記録3-1記録員(セーフティ)の絶対条件。冒険者より強くあれ。職歴五年の十歳児が直面する「ウィンド・ベア」の脅威。
俺の名前はレスト、今年で十歳になる。
本来なら、のびのびと子供時代を謳歌しているはずなのだが、今となってはもう職歴五年の社会人だ。 結局のところ、いつだって職場というものは想像していた姿とは違う。
もともとの想像では、オフィスに座って一日中書類をチェックしたり資料を整理したりして、定時に帰宅するはずだった。
しかし今の俺はといえば、顔中に薬草の泥を塗りたくり、生い茂る草むらの中に身を潜め、C級魔物と評定される「シビレ風熊」が、今回の目的である「息声草」から離れるのを緊張しながら見守っている。
そう、俺は冒険者ギルドに入ることに成功し、そして見事に職種を間違えたのだ。
勤務初日、マリーさんがニコニコしながら「冒険者ギルドの記録員にならない?」と聞いてきた時、俺は後ろの三文字がいかにも事務処理担当っぽい響きであることに完全に騙され、二つ返事でバカみたいに頷いてしまった。
五歳にして人生の目標の半分を達成した俺は、その時の浮かれた気分といったらなかった。 マリーさんが手際よく冒険者の登録手続きと身分証明の発行を済ませ、冒険者証を俺に手渡した時、ようやく夢から覚めたのだ。
「冒険者ギルドの記録員だって言いましたよね? これは一体?」 俺はその身分証明のカードを手に持ち、わけが分からず問いかけた。
「そうよ。冒険者ギルドの記録員になるには、まず冒険者にならなきゃいけないのよ」 心の準備も何もないまま、俺はこうして穴に落ち、しかもどうやら這い上がれそうにない。
これが一体どんな仕事なのかと尋ねると、マリーさんは詳しく説明してくれた。 これは冒険者の任務に同行し、その過程や評価を記録する職業なのだという。
そこで俺は、真っ先に抱いた疑問をぶつけてみた。
「このカードに、冒険者の任務の達成過程や魔物の討伐記録が残るんじゃないんですか?」 そうだ! 冒険者が持つカードというものは万能であるはずなのだ。 何体の魔物を倒し、ステータスがどれだけ上がったか、すべてしっかり記録されるはず。
マリーさんは不思議そうに俺を見て言った。
「あんた、一体どこでそんなおかしな話を聞いてきたのよ。そんなことができたら記録員なんていらないでしょ。そんな便利な魔法なんてないわよ」
「でも……」 俺が前世で読んだライトノベルではみんなそう言ってたのに! 「『でも』じゃないわ。これからたっぷり鍛えてあげるから」 俺はその場で見事な土気色になった。できることなら修道院に戻って、あと五年ニート生活を送りたかった。
マリーさんは俺の気持ちなんてお構なしに、勝手に紹介を続けた。 冒険者ギルドの記録員というものは、一般的に師弟関係がある。 つまり、マリーさんが俺の導師となり、俺を記録員へと導くということだ。 ギルドの任務は最低のF級から最高のS級まであり、その上には特殊任務も存在する。 まずはF級の非戦闘任務から経験を積み、D級になったらマリーさんが適宜、適切な戦闘任務へと案内してくれるという。
記録員の職務は、主に冒険者の昇級任務を評定することだ。例えばB級からA級へ昇格しようとする冒険者がいれば、A級の記録員が同行しなければならない。 冒険者の昇級査定は、往々にしてより高階位の任務をこなす必要があるからだ。
そのため、一方は冒険者が不正な手段で昇級しないよう監視し、もう一方は冒険者の安全を確保する。だから記録員はある意味でギルドの「安全索」と見なされている。 もちろん、それが全てではない。記録員の昇級査定は冒険者とは方式が異なり、戦闘能力と冒険者ランクが直結しているわけではないが、総合能力が評価に見合っていることは保証されなければならない。
記録員の昇級は冒険者よりも困難で、より厳格だ。 一般的に記録員の昇級は導師によって認可されるが、導師は自分のランクより一つ下のランクまでしか認可を与えることができない。 マリーさんの場合、俺をB級記録員までしか認可できず、それ以上に上がるには本部に赴いてテストを受ける必要がある。 以上はまだ比較的楽な部分だ。最も困難な点は、記録員は同格の実力の任務を評定できないということだ。
つまり、A級記録員の資格を持っていても、実力がA級止まりでは同じA級の任務の評価は行えない。同級の場合、記録員がすべての突発事態に対処できる保証がないからだ。 記録員にとってのランクとは、冒険者ランクから一段階差し引いた評価結果なのだ。
A級記録員の資格を持つマリーさんは、実質的にS級の評価を持つ冒険者なのだ。 普段彼女がギルドで鼻を鳴らすだけで、騒がしかった空気が一瞬で凍り付くのも頷ける。
「まずは基礎教育からね。あんたが将来どんな能力を得るか分からないから、訓練の方向性は確定できないけど、基礎だけはきっちり叩き込んであげるわ」
当時あの笑顔は、今思い出しても背筋が凍る。
今の俺はD級記録員の修業中で、任務は目の前の「息声草」を手に入れることだ。 ちなみに「息聲草」にどんな効能があるかは聞かないでほしい。もしかしたら後で思い出すかもしれない。
