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Scene4

「初めまして、アキラ。レオン・シュグナルです」

「こちらこそ、初めまして。お招き頂きありがとうございます」

 予想通り、リアナとレオンの縁談は上手く進み、なぜか僕は今、彼女の婚約者にあたる人物と握手を交わしている。しかも、彼の家の一室で、だ。部屋を囲うように置かれた本棚には、医学の専門書らしきものがズラっと整理され並んでいる。部屋の中央には長方形のテーブルを中心にソファーが置かれ、アキラたち三人は挨拶をすませるとゆっくり腰かけた。

「この度は、ご成婚おめでとうございます」

 知らないフリをするのもおかしいので、まずはレオンにそう伝えた。

「ありがとう、最初はどうなるかと思ったよ。まず、会って早々、君の名前で僕は呼ばれたからね」

「うわぁ……やらかしてるなぁ」

 率直な感想が口からこぼれた。縁談相手を目の前にして、別の異性の名前で呼ぶとは、両家の両親もさぞかし驚いたことだろう。

「もう、黙ってたのに」

 リアナは恥ずかしそうに両手で顔を覆う。

「話を聞くと、君はリアナにとってかけがえのない人だとか。でもそれは異性に抱くものでも、兄妹みたいなものとも違う。とにかく会えばわかるからって」

 婚約者以外の異性にかけがえのないって表現は使っていいのか!?とアキラは内心焦る。そしてリアナ同伴のもとシュグナル家に歓迎された理由も彼女のその発言のせいなのではと変な汗をかきそうになる。

「なるほど。……で、会ってみてどうです?」

 そう言いながら、どうか縁談話が自分のせいでこじれませんようにと強く願う。

「それがね、全く分からない!」

 そう言ってケラケラとレオンは笑い出した。

「で、ですよね」

 嫌味のない言い方と心から笑っているような彼の表情にひとまず安堵した。リアナはレオンの横でそれぞれの顔を見ながらニコニコとほほ笑んでいる。

「まだ会ってほんの数分だしね。でも、君が纏う雰囲気、好きだな。あ、堅苦しいの嫌だから敬語はなし。友達だと思って接してもらえると嬉しい。心拍が高いのと、かすかな発汗も気になっちゃうから」

 レオンは思った以上に気さくな人物だった。物腰が柔らかく人あたりが良い。傲慢でプライドの高い人だったら、と不安があったが、リアナが見初めた人物だ。そんなタイプとは真逆でアキラは安心した。ただ、侮れないのは彼が能力として相手の心拍や血圧など、触れなくてもある一定の体内の様子がわかること。嘘やごまかしは効かない人のようだ。確かに、緊張と不安で正常ではない。

「レオン、そう言ってアキラのこといじって楽しんでるでしょ」

「あ、バレた? ごめんごめん、同年代の人の訪問ってめったにないから嬉しくてつい。この能力はごく稀にしか使わないから安心て」

 リアナに指摘され、レオンはいたずらがばれた子供のように舌を出した。

「ちなみに使うタイミングって?」

 アキラはあえてその話題に乗っかってみる。そんな言葉が返ってくるとは思わなったレオンは目を輝かせた。

「顔が青白い人とか、この人の言ってること本当かなって思った時とか、ケースバイケースだけどアキラの場合は、どのくらい緊張してるのかなって気になったから」

「潔いくらい本音で話す人だって言われない?」

「うん、よく言われるよ」

 リアナも正直で素直な人だけど、どうやらレオンもそのタイプのようだ。

「これからは僕とも仲良くしてね、アキラ」

「もちろん。僕で良ければ」

 伸ばされた手に、アキラはもう一度自分の手を差し出し、先ほどよりも強く握り返した。

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