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【書籍化決定】ねえ親友。今日もキス、しよっか?  作者: ゆめいげつ
第三章 早霧はキスをされたい

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第58話 「れーんじっ!」

 早霧とのなんやかんやてんやわんやから一夜が明けた。

 朝起きても特段変わったことはなく、ママさんネットワークによって既に情報が伝わっていた俺の母さんにからかわれる朝食の後に登校をする。


 家を出ても早霧はおらず、いつもの丁字路にさしかかって続く道の奥を見ても特徴的な長く白い髪の少女はいない。

 別れの時は元気そうだったし大丈夫だろうという気持ちと、早く元気な顔を見たいという矛盾した気持ちを抱えながら朝の閑静な住宅街を一人で歩いていく。

 幼馴染で家が近いのに生活リズムが微妙にズレているので基本的に朝の登校は別々だった。慣れ親しんだ習慣の筈なのにもの足りなくなってしまっている。


 夏の朝の日差しを浴びながらそんな事を考えて、眠たい頭を少しずつ起こしながら通学路、学校、教室へとたどり着いて。

 俺の机が、占領されていたんだ。


「おお赤堀! やっと来たな!」

「……お前かよ」


 長谷川だった。

 幼馴染で親友の早霧ではなく、大男で友人の長谷川だった。

 また今日から早霧に振り回されるんだろうなぁと思っていた、俺の期待を返してくれ。


「やあやあレンジっ! やあやあやあっ!」

「……ユズル、お前もか」


 そしてその隣の席。

 そう早霧の席には長谷川とは対照的な小さな女子生徒ユズルが座っていた。俺達の席は自分らしさ研究会の大小ツートップに乗っ取られていたのである。


「ど、同志! お、おはようございましゅっ!」

「ああ、草壁。おはよう」


 その中で唯一の良心である目隠れ少女、草壁は俺の前の席……ややこしいが今は長谷川が座っている席の前に座っていた。

 結構癖があると思っていたが、この馬鹿二人を前にすると案外まともなのかもしれない。


「おいコラ赤堀! 俺はともかくゆずるちゃんを無視するとは良い度胸だな!」

「そうだそうだっ! 自分らしさ研究会は自分らしくあれがモットーだけど、人様に迷惑をかけるような自分らしさは求めていないよっ!!」

「お前たちがそれを言うのか……」


 早霧に会う前から溜息が止まらなかった。

 それっぽい事を良いながらも俺達の席を占領するアホ達をどうしようかと悩んでいると、おっかなびっくりと草壁が挙手をした。


「あ、あの……八雲さんは大丈夫でしたか?」

「ん? ああ、元気……だったぞ。ところでその挙げた手は何だ?」

「す、すみませんすみません!」


 草壁は挙げた手をすぐに引っ込めた。特に理由は無さそうである。


「ほんとうっ? さぎりん元気だったっ!?」

「ちゃんと俺達の事も伝えてくれたかっ!?」

「近い近い立つな座れ! ……いや、やっぱり去れっ!!」


 凄い勢いで大小コンビが俺に詰め寄って来たので座らせたが、そもそもそこは俺と早霧の席だった。


「……ただの、寝不足だそうだ。皆が心配していた事も、ちゃんと伝えてある」

「そっかーっ! 良かったあっ!」

「良かったなあユズルちゃんっ!」

「そ、それは良かったです……!」


 思わず昨日あった事が脳裏を過ぎったが、それを頭からかき消して言える事実だけを告げる。すると三者三様に全員が安堵し喜んでくれた。

 早霧を心配してくれる友人がいる事が、とても嬉しかった。


「それでそれでっ、今日はさぎりん来れそうなのっ?」

「ああ、来れると思うぞ」

「馬鹿野郎っ! 来れると思うじゃなくて迎えに行ってやれよ!」

「……いや、そこまでは」

「あ、あんなに心配していたのにですか……?」


 急な四面楚歌。

 味方だと思っていたのに突如として刃を向けてきた。

 確かに長谷川の言う事は正論だし、昨日の昼までの俺ならそうしていただろう。

 でも、待ってると言ったのに俺から迎えに行くのは恥ずかしくてなぁ……なんて俺しか知らない事実は口が裂けても言えなくて。

 次第に登校してくるクラスメイト達が増えていく教室の中で、ただただ俺の立場だけが悪くなっていった時だった。


「みんなー、おはよー!」


 ガラガラっと教室の扉を開けて、凛とした声が響き渡った。


「あ、八雲さん風邪は大丈夫?」

「もう学校来ても平気そう?」

「調子悪いならいつでも言ってね?」

「夏風邪が流行ってるって先生言ってたよ?」

「うんもう大丈夫だよありがとー!」


 そう、早霧である。

 学園一の美少女である早霧はクラスでも大人気だ。心配してくれる女子生徒達に笑顔でお礼を言う姿はとても輝いていて、きっと俺だけじゃなくクラス中の男子も注目している事だろう。


「……あっ」


 と、そこでようやく早霧が俺達に気づいた。

 丁度良かった。味方がいなくて困っていた所なんだ。まずはこの馬鹿二人を俺達の席から退かす為に協力しよう。

 そう、思っていたのに。


「やっほーっ!」


 早霧は笑顔で駆け寄ってきて。


「わわっ!?」

「うおっ!?」

「ひょえっ!?」


 三人が、そしてクラスメイト達が見ている中で。


「れーんじっ!」

「さ、早霧ぃっ!?」


 俺に、抱きついてきたんだ。

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