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第1章2話 倒せ! 装甲機獣《ギガモンス》!

 着地の隙も見せず突撃銃を構え直し、短距離走者(スプリンター)の如き軽快な足取りで、夜明け前の深い夜空の色の機体(ベスタ改)を疾駆させた。

 左肩に描かれた道照らす星(スターロード)のエンブレムが撃墜王(エース)の証だ。

「ザコは任せな新米(ルーキー)。俺は右に回る。左はガイラだ。奴ぁドコで油売ってやがるんだXCP(シープ)?」

 作戦の進行を補佐する戦術オペレーターに、通信で問いかけるルビィ。

 画面越しに応えたのは、石膏めいた美貌と球体関節、水色の透明な放熱髪を持ち、何故か赤縁のオシャレな眼鏡を掛けた女性型ロボット(ガイノイド)

「貴女より前で大はしゃぎです。油売り(オイルディーラー)は貴女ですよ、キザ野郎」

「うるせぇぞドラム缶!」

 操縦席の真上、逆さまに突き出した直径三十センチの円筒型情報端末(ドラムズ)を、ルビィはヘビー級ボクサーもノックアウトできそうな腕で殴る。

 遠隔操作の子機(ドラムズ)に両目をチカチカ点灯させて、不当な暴力に抗議したXCP(シープ)は、眼鏡のブリッジを押さえて地形図を映し出した。

 ブルス、ベスタ改の少し先に、十数の光点が明滅する。その内の一つがガイラと呼ばれた生身の女戦士。

「誰がはしゃいでると! 先陣血路の道行きに、血脇肉踊るのは確かだが!」

 二機より前を獣より早く駆けていく、筋骨躍動する緑肌を甲冑に包んだ、岩喰鬼族(トロル)の女戦士ガイラ。

 肩当てを盛り上げる巌の如き上腕筋、胸当ての下にうねる逞しい腹筋、兜の下は赤いポニーテール、誇り高き狼を彷彿とさせる美貌。

 筋肉質だが、むしろ引き絞られたバネのような細マッチョのしなやかな武人が、肌も露わな鎧姿(ビキニアーマー)姿で戦場を駆け抜ける。

 身の丈二メートルの巨躯をゆうに超える片刃の斬機戦斧(ギガスレイヤー)を握り、岩も噛み砕くと評判のキザ歯の牙を剥いて。

 獲物は彼女を見つけ、長銃を構え直すGAガド。

 体格差は凡そ五倍、その連射で周囲の地面が爆裂するが、鬼戦士は臆せず左右に回避しながら敵機の懐へ突っ込んだ。

「でぇりゃああああああーっ!」

 裂帛の気勢と魔力が乗せられ瞬光する刃を、機兵《GA》の右太股の付け根、股間との接合関節部を下から斬りつける。

ーーバキィィンッ!!

 関節部は人型兵器の弱点だ。

 それでも合金製、生身では文字通り歯が立たぬはずの駆動装置を、人外の膂力に業物の冴え、込めた魔力で叩き割り、オイルと破片を撒き散らせる。

ーードォン。

 右足を失い転倒したガドの胸部に駆け上がり、戦斧を振りかざすや。

 ガドの頭部スリットバイザーがシュッと下にスライド、複合センサー脇の銃口から、数万本の短針のシャワーが超音速で放たれた。

 至近距離ならGAの装甲もぼろくずに変える短針銃(ニードルガン)の不意打ちを、ガイラはフンと鼻で笑って余裕でかわし、返す刃を叩き込む。

「小賢しい。敵を屠るはトロルの誉れ。だが我が嫁は慈悲深いのだ。命惜しくば機を捨て立ち去れ!」

 ガクンと頭を垂れたGAが、上体をよじり背中の搭乗扉を開いた。

 転がり落ちて尻餅をついた革命兵(マーシアン)を一瞥し、もはや戦意無しとガイラは斧を下ろすや装甲を蹴って、新たな敵機に向かう。

「勝ちムードと言いたいところですが、本命が第二阻止ラインに到着。ルビとガイラは至急、敵装甲機獣(ギガモンス)から随伴するGAを引き剥がして下さい。でないと本艦とブルスが危険です」

