第314話 「朝日ヶ丘厚樹くん!!」
「アツキー! おめでとー!!」
「あ、ありがとうアイシャ……えっと、僕も、良いんですか?」
「もっちろん! さあさあこっちこっち!」
厚樹少年が呼ばれた事によりアイシャは青色の猫のぬいぐるみを抱きかかえながら笑顔で飛び跳ねている。
まさか自分が呼ばれると思っていなかった厚樹少年が驚いているが、早霧も笑顔でベンチの前に手招いた。
「朝日ヶ丘厚樹くん!! 厚樹くんも七月の間、毎日アイシャちゃんと一緒にラジオ体操に来てくれて見事スタンプを全部埋める事が出来ました! そんな厚樹くんにもアイシャちゃんとお揃いの可愛い可愛いプレゼントだよー!!」
「あ、ありがとう、ございます……!」
「わーっ! ニャーンちゃんだ! アツキもニャーンちゃん!!」
そんな早霧が紙袋から、今度は黄色の猫のぬいぐるみをプレゼントする。
緊張しているのか言葉に詰まった厚樹少年よりも、隣にいるアイシャの方が喜んでいた。
「アツキー! お揃いお揃い!」
「そ、そうだねアイシャ……」
「色違いかぁ……レアだな」
「バカねアンタ! もっとロマンチックな事言いなさいよ!」
「ふ、二人だけのお揃い……良いなぁ……」
早速アイシャが青色猫のぬいぐるみを黄色猫のぬいぐるみの頬を擦り合わせる。
仲良しの猫がお互いに毛づくろいをする動作だ。
それによって自然と二匹の猫のシルエットがハートの形になっていく。
「おっ、なんかハートみてぇだな!」
「あっ、本当! アンタも見る目あるじゃないの!」
「た、太一くん凄いね……!」
それに気づいたのは、一番近くで見ていた太一少年だった。
真里菜と美玖もそれに続き、感激した視線を二人に送る。
「ほ、本当だ……これ、ハートみたいになる……」
「アツキとハート! ラブ! ラブユー! ニャーンちゃん!」
驚きっぱなしの厚樹少年とは対照的に喜びっぱなしのアイシャ。
その手に持つぬいぐるみ達は、青い猫が黄色い猫に求愛のダンスを踊っているようだった。
「ふっふっふ! だいせいかーい!!」
「オネエチャン!」
「みんなの言うとーり! その子たちは二匹、ううん二人合わせてハートになるの! アイシャちゃんにプレゼントしたのが、青色猫のあつきくん! 厚樹くんにプレゼントしたのが、黄色猫のあいしゃちゃん!」
「ぼ、僕達と、同じ名前……」
「ワーイ! アツキとあつきー!」
二人の為にぬいぐるみを選んだ早霧は、百点満点のドヤ顔を放つ。
しかしその表情に厭味は一切なく、二人の事を心から想う笑顔だった。
「少しの間、離れ離れになっちゃう二人に……私と蓮司からのプレゼント! お互いの名前をした猫ちゃんが近くにいてくれれば、寂しさも半減! いつでも思い出せるし、その子たちで一つのハートになるから、また会えるよっておまじないだよっ!」
「……オネエチャーン!!」
「わあぁっ!?」
「オネエチャン大好きー!!」
「……えへへ、私もアイシャちゃん大好きー!!」
早霧の説明に感極まったアイシャがその胸元に飛びつく。
そのまま青色猫のあつきを手にしたまま、二人は笑顔で抱き合った。
……喜んでくれて、良かったな早霧。
「僕と、アイシャの……」
「おー! 良かったじゃんか厚樹! アイシャとお揃いだぜ!!」
厚樹少年はその横で、黄色猫のあいしゃをじっと見つめていた。
そこに太一少年が駆け寄って、その肩を組む。
俺と早霧とは違う、同じ小学生男子同士の一般的な親友の形だろう。
「アイ、シャと……」
そんな青すぎる、青春の肩組み。
肩を組んで来た太一少年ではなく、厚樹少年は手元のアイシャを見つめ――。
「う、ぐす……うぅ……っ!!」
「あ、厚樹ぃ!?」
――ボロボロと、大粒の涙を流してしまった。




