第49話:柏木 美羽
初詣の人混みは、思っていたよりも賑やかだった。
吐く息が白く舞い、冷たい空気の中で、屋台から漂う甘酒の香りがほっとさせる。
参道を歩く同好会メンバーの列の中で、私は孝和くんの少し後ろを歩いていた。
――なんだか、妙に距離がある。
思えば、駅伝の打ち上げにも孝和くんは来なかった。
「着替えてくる」と言ったまま、姿を見せなかった。
勝った喜びを、あの場で一緒に分かち合えなかったことが、私は少しだけ不満だった。
私たちの勝利だったのに。
駅伝までの間、孝和くんはもっと普通に接してくれていた。
話しかければ短くても答えてくれたし、練習の合間に小さく笑うこともあった。
それが、あの日を境に、ほんの少し遠くなった気がする。
冷たい冬の空気のせいだろうか。
でも、私には理由が分からなかった。
「おみくじ、何引く?」
軽い気持ちで声をかけても、彼はポケットに手を突っ込んだまま、少しだけ首を傾けて答える。
「……別に」
ぶっきらぼうじゃない。でも、温度を感じない。
境内に入り、手水舎の水で手を清める。
指先がしびれるように冷たくて、思わず小さく息を吐いた。
賽銭箱の前で並んでいる時も、孝和くんは視線を前に固定して、何を考えているのか読み取れなかった。
お参りを終えて振り向くと、村越くんや結奈ちゃん、紗月ちゃんが笑い合っている。
その輪の少し外側に、孝和くんが立っている。
――そこに行ってもいいのに、行かない。
距離感。
それは、彼が私を避けているわけじゃないと分かっている。
でも、以前より一歩、間が空いた気がして、心の奥に小さな疑問が残った。
私の勘違いなら、それでいい。
けれど、あの距離はどうして生まれたのだろう――そう思いながら、参道を抜ける冬の光を見上げた。




