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【書籍化決定】ねえ親友。今日もキス、しよっか?  作者: ゆめいげつ
第四章 俺たちはキスをさせたい

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第94話 「ぎゅーっ!」

 行ってきますのちゅーをして、家を飛び出してから一時間もしない内に早霧が新しいリュックを背負って帰ってきた。

 何かの準備にしては少し時間がかかったと思うのは家が近所だからだろう。

 早霧の家も全員不在だし色々と確認する事があったんだと思う。

 それよりも、だ。


「何を持ってきたんだ?」

「まだひみつー」


 持ってきた荷物の方が気になる。しかしまだ秘密らしかった。

 口の前で人差し指を立てて、内緒のポーズをする幼馴染を可愛いと思ったのはこれが最初ではないがどうも誤魔化されている気がするのも事実。

 まだ、って事はその内出番があるんだろうが今までの経験からあまり良い予感はしない。悪いことでは無いとは思うが、嫌な予感がする。


「ぎゅっぎゅっぎゅっー」


 さて。

 そんな自由奔放でまるで猫みたいに気まぐれな早霧は今現在、俺の部屋で昨日買った顔に傷のあるオオカミのぬいぐるみことレンジを、机に備え付けられた椅子に座りながら抱きしめていた。

 笑顔で。それはもうニッコニコで。満面の笑顔でぬいぐるみと戯れ、ご機嫌に身体を左右に揺らしていた。


「本当に好きだよな」

「んー?」

「ぬいぐるみ」

「蓮司も好きだよー?」

「それは、おう、ありがとう……」


 それを俺はベッドの上から眺めていると、見事にカウンターパンチを食らってしまった。

 いくら慣れようが、気持ちが分かっていようが、面と向かって好きと言われるのはやはり恥ずかしい。それに今回は不意打ちだったのもあって威力は倍だ。

 ていうかこれだとまるで俺がぬいぐるみに嫉妬してるみたいじゃないか?


「……しょうがないなぁー」

「ん?」


 そんなことを思っていると早霧は胸に抱いていたオオカミのレンジを机の上に置いて立ち上がった。

 そのままジリジリとまるで飛びかかる前のような猫のように距離を詰めてきて。


「とーうっ!」

「うおおおおっ!?」


 予想通り飛びかかってきたが、内心では本気で飛びかかってくると思っていなかったので俺はモロに早霧のダイビングタックルを食らってしまった。

 背中に柔らかい弾力性のある感触。ベッドである。

 前面に柔らかくて温かくて良い匂いしかしない最高の感触。早霧である。

 俺は見事に早霧に押し倒されたんだ。


「ぎゅーっ!」

「お、お前なぁっ!?」


 そのまま抱きついてくる早霧に危ないだろと言おうとしたが、言葉は続かない。

 本当の猫よろしく、俺の胸に顔をグリグリと押し当ててきたからだ。


「えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ……」

「へが多い!」


 一回のへ、につき一回のグリ、で頭を擦りつけてくる。

 親友って何だっけ?


「……いーじゃん、夏休みなんだし」

「……浮かれ過ぎじゃないか?」


 文句を言うと早霧が不服そうに顔を上げる。

 俺が敷布団だとしたら早霧が掛け布団。

 つまりそういう密着度。

 目の前に早霧の顔が広がった。


「こっちが素だもーん。学校じゃあ色々と我慢してるしー」

「……嘘だろ?」


 アレで?

 アレでか!?

 これ以上ないと思っていたのにアレでもか!?

 確かに喧嘩して仲直りした反動で朝からキスばっかりしてくるなとは思ったけど、これが平常運転だと言う。

 幼馴染のポテンシャルが計り知れない。


「あ、そうだ!」

「……うっ!?」


 気まぐれな早霧は俺の上で寝返りをうつ。

 すると俺の胸部と腹部に重圧がかかり、それを気にもせずにゴロンとベッドの上を転がっていった。


「んー! とーどーけー!」


 自由過ぎる幼馴染がベッドの上からカーペットの上のバッグに手を伸ばしている。

 それは良いんだが、そのせいでベッドの上で尻を突き上げているポーズになっているのはとても目に毒である。

 ただでさえ短いショートパンツで無防備なのに、なんていうか凄く、凄かった。


「よ……っと! よーいーしょーっと」

「お、おいっ!?」


 お目当ての物が取れたらしい早霧と、振り回されっぱなしの俺。

 また早霧はゴロゴロとベッドの上で寝返りをうちながら器用にも俺の上に乗ってくる。

 そして日出のように、美少女の顔が俺の目の前に広がった。

 早霧ライジング……いや、何言ってんだろう、俺。


「今日も塗ってあげるね!」

「え、お、おいっ!?」


 そんな早霧が持っていたのはこれまた昨日買ったリップクリームだった。既にキャップが外されたそれに、俺はなすすべもなく唇を塗られていく。

 もちろん全身を密着するように、早霧に乗られたままである。


「ま、せめっ、姿勢を……!」

「もー、動いちゃ駄目だよ?」


 動いているのは早霧だ。

 早霧が俺の唇を塗る度に身体が擦れ、俺の五感がフル稼働していく。それから逃げるように俺が動けば早霧も動く。

 揺れるベッド。これをぐんずほぐれつと言わずに、何と言う?


「て、ていうか塗り過ぎじゃないか!?」

「良いのー」

「よ、良くないがっ!?」


 ぬりぬり。

 俺が思考し、文句を言いながら逃げる間にも早霧がリップクリームを塗っていく。

 抵抗しているにしろ、明らかに昨日よりも長い時間多く塗られていた。


「もう、しょうがないなぁ」

「しょうがないのはお前だぞ!?」


 二回目のしょうがない。

 明らかに過剰塗布だがまだ塗り足りないらしい早霧。

 俺の唇にはこれでもかとリップクリームが塗られてヌルヌルしている。納豆のネバネバとは違ったヌルヌルは気持ち悪くこそ無いが違和感の方が強かった。


「じゃあ、分けて?」

「……は?」


 一瞬の思考停止。

 何言ってるんだと思った時には、早霧の両手が俺の顔を押さえていて。


「――んっ」

「んんっ!?」


 そして、唇が塞がれた。

 上から、覆い被さるように、柔らかさという快楽がのしかかってくる。


「んっ……う……むぅ……はむっ……んん……」


 それだけに終わらない。

 まるで俺の唇から直接リップクリームを自分の唇に塗るかのごとく、唇が唇を這っていく。


「や、まっ……んんぅ……」

「あむ……んぅ……んっ……はぁ……んっ、んっ……」


 昨日俺が風呂場でしたキスと同じ、いやそれ以上のキスの嵐。

 リップクリームを求めているのか、キスをしたいだけなのか、それともそのどちらもなのかは分からない。

 でも気持ち良いという事だけは分かった。

 いや、それしか考えられなくなっていたんだ。


「……これでも、塗り過ぎ?」

「……い、いや」


 頬を紅潮させながらも満足気な笑顔を向ける早霧に、俺は何も言えない。

 その薄桃色の唇に輝くリップクリームのテカリが、俺の唇から奪い塗られたものだと分かる。それを理解すればするほど、胸の鼓動はどんどんと高鳴っていった。

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