表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/178

第91話:村越 大河

 停学処分になってから、数日が過ぎた。

 昼間の校舎に入れない生活は、想像以上に長く、重たい。

 理由は分かっている。あの日、あの場で、オレはついカッとなって一之石の胸ぐらを掴んだ。

 いや——正確には、あれは「ビラを破られて泣き出した柏木を庇った」つもりだった。


 だが時間が経つにつれ、分かってきた。

 あの瞬間の一之石は、あくまで柏木の暴走を止めるために、一番効率的で確実な方法を選んでいたのだと。

 それを察することができず、感情のままに手を出した自分が愚かだった。

 だからこそ、この停学は自業自得だと受け入れるしかない。


 そんな鬱屈した午前、スマートフォンに着信のサインが出ている。

 チャットサービスの画面に、突然、音声波形とリアルタイムの文字起こしが流れ出す。


《……久しぶりだね、一之石くん》


 落ち着いた男の声。

 続けて、聞き慣れた低い声が返ってくる——一之石だ。


 慌てて画面左上のアカウント名を確認し、息を呑む。

 黒川先生。

 これは、あの「特別公聴会」の会場から流している音声だ。


 なぜこんなことを——理由は分からない。

 だが考えるより先に、オレはスマホを手に取っていた。


《今、黒川先生のアカウントから配信されてる。一之石の会議だ》

 停学中のグループチャットに送ると、既読が一気に増えていく。

 「マジ?」「私も見てみる」と返信が立て続けに届く。


 波多野にも個別で送った。

《今、聴ける。黒川先生が流してる》

 既読だけがつき、返事はない。きっともう聴き始めている。


 Bluetoothのヘッドフォンをスマホにリンクさせて、机に座り直す。

 会議室のざわめき、紙をめくる音までクリアに聞こえてくる。


《駅伝大会で急遽出場して、急増の連合チームを勝利に導いた話も聞いているよ。その際には仲間と力を合わせたはずだと思う。それは素晴らしいと思って君の成長を楽しみにしていたのだが、その大会の後からまた内省的になっているとも聞いた。何で君が苦しんでいるのかを、私たちは知りたい》


 春海という偉い感じのおっさんの問いかけに、長い沈黙が落ちる。

 このあと、何を言うのか。

 オレは息を殺し、流れてくる一之石の声を待った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