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Scene6

 ティーポットとお菓子が入っていたお皿を回収し、リアナは退室した。キッチンの場所が分かってるあたり、何度かこの家を訪れて熟知しているようだ。

「突然ごめんね。君にはずっと会って話したいと思ってて」

 リアナがいた時と変わらない穏やかな口調だ。改まった姿勢が良いのかと思ったが、用件が分からないので、アキラも楽な姿勢をとったままにする。

「リアナと君の事はずっと知ってたんだよ。そして、密かにリアナに想いを寄せてた」

「……そっか」

 レオンのカミングアウトに、アキラはそこまで同様しなかった。

「バレてた……?」

「いや、なんとなく。でも、貴方がいつも、リアナの手が届く位置に本を落としていたから、今思えば分かりやすかったかも」

「だよね。いや、偶然落としちゃった本もあったよ?言い訳にしか聞こえないと思うけど」

 照れるなぁと言いながらレオンは話を続ける。

「でも、彼女の傍にはいつも君がいる。特別な関係かなと思ったけど、全くそんな感じでもなく、お互いに分からない問題を純粋に教え合ってるし。そのタイミングで僕の留学の申請が通ってさ。で、留学を終えたタイミングで前々から話題に挙がっていた縁談をお願いした、というわけさ」

 それでね、アキラ、とレオンは改まった。

「リアナは僕との縁談を受け入れてくれた。でも、アキラは、それで納得いってる?」

 そう言うレオンの表情は真剣そのものだ。

「僕の家系が医学界で言わば重鎮だから、リアナの家族はシュグナル家をたてるつもりで誘いに応じてくれたんだと思う。でもそれは、親同士の都合だ。リアナと幼い頃から長い時間一緒にいたのは、君なんだよアキラ。二人の正直な気持ちを知りたい。……リアナにも同じように伝えたんだけど、その、真意が掴めなくて」

 最後の方の声は弱々しかった。

 リアナは心の綺麗な人だ。疑わないし、大人の思惑を悟ったとして、それをどう受け止めてるのだろうか。両親から事前にレオンを勧められて受け入れた可能性も否定できない。そんな状態で成り立っている成婚は、レオンは望んでいないのだ。そして、アキラの気持ちも尊重したいと考えている。アキラがレオンの立場だったら、そこまで配慮し行動に移せるだろうか。そんなことさえ思いつかないかもしれない。リアナ同様、レオンも心が澄んでいる人だと感じた。

「レオンさんは、リアナのこと、好きですか?」

 敬語は使わなくて良いと言われたが自然と畏まっていた。

「うん。好きだ。全部丸ごと抱きしめたい」

 訊ねたアキラの方が赤面してしまいそうな、歯の浮くような言葉。そんな言葉をさらりと言えるレオンが、正直羨ましいと思いながら、アキラは答える。

「僕は、リアナに幸せになって欲しいと思っています。幼なじみとしてずっと想ってきたことです。だから、レオンさんが、リアナのこと幸せにしてください」

 その役目は僕じゃダメなんです、と続けた。

「幸せになってほしいと願うばかりで、僕自身がリアナを幸せにしようなんて、考えもつかなかった。だから、僕にその役目は無理なんです。……多分、リアナも薄々感じていたと思います。彼女には人の気持ちを、心を感じる力があるから」

 そこまで言うと、レオンの表情が和らいだ。

「人の心を読めるのでは無く、人の感情に触れられる、ということだよね。彼女からその話を聞いた時、半信半疑だったんだけど、アキラの今の思いを聞いて確信に変わったよ」

「え?」

 真意が掴めないと言ったよね、と先程自分が発した言葉をアキラに再確認させる。

「『アキラとは、これからも幼なじみという関係でそばにいて欲しい。誰よりも私の幸せを願う人だから。だから私は、私を幸せにしたいと思ってくれるあなたと一緒になりたいです』って」

 彼女はそう僕に伝えたんだ、とレオンは話してくれた。

「僕ね、人の脈拍や血圧が目視でわかるでしょ。だから、悪いとは思いながらも彼女の様子を見てみた。その話をした時の彼女の脈や顔色に、特に違和感は無かった。そして、アキラ。今の君もそうだ。嘘をついた時に出る数値じゃない。試すような真似をして、ごめんね」

「……大丈夫です。なんというか、色々気を遣わせてしまってすみません」

「とんでもない。僕にとっても、君はかけがえのない人になりそうだよ、アキラ」

「そうですか? でも、本命は一人にしてくださいね」

「なかなか言うねぇ。さ、もう敬語はナシ。この話はリアナにはもちろん内緒で」

「もちろん。僕にできることがあれば言って。力になれると思うから」

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