第50話:村越 大河
初詣の列の中で、何となく後ろを振り返ると、一之石が少し離れて歩いていた。
両手をポケットに突っ込み、足取りは普段通りに見える。
……でも、なんか違うんだよな。
駅伝のあとからだ。
あれだけの走りをしたのに、打ち上げにも来なかったし、笑顔らしい笑顔を見ていない。
普段から愛想があるタイプじゃないのは分かってるけど、今のはそれとは別物だ。
目が、どこか遠くを見てる感じがする。
もちろん、何があったのかなんて分からない。
ただ、相当キツいもんを抱えてるのは確かだ。
それも、周りに悟られないようにしてる分、余計に質が悪い。
「おーい、一之石、おみくじ勝負するか?」
軽く声をかけると、こっちを見て「いや、いい」と短く返す。
表情は変わらないけど、その声の奥に、ほんの少しだけ疲れが滲んでいた。
オレはそれ以上踏み込まない。
代わりに、白石や波多野に向かってわざと冗談を飛ばす。
「お前ら、凶を引いたら写真撮ってやるからな」
「何それ、最低」
笑いが返ってくる。
――こういう空気を作っておくのも、まぁオレの役割だろう。
お参りを終えて参道を戻るときも、一之石は変わらず列の後ろ。
だけど、さっきよりは少し肩の力が抜けている気がした。
気のせいかもしれないけど、それでいい。
真相なんて分からなくても、ちょっとでも楽になれるなら、今はそれでいいんだ。
そう思いながら、境内の鈴の音と冬の空気を背に歩き出した。




