第233話 「……じゃあ、蓮司の服も、脱がすね?」
「あんまり、見ないで……」
「すまん、無理だ……」
俺にダボダボのTシャツを脱がされた早霧が恥ずかしそうに胸元を腕で隠す。
しかし大きく育った二つの胸は、ずっと着回している少し小さめな薄水色のブラジャーと細い腕では隠しきれていない。
しかもそのブラのデザインや色はさっき俺が家から持ってきたものとまるっきり同じで、それがまた胸の奥をドキドキさせる原因になった。
「は、裸なら……前に見たじゃん……」
「そ、それとこれとは別だろ……?」
顔を真っ赤にした早霧が、弱弱しく俺の言葉に食ってかかる。
でもそれがまた俺の胸を高鳴らせた。
そもそも、不可抗力で見てしまうのと自分の意志で見るのは全然違うんだ。
「蓮司の、えっち……」
「……早霧のせいだよ」
「ひゃぁんっ!?」
恥ずかしさに耐えきれなくなってそっぽを向いた早霧の首筋にキスをする。
不意打ちのキスにくすぐったがりの早霧は甘く大きな声を漏らした。
「キス、するんだろ?」
「……いじわる」
「――んっ」
涙目になった早霧が、反撃と言わんばかりに俺の唇を塞いでくる。
下着姿になったことで露出した肌の熱と柔らかさが直に伝わってきて、その華奢な背中を両手で抱き寄せれば早霧はそれに応えるように長く深いキスを続けた。
「んぅ……れんじ……すき……すきっ……んちゅ……すき……だいすきぃ……」
「さぎり……んっ……おれも……んぅ……すき……んむ……だいすきだ……」
正面からの、深く深く深いキス。
溺れるぐらい長いキスはだんだん息が苦しくなる。
頭がボーっとするのは酸素が不足しているからだろうか。
それとも、早霧との、親友とのキスが気持ち良すぎるからだろうか。
「ぷはっ……れんじ……」
「ふぅ……さぎり……」
長い長いキスの果てに、俺たちは唇を離して見つめ合う。
早霧の淡い瞳は熱を帯びて、その瑞々しい唇はまだ物足りなさそうに艶めいていた。
「……ちゅっ」
「ぅぉっ!?」
また、キスが来ると思った。
だけど今度は早霧から、俺の首筋にキスをしてくる。
そのくすぐったさに思わず声が裏返ってしまい、俺も早霧のことを変に言えないなと思った。
「ちゅっ……ちゅっ……ちゅるっ……ちゅっ、ちゅっ……ちゅぅ……ちゅっ……」
「さ、早霧……!? ま、まっ……くぅ……!?」
キスして、キスして、少し舐めて、キスでキスで、啄んで、キスをして。
まるでミルクを飲む子犬のように、早霧は俺の首筋を唇で虐めてくる。
仕返しなのか無意識なのか、ワザと音を出して繰り返すキスの嵐は、くすぐったさとは別に耳からも俺に気持ち良さを送り込んできていた。
「れんじ……顔、赤いよ……」
「さ、早霧のせいだよ……」
「知ってる……んぅ」
「……んっ」
顔を上げた早霧が、俺を見つめる。
顔が赤いのはお互い様だった。
俺たちはその赤さを分け合うように、またキスをする。
でもむしろ、顔の赤さも暑さも増すばかりだった。
「……そろそろ、あの時のキス、する?」
「……ああ」
少しだけ、早霧が唇を離す。
でも離れた距離は一センチも無いだろう。
早霧の吐息が俺の唇にダイレクトに当たる距離で、早霧が俺に質問をする。
キスに夢中になっていたせいで忘れていたけれど、早霧の服を脱がせたのにはちゃんと理由があったんだ。
「……じゃあ、蓮司の服も、脱がすね?」
そう言って、今度は早霧が俺のシャツを脱がした。
子供の時、大雨の神社の中でした初めてのキスを、もう一度真似する為に。




