第213話 「……大好き!」
「さ、早霧!? どうした!? 俺の話がそんなに嫌だったか!?」
早霧がボロボロと泣き出してしまった。
思い出すのは俺が前に、『親友なんか』と言ってしまった日の出来事だ。
またやってしまったのかと焦った俺は慌てて立ち上がり、椅子が倒れるのなんてお構いなしに早霧の元に駆け寄る。
「ちが……違うぅ……れん、じぃ……!!」
「いや、違うって、え、じゃあ、何で!?」
大パニック。
両手で涙を拭いながら俺の名前を呼ぶ早霧を前に俺は何をして良いか分からなかった。
「れんじがっ……れんじが、私だって好きだもん~~~~~っっ!!」
「ど、どういうことだ!?」
早霧は大泣きして支離滅裂になっている。
どうしていいのか分からず助けを求めて長谷川たちに視線を向けた。
「お前、嘘だろ……?」
「あんなにロマンチックな事言ったのに……?」
「ひょわぁ……ひょわぁ……」
「兄さんって、カッケー馬鹿なんだな……」
「こればっかりは、私もそう思います……」
「よ、余罪多そう……」
「れ、蓮司お兄さん頑張ってください……!」
「オニイチャン、がんばれ……!」
しかしほとんどが、呆れ顔だった。
味方は厚樹少年とアイシャ、それから顔を真っ赤にしている草壁ぐらいだけど応援しかしてくれない。
どうやら自分でどうにかするしかなさそうだ。
「……えっと、早霧?」
「うん……」
「嫌じゃ……ないんだよな?」
「うん……」
どうしよう。
うん、としか言ってくれなくなってしまった。
落ち着かせるためにキスを……いや本気で泣いてるし、何より長谷川たちの前でそんな事は出来ない。
「……早霧」
『わあっ』と誰かの声が聞こえた。
それは多分、俺が早霧を抱きしめたからだろう。
お互いお揃いな学校指定のジャージは炎天下の下ではとても暑く、抱きしめた事によって早霧の熱を強く感じた。
でもそれでも、早霧の事を考えて、早霧の事を話したからだろうか。
こんな暑さ、これっぽっちも嫌じゃなかった。
「……ありがとな。俺の隣にいてくれて」
「……うん」
「……これからも、一緒にいてくれるか?」
「……うん……うんっ!!」
ぎゅっと。
早霧が俺の背中を抱きしめてくれた。
良かった。それと同時に、すごく愛おしいって思った。
「良いぞー若い兄ちゃん!」
「暑いのに見せつけてくれるわねー!」
「漢じゃねえか……。嬉し涙以外で、その子を泣かすんじゃねぇぞ!!」
「二人ともおめでとーっ!!」
「我が街でこんな素晴らしい光景を見れるなんて……」
そして、そんな俺たちを見て拍手をしてくれる知らない人たち。
……知らない人たち?
「は、はいぃっ!?」
――パチパチパチパチ!!
気づけば俺たちはゴミ拾いに参加していたスタッフや他の人たちに囲まれていて、全員に拍手を送られている。
……そうだった、ここ、河川敷のど真ん中だった。
ボランティア活動中に、早霧の話に夢中になって、気づけば人が沢山いる前で早霧を抱きしめていた。
その事実に気づいた途端、俺の顔が、身体が、違う意味で熱くなった。
この熱は、恥ずかしさだ。
「さ、早霧!? わ、悪い! みんな見てる! 見てる、超見てるぞ!?」
俺は慌てる。
レベルで言えばさっき以上の、目に見えて分かるレベルの大慌てだ。
「蓮司……」
「お、おう! と、とりあえず今すぐ離れ――」
早霧が俺の名前を呼んで、背中から手を離す。
そしてその手は、俺の首に回されて――。
「……大好き!」
「――んぅっ!?」
――キスを、したんだ。




