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Scene7

 アキラは微笑んで頷く。アキラ自身もスッキリした気分だった。間接的にだが、リアナの気持ちも聞けた。リアナが感じ取ってくれていたことで、自分が秘めていた思いの正体もハッキリさせることができた。

「それじゃ、お言葉に甘えて」

 そのタイミングで、ちょうどノック音がした。

「入るよ~。ケーキ頂いたから皆で食べよ!話は終わった?」

 リアナが持つトレーには紅茶が入ったポットと、三人分のケーキが載せられていた。レオンがすぐに立ち上がり、リアナからトレーを受け取った。

「ありがとう、ちょうど終わったところ」

 ちらとアキラの方を見やる。アキラもレオンに同意して頷いた。

「良かった。なんか2人、会った時と比べて雰囲気が良い感じ」

 トレーがテーブルに置かれると、リアナは三人分のカップを中央に寄せ、新しい紅茶を注いでいく。カモミールの香りが全員の鼻をくすぐった。一緒に運ばれてきたケーキも美味しそうだ。

「進路の話とか色々ね。で、僕は名案を思い付いた」

 とてもご機嫌な様子でレオンは紅茶を一口。ケーキ皿も手に取り、ケーキのてっぺんに飾られたイチゴを一口でいただく。

「二人が大学に入学してくるまで、待ってるよ」

「……んん?」

 リアナは思いきり首を傾げてる。アキラも仕草では表さずとも気持ちは同じだった。

「……あ、そっか。私たちは高等部一年。レオンは大学一年。私たちが大学進学する時にはレオンは三年生だものね」

 リアナの解釈を聞いて納得する。待ってる、とはなんだ、そういうことかと。しかし、レオンはそうじゃないよと否定する。そしてケーキをもう一口。

「進級せずに待ってるってこと。留学しちゃったせいかな。なーんか、今どきの大学生に馴染めなくてつまらないんだよね。授業は面白いしタメになるけど、さっきもリアナ言ってたじゃん。キャンパスライフ満喫したいって。だったら僕もそれに便乗しちゃおうってわけ。……二人とも、手が止まってるよ?早くケーキいただこうよ、美味しいよ」

 レオンの発言にどう反応したら良いか分からないが、促されるままケーキを手に取る二人。

「お義父様がそれを知ったら大変なことになるのでは…?」

 留学を終えたのに大学では留年三昧とはシュグナル家の名誉に関わるのは言うまでもない。リアナにそれを指摘されてもレオンはケロッとしている。

「その時は、その時。三年後じゃなくて、二人が飛び級で大学に来るのも大歓迎だよ。入学式の生徒代表挨拶、二人でしたんでしょ?満点合格って噂だし、推薦入試の添付書類に加えても十分価値アリ。二人の高校、色んな方面から将来を期待される人材が集まることで有名だしね」

 その情報は一体どこで…と言いたくなるのをグッとこらえ、アキラもケーキを一口いただく。確かに、入学式の生徒代表挨拶はリアナとふたりでやった。毎年男女1名ずつ、成績上位者が選抜されることになっているし、成績開示請求をしてみたら、2人とも満点合格だった。優秀な生徒が我が校に入学してくれて私も鼻が高い、と学園長にも言われてたっけ。

「知り合いの伝手で情報は得たんだ。僕も優秀な二人とこれからも末永くお付き合いできそうでほんとに鼻が高い」

「……頭の中読んだでしょ」

「それは誤解だよ。僕にはそんな能力ないし、アキラの顔がお喋りなだけ」

 顔がお喋りとは一体どういう意味だ、と思っているとリアナが耐えきれず笑い出した。

「いつも冷静でクールなアキラがムキになってる、なんか面白い」

「ムキになんかなってない」

「「なってるなってる」」

 ねーと仲睦まじそうにハモるレオンとリアナ。もうこの2人、バカップルだと罵ってやろうか。

「なんとでも言ってくれていいよ。アキラに認めてもらえるなんて喜ばしい限りだ」

「そうね。アキラの恋人探しは、私とレオンが一生をかけて頑張らせてもらうね」

「??!!」

 結果、アキラは二人に対抗することを諦め、よく分からない疲労を感じる羽目になってしまった。その後。リアナと両親ともよく話し合った結果、高等部の長期休み(春休み、夏休み、秋休み、冬休み)を利用し大学の集中講座を受講。高等部を卒業する頃には大学2年生の課程を修了できる単位をとり終え、同級生が大学一年生として入学するタイミングで二人は大学三年生へと編入した。

 レオンは大学二年生までは順調に進み、それから一年間は休学。その間は父親の右腕として少しだけ現場に出ていたが、二人の入学が決まると復学。実習やレポート課題をそつなくこなし(アキラの力を借りながら)、現在に至る。

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