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【書籍化決定】ねえ親友。今日もキス、しよっか?  作者: ゆめいげつ
最終章 俺たちは幸せなキスをする

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第317話 『蓮司をよろしくね!』

 朝のラジオ体操が終わって、俺は早霧と一緒に自分の家に帰った。

 公園の中からずっと早霧が腕にくっついて離れなかったけれど、アイシャ達の為にカッコいいお姉さんとして頑張ったし寂しい想いも隠し通したご褒美で俺は何も言わなかった。


 いや、俺も寂しかった。

 俺だってせっかく仲良くなれたアイシャと可愛い弟分の厚樹少年が離れてしまうのはとても辛いのである。


「蓮司、早霧ちゃん! いってくるわね!」

「二人とも仲良くな! いてて……」

「だから父さん、無理するなって」

「はーい!」


 そして家に帰っても一時的な別れが待っていた。

 ただこっちは本当に一時的な、腰を痛めた父さんが検査入院する為である。


 何だったら夜には母さんも帰って来るし、全然悲しくもなんとも無かった


「早霧ちゃん、蓮司をよろしくね!」

「何かあったらすぐに連絡するんだぞ早霧ちゃん! ……いたたたた」

「はい! 任せてくださーい! パパさんもお大事に!」

「……実の息子を信頼してなさすぎじゃないか?」


 何故か母さんと父さんが俺を無視して早霧と握手をする。

 母さんはともかく、父さんまで早霧の味方をするらしい。


 世が世ならグレて不良になっていたところだ。


「じゃあ夏祭り、楽しんでねー!」

「俺も病院生活楽しむからなー! いてててて……」

「いってらっしゃーい!」

「父さん腰大事になー!」


 そうして母さんと父さんは笑顔で玄関を閉め、病院へと向かった。

 さっきも言ったけど、全然悲しくもなんともない別れだった。


「…………」

「…………」


 だけど、沈黙する。

 閉じた玄関を俺と早霧も見つめていた。

 先に動き出したのは、案の定早霧の方だった。


「……ぎゅー」

「……どうした急に?」

「……蓮司が、寂しいと思って」

「……ありがとな」


 どうしよう。

 本当に寂しくない。

 むしろ寂しいのは早霧の方だろう。

 早霧の父さんと母さんが旅行に行って、アイシャとはもうすぐお別れ、俺の父さんも病院に行ってと、形は違うが別れが続いている。


 そんな寂しがり屋な早霧を励ます為に、俺は早霧の背中に手を回した。


「蓮司がいる……」

「だから、どこにも行かないって言ったろ?」

「うん……」


 こんな時にアレだが、俺の胸に早霧の胸が押し付けられている。

 何度も言うが、俺は全く寂しくない。

 だから今も早霧を抱きしめながら、色々な意味で早霧を感じていたんだ。


「……ちゅー、したい」


 ――知ってた。

 多分そろそろだなって思ってた。

 だって公園からずっと早霧がソワソワしていたから。


「仕方ないな」

「あっ……」


 でも、もしかしたら。

 俺もしたかったのかもしれない。

 早霧とキスをするのが日常になって、愛おしいと感じたらその唇が欲しくなる。


 背中に回した手を、腰に落として引き寄せる。

 足まで密着した早霧の体温を感じながら、眼下に広がる世界一の美貌を見つめた。


「早霧……」

「蓮司……」


 お互いに名前を呼ぶ。

 上目遣いで俺を見つめる淡い色の瞳は、寂しさと愛しさで既に潤んでいた。

 その瞳を見つめ返しながら、俺は顔を近づける。

 キスする直前に閉じる瞳と一緒に、その唇を塞ごうとして――。


 ――ガチャッ!!


「ごめんごめーん! 忘れも、の……」


 瞳が閉じたのに、玄関が開いた。

 俺も早霧も目を開くと、横には俺の母さんがいたんだ。


「…………忘れ物を、忘れて、戻ってきた事を、忘れるわね」


 ――ガチャリ。


「…………」

「…………」


 そしてゆっくりと、扉が閉まっていく。

 残された俺と早霧は、しばらく抱き合ったまま、玄関で固まっていたんだ。

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