「ちょっと待ってろ!」「今やっている!」

 敵GAを自分たちに引きつけようと、前方左右に展開するベスタ改と女戦士。

 二人の少し後ろで、無人のベスタ二機も機関銃(マシンガン)で弾幕を張っているが、遠隔操縦するXCP(シープ)が多忙すぎて心許ない。

 地図へ新たに一際大きな光点(ギガモンス)が映し出されると、通信画面がまた切り替わった。

 LOTO防衛艦隊の制服を着崩した泣きぼくろの女性士官が、紫がかった濃紺の髪を収める制帽の庇を直し、軍人らしからぬ伝法口調でXCP(シープ)に指示を下す。

「さあ作戦通りだよ。いいかい? アキラメル浮上用意! 主砲副砲ミサイル発射管装填! ドラゴンはまだこっちを見てないはず。敵に城を撃たせてから浮上、森の陰を出て一斉射、当てて見せな!」

 ジュンコ・モロト艦長の一声で、ファレンファウスト聖王家のレブナ城前に着陸していた駆逐艦アキラメルが、艦の両舷甲板上方へ空中飛行用の気嚢(バルーン)にガスを充填して膨らませ、下方姿勢制御スラスターを地面に吹き付けて上昇に備えた。

「毎度の事だけど、動きの鈍さは心臓に悪いさね」

「宇宙用の戦闘艦を、地上で飛ばす人類の無茶振りです。操舵と機関と砲術と情報管制、GAも二機動かしてる私の苦労を、もっと労うべきですね」

 艦長席の前にある操舵席で舵を握りつつ、何本ものケーブルで各部署の端末に繋がったシープが肩をすくめる。

 有線接続なのは信頼性を高める為で、魔力が電子に干渉する魔法界では、無線やレーダーは当てにできない。

「無人機は、ちゃんと操縦できてるかい?」

「電波障害がありますが、この距離なら大丈夫です」

 くるんと顔を真後ろに旋回させて、二カッと笑うXCP(シープ)

 以前はぎょっとしたものだが、今やジュンコも慣れっこだ。彼女もにやりと笑ってみせる。

「アンタは人間より上出来だよXCP(シープ)! だから上手くやって見せな!」

 初めてまして。あるいはお久しぶりです。

 第1章2話をお読み頂き、ありがとうございます。井村満月と申します。

 2話で活躍するのは、女性型人造人間(ガイノイド)のメガネっ娘XCPシープちゃん。異世界から転移してきた虐殺機械(アニヒレータ)と呼ばれるメカ娘で、シオンの操縦サポートから空飛ぶ宇宙駆逐艦の繰艦まで、手広くこなす有能な美プラ娘。

 お次はビキニアーマーで戦場を駆ける、岩喰鬼(トロル)の女戦士ガイラさん。緑肌にギザ歯の腹筋バキバキ細マッチョ、デカい斧を軽々振り回すパワフルな武人で、二言目にはシオンを我が嫁と呼ぶぞっこんぶり。これでも元魔王軍の幹部なんですよ?

 そしてアキラメルの姐さん艦長、ジュンコさん。ピョンピョン跳ねるお胸が印象的で、砕けた口調が勇ましいのですが、実はギルやシープに振り回される苦労人。友軍と中々合流できない艦を維持しようと孤軍奮闘の、元海賊もとい商船の船長さんです。

 さて、シオンたちの敵の本命は、装甲機獣(ギガモンス)と呼ばれる大型機動兵器。

 どんな強敵なんでしょうか?

 みんなの奮戦をお楽しみ下さいませ!

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