第15話:村越 大河
交渉準備の打ち合わせも、そろそろ大詰めだった。
優先順位の高い候補校は三つ。どこから当たるか――これは場を仕切る立場として、そろそろ決めなければならない。
「じゃあ、この三校の中で――」と言いかけたところで、一之石が口を開いた。
「最初に当たるのは、県立東南高校にしよう」
理由を淡々と三つ挙げる。その内容は筋が通っていて、即答するのが惜しいほどよく練られていた。
……こいつ、やっぱりこういうときは強い。
感情は挟まないし、必要な条件を整理するのが異常に早い。
しかも、さっき柏木――あの、いつも元気な美羽様に“譲歩”する姿も見せたばかりだ。
普段の一之石ならあり得ない行動だ。
「異論なし」オレは軽く頷いた。
会長も「分かりました」とまとめ、白石は黙ってメモを取っている。
柏木はというと、もう次の行動計画を考えているらしく、スマホを操作していた。あの切り替えの速さは、あれはあれで武器になる。
役割分担も固まった。
公式説明は会長の波多野、場の空気作りと雑談はオレ、資料サポートは白石、条件調整と最終決定は一之石。
まあ、順当だろう。
ふと、波多野が一之石を見る目が少しだけやわらかくなっているのに気づく。
ほんのわずかに寂しさが混じっているようにも見えたが、それを口にするのは野暮ってものだ。
白石はその視線を察しているらしいが、こちらも何も言わない。
「じゃ、初回訪問は来週の火曜日ということにしましょう」
会長の声で打ち合わせは締めくくられた。
机の上の資料を片付けながら、オレは内心で笑う。
――これ、案外面白くなってきたぞ。




