第306話 「すっごい寂しい!」
「ギュギュギュー!」
「あ、アイシャ、流石にこれは……」
七月最後の日曜日。
真夏の日差しが降り注ぐ、小さな公園の木の下にあるベンチに俺達は座っていた。
「ほら蓮司ももっと詰めて!」
「いやもっとってお前……」
いや、これは座っていたというよりはくっついていたという方が正しい。
横長のベンチの中心に座る早霧とアイシャの白金美少女疑似姉妹。そしてその左右から挟むように俺と厚樹少年が座り、全員の身体がこれでもかとくっついていた。
遠巻きから見たら、俺、早霧、アイシャ、厚樹少年の並びである。
けど実際にはくっついているので俺早霧アイシャ厚樹少年ぐらいの距離感だった。
「みんなが寂しくないようにギュッギュー!」
「ほらほら! アイシャちゃんもこう言ってるんだし、ね?」
真ん中に座る早霧とアイシャが仲睦まじく腕を組む。
そして二人は空いたもう片方の腕で早霧は俺の、アイシャは厚樹少年の腕を組んで引っ張っていた。
それにより俺と厚樹少年による、早霧とアイシャのサンドイッチ状態になっていたんだ。
「オネエチャン、寂しくない?」
「すっごい寂しい!」
「じゃあもっとギュッギュするー!」
「わーい!!」
仲良しすぎる美少女疑似姉妹のやり取り。
それに引っ張られるように、ていうか引っ張られながら、俺の腕は早霧の腕と絡みに絡み合っていた。
しかもアイシャとのやり取りに夢中になっているせいかいつもより力が強く、油断したら俺の身体ごと早霧に覆いかぶさってしまいそうなぐらいである。
そのせいで早霧は無意識なんだろうけど、腕と一緒に早霧の大きな胸の柔らかい感触が押し当てられているし、密着しているので朝風呂上がりの良い匂いまで漂ってきていた。
俺達はいったい、朝の公園で何をしているのだろうか。
「アツキももっとー!」
「あ、アイシャ! 引っ張らなくても大丈夫だよ!? 僕はここにいるから!」
「エヘヘー!」
厚樹少年が負けそうだった。
だけどアイシャと揃って嬉しそうだし楽しそうなので、これはこれで良いのだろう。
「ほら、蓮司ももっと!」
「こ、これ以上か……?」
「厚樹くんはやってるよー?」
「そ、それはそうだけどさ!」
問題は早霧だった。
早霧の容赦ない引っ張りが続いている。
厚樹少年は受け入れたけれど、俺まで負けてしまったら収集が付かなくなる。
それこそこの後に太一真里菜美玖の幸せ三角関係三角関係トリオも来るのだから、少なくても俺が早霧に負ける訳にはいかなかった。
「むぅ……」
「な、何だ……?」
だけど早霧はそれを許してくれなかった。
あからさまに頬を膨らませて、淡い色の瞳をジトっとさせて俺を見る。
その表情は、今この場にいる誰よりも子供っぽくて。
「そんなわがままな蓮司には、こうだー!!」
「……えっ、はっ、なぁっ!?」
そんな子供らしさ全開の早霧が。
有無を言わさずに、俺の膝の上に乗ってきたのだった。




