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【書籍化決定】ねえ親友。今日もキス、しよっか?  作者: ゆめいげつ
第七章 俺たちはもっと仲を深めたい

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第182話 『……絞めたんですか!? 首を!!』

「草……壁……?」

「ひな……ちん……?」


 俺と早霧は揃って、口からこぼれるようにその名前を呟いた。

 草壁ひな。

 俺と早霧がキスをするようになったのがきっかけで仲良くなり、何故か首絞め好き仲間として同志認定してくる長い前髪で目が全て隠れているクラスメイトだ。

 部員ではないが自分らしさ研究会にも遊びに来るようになっていて、それこそ日曜日にある夏祭りの準備と本番には手伝いに来てくれると言っていた……学年主席で大家族でバイトに多忙な女の子である。


 ……その草壁が、今日は来れないと言っていた草壁が何故ここにいるのだろうか?


「ひょわ……ひょわわわ……」


 そんな草壁は廊下から俺たちを覗いている。

 その長い前髪に隠れた瞳はどんな形相をしているかわからないが、その下の頬は赤くなっていることからまあ……その、見られていたらしい。

 なんかずっとあわあわというか、ひょわひょわ言ってるし……。


「と、とりあえず入って来ないか?」

「そ、そうだよ怖くないよー……?」

「ひょわぁ……」


 なんだこれ。

 まるで警戒する野良猫を呼ぼうとする子供のようだった。

 俺たちに敵意が無いと知った草壁は、ゆっくりと廊下から身体を出す。

 その服装は当然だけど、学校にいるので制服だった。夏服だけど膝下より長いそのスカートが、彼女の内気な心を表しているようである。


「え、えっとだな……草壁にも、話すことがあるんだけど……」

「う、うん……ひなちんは、もう知ってるかもしれないけど……」

「ひょえぇ……」


 そんな教室に入って来た草壁に、俺たちは改めて説明をしようとする。

 おずおずと俺たちの目の前にやって来た草壁はプルプルと生まれたての子鹿のように震えながら気まずそうに顔を左右に動かして。


「んにっ!?」

「んに?」


 また、変な声をあげて固まった。

 いや、さっきから変な声しか出してないけど。

 そんなプルプル振動を続けている草壁が、プルプルと人差し指を縦て指を差した。

 その指先は早霧の胸元に向いていて――。


「……締めたんですか!? 首を!!」


 ――そして、叫んだんだ。

 今日初めての、人間としての言葉を。

 だけどあまり理解したくない部類の、勘違いの言葉を。


「ど、同志! 説明してください! どどどっ、どうして八雲さんの首元に同志のアイデンティティである同志のネクタイが巻かれているんですか!? 逆転ですか! 入れ替えですか! 一夏の変化と過ちですか! どういうことなんですか同志!?」

「落ち着け草壁!? ていうか俺のアイデンティティってネクタイなのか!?」

「え? 違うの?」

「早霧はちょっとややこしくなるから黙っててくれないか!?」

「むぅ……」


 あからさまに頬を膨らませた早霧はいったん置いておいて、今はこの暴走する首絞め愛好女子をどうにかするのが先だった。

 確かに草壁は俺が早霧にネクタイを引っ張られているところから勘違いして同志と認定して来たけど、まさかさっき階段で濡れ透けになった早霧の胸元を隠す為に巻いたネクタイに反応するとは思っていなかった。


 そもそも、草壁がここにいて俺たちを見つけること自体がイレギュラーだけど。


「わ、私なんて自分でやるのに虚しさを感じて昨晩はお風呂で限界まで潜水して溺れかけたって言うのに……同志は、同志はぁ……もう締められる方から締められる喜びを伝授する側にランクアップしたというのですかぁっ!?」

「言ってること色々と危ないぞ!?」

「そうだよひなちん! 私はのぼせても蓮司と一緒だったから助かったけど、お風呂は本当に危ないところなんだよ!!」


 暴走を続けて何やら危ないことを口走る草壁。

 その暴走は留まるところを知らず、ついには早霧も止めにかかろうとして。


「……一緒に、お風呂? 八雲さんと、同志が……?」

「…………あっ」


 早霧の暴露で、俺は心の中で頭を抱える。

 墓穴を掘るって、きっとこういうことを言うんだろうなって……思った。

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