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【書籍化決定】ねえ親友。今日もキス、しよっか?  作者: ゆめいげつ
第三章 早霧はキスをされたい

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第36話 「……ぬ、脱げってこと?」

「さ、さぎ、さぎっ……さぎりぃっ!?」

「あ、どうも……私だよ……」


 驚きのあまりベッドから転げ落ちた俺が放った言葉は、裏返ってとても情けないものだった。

 だって仕方がないだろう。

 いくら幼馴染とはいえ起きたら一緒のベッドの中にいて、しかも知らず知らずの内に抱きしめていたんだぞ。


 それに意識してしまっている相手なら……なお……さら……。


「お、お、お……お前! ふ、服ぅー!!」

「え? 服……ひゃあっ!?」


 情けない声、第二段。

 俺も、早霧もである。


 ワイシャツだった。

 早霧は夏服の、ワイシャツ姿だった。

 ボタンが全部外れて前部分がはだけ、普段は隠れている白い肌が丸見えだった。

 

 それに気づいた早霧がバッと掛け布団を胸に抱いて胸を隠したが、その……なんていうか……その掛け布団が下着と同じ色だった。


 水色が、俺は好きである。

 

 ――掛け布団の話だ。


「み、みみみ……見た……?」

「保護色! 保護色だ! 見ていない!」


 早霧は俺の掛け布団に顔の下半分を隠しながら聞いてきて、俺は意味の分からない答えをしてしまった。何だ保護色って?

 し、仕方ないだろこんな緊急事態で冷静な判断なんて出来る訳も……ん?


「ていうか何でお前が俺の部屋にいるんだ!?」


 冷静になって、当然の疑問に帰結した。

 外は明るくなり始めているが、時計はまだ朝の五時半を表示していた。


「朝のお散歩中に公園で蓮司のママがヨガしてたから挨拶したら鍵貸してくれてさ」

「ツッコムべき箇所が多すぎるんだが!?」


 朝の散歩早過ぎないか、とか。

 朝早くから母さんはそんな事してたのか、とか。

 流れるように家の鍵を貸して何を企んでいるんだ、とか。

 普通に受け取って入ってきてるお前もお前で何なんだ、とか。


「その質問には追々お答えしますが、蓮司さん……」

「いや何だその変な喋り方?」

「……ボタン、かけても良い?」

「…………」


 俺は無言で後ろを向いた。

 しょうがないだろここで変に反応したら負けなんだから。

 

 早霧は俺のベッドの上で、はだけたワイシャツのボタンをかけ直している。

 言葉にするととんでもないシチュエーションである。

 どうしてこんな経緯になったのかは俺もまだ理解できていない。


 分かるのは、衣擦れの音が朝一から俺の脳をガンガンに刺激しているという事だけだった。


「あ、もーいーよ?」

「ここ、俺の部屋なんだ……が……」


 絶句した。

 振り返って、絶句した。

 ワイシャツの次は、ベッドである。

 学校指定の夏服を着た早霧が、俺のベッドで寝ている。

 それまでならさっきまでと同じ光景だ。問題はその次である。


 今度は完全に俺の枕に頭を乗せて、俺の掛け布団を身体にかけ、それを片手で浮かせて寝転がりスタイルの良い制服姿を見せながら、俺のベッドの開いたスペースをポンポンと手で叩いていた。


 俺の理解が追いつく前に新しい行動をするのは止めていただきたい。


「…………何してるんだ、お前?」

「え、寝ないの?」

「寝ないが!?」

「けどまだ五時半だよ?」

「どの口が言ってるんだ!?」


 俺より早く起きて散歩をして、公園で母さんに会ってから着替えて家に来たとしても、早霧はざっと一時間前には起きている事になる。

 そんな奴の口からまだ五時半だなんて聞くとは思ってなかった。


「まあまあ、細かい事はさておき学校まで時間あるんだから寝ちゃおうよ」

「細かくないが……ていうか学校? 今日は祝日だろ?」

「え? だってじぶけんあるじゃん。ほら、ゆずるんが相談に来たい子がいるって」

「……あ」

「ははーん? その顔、忘れてたね?」


 ベッドの上に寝転がって俺を誘う姿勢を崩さないまま、顔だけをニヤケさせる器用な幼馴染だった。

 

 先週は早霧に夢中であまり記憶に残らず、俺からしたキスが原因で記憶が吹き飛んで……つまり、早霧のせいで忘れていた。

 俺は悪くない、いや、悪いか……。


 と、ともかく今日はボランティア部の真の目的である、自分らしさ研究会としての活動日だったんだハハハ……。


「ふぁあぁ……」


 葛藤の末に俺が思い出したというのに、学園一の美少女は呑気に大きな欠伸をしている。こんな顔、外では絶対に見せられないぐらい気の抜けた顔だった。


「……寝ないの?」


 当然のように聞いてくるが、そこは俺のベッドである。

 

「あーあ、蓮司が約束を忘れてると思って教えに来てあげたんだけどなー」

「ぐっ……!」


 狙い済ましたかのように俺の弱点を的確に突いてきた。

 それについては俺に非があるので何も言えず、一方的に早霧の攻撃を受けるしかなかった。


「せ、制服……シワに、なるだろ……」


 こんな反撃方法しか見つからない俺の弱さが憎い。


「え、服なんだから別に良くない?」


 争う次元が違いすぎてダメージにすらならなかった。

 早霧は美少女なのに、着る服に関しては昔からとんでもなくズボラである。


「……ぬ、脱げってこと?」

「ち、違うっ!!」


 急にハッとなった早霧が掛け布団で身体を隠した。

 何考えてるんだコイツ!?


「だ、だって今さっきも蓮司に見られたし……!」

「そ、それはお前がはだけていたからだろ!?」

「や、やっぱり見たんじゃん!!」

「うぐっ……す、すまん……」


 流れるような誘導尋問に、逃げ場なんて無かった。

 俺が悪いんだろうか、俺だけじゃないと思うが、ていうか何でワイシャツはだけてたんだコイツ……?


「じゃあ、一緒に寝てくれたら、許してあげる……」

「…………」


 それは、反則で。


「……親友、寝よ?」

「……分かった」


 禁じ手だった。

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