少し気分が高揚して抑えがきかず、好奇心から聞いてしまった。 「レシーナ、それは逆鱗なのか?」 彼女は俯いて胸元を見つめた。
「そうだよ。レシーナのいっちばん弱いところなの。頭の中の声が、絶対に誰にも触らせちゃダメだって言ってるの」
「まあそうだよな。女の子にとって胸は、むやみに人に触らせる場所じゃないからな」
「でも、レ(レスト)ならいいよ」 レシーナは俺の右手を取り、自分の胸に押し当てた。 彼女の肌はもともと柔らかいが、逆鱗の部分はさらに繊細で、少しの摩擦でも傷ついてしまいそうなほどだった。 「レなら、触ってもいいよ」 彼女の顔は朱に染まり、瞳には潤みを湛え、限りない愛着を込めて俺を見つめてきた。 待て! その表情は反則だ。
「う、後ろ向いて! 座って、髪洗ってあげるから」 俺は慌てて右手を引き抜き、彼女を後ろ向かせた。 くそっ!! 一瞬自分を見失いそうになった。
今、顔が熱い。言うまでもなく赤くなっているはずだ。 レシーナを洗い終えた後、自分で服を着るように言い残し、俺は顔の熱が引くまで冷水を浴び続けた。
「今日はえらく長風呂だったわね。そんなに楽しみなの? 準備ができたなら出発しましょう」 着替えを済ませると、マリーさんがギルドの入り口で待っていた。
当然、長風呂の本当の理由は言わない。 俺は任務の報酬で買った、辛うじて正装と呼べる服を着た。 儀式を受けるのだから、身なりは整えておいたほうがいいだろう。 レシーナは別の水色の花柄のドレスに着替えている。
マリーは確かに俺を居候させてくれているが、任務の報酬をピンハネすることはない。育成ゲーム愛好家の俺としては、当然自分のことより、余った金はすべてレシーナが人間になってからの衣装代に消えた。 だが今日を境に、俺は正式な労働力として見なされるだろう。マリーとの約束もここまでで、これからは相応の労力を提供しなければならないはずだ
「マリー、水魔石で水が作れるなら、他の魔石を組み合わせればお湯も作れるんですよね?」
「ええ、そうよ。都会には火魔石で加熱するような便利な魔導具が確かにあるわ」
「じゃあ、なんで火魔石でお湯を作らないんですか?」
「あの石、壊れちゃったのよね。本当は冒険者に頼んで取ってきてもらおうと思ってたんだけど、ちょうどあんたがギルドに転がり込んできたから、何か仕事を与えてあげようと思って」 なんだって!! この毒婦め、そんな便利なものがあるのに俺にお湯を沸かせていたのか。 当時の五歳の俺にとって、薪の一本がどれほど重かったか分かってるのか? おまけに、こいつは春夏秋冬問わずお湯で風呂に入りたがるんだ!!
「でも、最近やっぱり一つ手に入れようと思ってたの。あんた、手際が悪いんだもの」 俺は静かに拳を握りしめたが、やがてため息をついて肩の力を抜き、拳を解いた。 レベルがカンストしたら、必ず戻ってきてこのNPCに強制PKを仕掛けてやる。そう心に誓った。
「その下らない考えは捨てときなさい。私はS級記録員評定に限りなく近い人間よ?」 げっ! 冒険者のトップがS級なのに、記録員でS級評価って、あんた怪物かよ?
「明日からは、あんたがさっき得る能力に従って、将来の方向性を決める訓練を始めるわ」
「はあ?」
「つまり、C級記録員の試験を受けてもらうってことよ」
「ちょ、ちょっと待ってください。それってB級冒険者の任務じゃないですか。いきなり実戦だなんて」 「だから、今から得る能力で、戦闘型か補助型か、記録員としての方向性が決まるって言ってるのよ」 正直なところ、そんな遠い将来のことまで考えていなかった。
これまではただ、どんな能力が得られるのか、地球の知識を利用してその能力をアレンジし、異世界人としての本領を発揮できるんじゃないかと期待していただけだ。
だが今は少し不安になってきた。もし「花を出す能力」とかだったらどうする? 冒険者ギルドの花卉調達部門の責任者にでもなれってか? そんなふざけた職務があるわけないだろ。
五年の実務経験で、この世界が想像以上にシビアだということは分かっている。能力の有用性が俺の生死を分けるのだ。
ああ、女神様、どうか星五を引かせてください。このアカウント、リセマラできないんだから! 月光に導かれ、俺たちは馴染みのある場所へと戻ってきた。 少し先から蝋燭の光が漏れている建物、それがエコロ村の修道院だ。




