第307話 「み゛ゅ゛っ゛!?」
早霧が俺の膝の上に座ってきた。
これが家で、俺の部屋とかだったらまだ良い。
だけどここは朝の公園で、隣には厚樹少年とアイシャがいる状況だ。
マズい、これはとてもマズい。
膝と言うか太もも全体に感じる早霧の柔らかさとか、顔に触れる長い白髪から漂う良い匂いとか、何かもう全部ヤバい状態だった。
「えへへ、罰として蓮司にはこうしてもっとくっついちゃいます」
「く、くっつくって言うか……お前なぁ!」
対抗手段が何も無かった。
マウントポジションとは違う意味でのしかかられ、何も抵抗が出来ない。
だんだんと太陽が昇り出して周りが暑くなっていく中で、早霧の熱という違う熱さが突然俺に襲い掛かってきたんだ。
「ほらほらー、このままだと危ないよー? 早霧ちゃんが落ちちゃうよー? ぎゅってしてほしいなー?」
「だ、だったら動くな……!」
ゆさゆさ、ゆっさゆっさ、と。
早霧が俺の膝の上で、上下左右に揺れ始める。
それによって俺の身体に、主に下半身というか太ももあたりに早霧の感触がこれでもかと伝わってきていた。しかもお互いがラジオ体操前のハーフパンツな為、膝から下は素足である。いくら早霧の熱が心地良いからと言っても夏の暑さは暑いままで、触れ合う素足が汗で滑っていた。
非常によろしくない状況である。
だって隣には、厚樹少年とアイシャもいるのだから。
「アツキ! アイシャも! アイシャ達もオネエチャンみたいにやりたい!」
「えぇっ!? ぼ、僕達も!?」
「……ダメ?」
「う、ううん! いいよ!」
「アツキだいすきー!」
「わ、わぁ……!?」
手遅れだった。
俺と早霧のやり取りを見て、丸く大きな碧眼をこれでもかとキラキラにさせたアイシャが、俺達と厚樹少年を交互に何度も首を振って見つめていた。
そしてアイシャの事が好きすぎる厚樹少年も驚きはしたけれど、一瞬で陥落する。弟分ながらに少し甘すぎはしないだろうかと心配になるが、もう残り時間も少ないしなと心の奥で首を横に振る。
すると見事に、俺の膝の上に乗る早霧の隣で、厚樹少年の膝の上に座るアイシャが完成した。
……何だこれ?
「エヘヘー! オネエチャン達と一緒ー!」
「わー! お揃いだねアイシャちゃーん!」
仲睦まじく。
美少女二人が嬉しそうに笑い合う。
「れ、蓮司お兄さん……」
「……こういう時もある」
俺と厚樹少年の、膝の上で。
最初はお互い右端と左端にいたのに、気づけば俺と厚樹少年は隣になっていた。
それもこれも、早霧とアイシャが膝の上にいるからである。
「アツキ、もっと、ギュー!」
「こ、こう?」
「うんっ!」
アイシャに催促をされた厚樹少年が後ろから腹部を抱きしめる。
それにアイシャはニコニコで、すごくご満悦だった。
「蓮司、もっと、ぎゅー!」
「言ってて恥ずかしくないか?」
「私より蓮司の方が恥ずかしい事言ってるよ!?」
それを真似する早霧。
冷静に突っ込んだだけなのに、何故か俺の方が怒られた。
俺はいつも思ってる事を言ってるだけだし、トータルで見たら早霧の方が恥ずかしい事を言っているというのに。
「それは早霧が可愛すぎるのが悪い」
「み゛ゅ゛っ゛!?」
だから仕方がないので、俺も早霧を後ろから抱きしめて、ついでにちょうどよく目の前にあった肩に顎を乗せた。
すると、どうだろうか。
全身で早霧を感じられるし、何より後ろから肩に顎と言うか顔を乗せているので、物理的にも早霧を近くに感じる。
けどやっぱり夏だからか暑いし、なんか早霧からは変な鳴き声が出たのだった。




