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第81話:安藤 剛

 一之石の声が、教室の空気をきっぱりと断ち切った。

「……無駄になると分かっている事に、オレは賛成できない」


 その言葉に、周りの高校生たちが息を呑むのが分かった。

 しかし、次の瞬間——


「それは、あんたも分かってるんじゃないのか? 安藤先生」


 視線が、真正面からオレを刺す。

 黒い瞳の奥に、冷たい光があった。


 喉の奥に、苦いものがせり上がる。

 言い返そうとしても、何も出てこない。

 ……分かっている。私だって分かっている。

 教育委員会の返答も、現場の現実も、

 栞のために動こうとしても、結局は壁に突き返されることも。


 「復学に向けて必死に動いています」という自分の姿勢が、

 外から見ればポーズにしか見えないことも——。


 柏木さんの顔が、はっきりと失望に染まっていくのが目に入った。

 彼女の中で、私も、一之石も、同じように「動かない大人」に分類されていくのが分かる。


 胸の奥で、古い傷が疼いた。

 4年前から何も変わっていない。

 オレはあの時も、そして今も、

 守れなかった子供を前にして、何もできない大人のままだ。


 栞が泣き、大智が声を荒らげる中、

 オレはただ、机の端を強く握ることでしか、

 自分の情けなさを押し隠せなかった——。

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