「レちゃん、レちゃん、あいつ起きそうだよ」 そうだ、俺は一人で任務に来ているわけではない。 今、俺の隣には言葉では言い表せないほど可愛い幼女がいる。
常に月光を浴びているかのような銀白の長い髪、星のように輝く瞳。成長を待たずとも、今この瞬間ですら将来美女になることが断定できるほど整った顔立ち。
名前はレシーナ。俺が名付けた。そして彼女は、この上なく俺に依存している。 時々思うのだが、これは俺が異世界に来た特典なのだろうか? 幼女育成的な? まあいい、今はそんなことを考えている場合じゃない。
俺の袖を引っ張るレシーナの手を離させる。そんな風にされては行動ができない。 目の前のウィンド・ベアは苛立っているようだが、隣のレシーナが興奮すればするほど、ウィンド・ベアは怯えていく。 それは不安の源を求めて辺りを見回しているが、その源が俺の隣にあることを俺は知っている。
「静かに!」 俺がレシーナの頭を撫でると、彼女は目を細めてその感触を楽しんだ。 もしウィンド・ベアに見つかって、熊パンチを一発でも食らえば、俺は確実に肉片に変わるだろう。 ウィンド・ベアが感じていた謎の威圧感が一瞬で消えた。
しかし野性の勘を持つそれは、その場に留まることなく「息声草」の場所から去っていった。
「ふぅ……ようやく行ってくれたか。できることなら戦闘画面には入りたくないんだよな」
「どうしてそんなに面倒なことするの? ナナなら一撃で倒せるよ」
「むやみに力を使っちゃダメだって言っただろ。いつか俺と離れ離れにならなきゃいけなくなるぞ」 「ええっ! やだ、レちゃんと離れるのやだ!」 レシーナは俺が消えてしまうのを恐れるように、必死に抱きついてきた。
どうやら幼女教育というものは、ちっとも楽しくないらしい……。 レシーナは純粋な人間ではなく、ファンタジー世界にしかいない龍、種族は「虚空の龍」だ。 実力は曖昧だ。目撃した者が極めて少なく、往々にして伝説の中に記されているからだ。 依存性が非常に強く、最初に見た知性体に強い愛着を抱く。そのため、通常は卵を虚空の中に産み落とし、幼龍を孤独に慣れさせるのだという。
これは俺が七歳の時、ある採取任務で森の奥にとても綺麗な卵型の物体を見つけた時の話だ。 冒険者たるもの好奇心を持つべきだという考えに突き動かされ、体は勝手にその奇妙な空間へと進んでいった。 目に飛び込んできたのは、やはり一つの卵だった。
卵の殻は透明なガラスのように薄く、中の様子が透けて見えた。 それでも、卵の中身は想像とは違っていた。そこには灰色の霧が渦巻き、絶えず形を変えていた。 俺の手が卵の殻に触れる。殻の温度は想像していたような冷たさはなく、俺の体温よりほんの少し高く、少し肌寒い天気の中では心地よかった。 俺は長居はしなかった。
子を守る習性はどんな生物にもある本能だ。どんな生き物が巣に戻ってこようと、俺は予備の食料にしかならない。 しかし、手が卵の殻から離れた瞬間、ピキピキと卵が割れた。 卵の中から灰色の霧が少し溢れ出して俺の体に付着し、それから急速に一箇所に集まった。
まずは球状になり、じわじわと捏ねられるように形を変え、最後には一匹の銀白色の生物が卵から転がり落ちてきた。 それは西洋の飛龍のようだったが、翼はなく体だけで、鱗もない。代わりに美しい銀色の産毛に覆われていた。
その小さな生き物はまだ目を開けていなかったが、鼻をクンクンさせて、先ほど灰色の霧が付着した場所を嗅いだ。
小さな舌で二、三度舐め、ようやく目を開けて、ゆっくりと飛び上がった。 かすかに、本来は翼があるはずの場所で、透明な何かが動いているのが見えた。
卵の殻を食べに戻った隙に、俺はそれをその場に残していくことに決め、命惜しさに走り出した。 かなりの距離を走った後、俺は大息をつき、何も付いてきていないことを確認して歩みを緩めた。 その時、ひどく悲しげな鳴き声が響いた。
おそらく、さっきの可愛い生き物の声だろう。心理的な作用からか、俺は身を低くして足音を殺した。空からの視線に見つかるのが怖かった。
もしあの生き物の親が、俺がいじめたのだと勘違いしたら笑い事では済まない。
その鳴き声はますます悲しみを増し、あの可愛い生き物が泣いているのだと俺にさえ分かった。 しばらく続いた後、声は断続的になり、どんどん弱まっていく。
俺の心は激しく締め付けられた。 最後の一際弱々しい鳴き声を聞いた時、俺は魔が差したように、意を決して現場に戻った。 あの可愛い小さな生き物は、そこに弱り切って横たわっていた。俺が戻ってきたのを見ると、その瞳は愛着でいっぱいになった。
おそらく刷り込み(インプリンティング)現象だろう。あいつは俺を親だと思っている。 俺はペットなんて飼ったことはなかったが、この瞬間、こいつを家族にしたいという思いが込み上げてきた。 どうせ食いぶちはマリーさんの全額負担だ。
ペットの餌代くらいでガタガタ言わないだろう。 当時はそんなことを考えて、まだ名もなきレシーナを抱いて家に帰ったのだった。




