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耽美奇譚

秋は嫌い

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

毛虫いなけりゃ、もっと好きな季節ですよ。

久方振りの耽美奇譚です。

幼少期の記憶。まだ小学生。あの季節は……あぁきっとそう、秋だった。森が燃える、秋だった。紅葉が美しいなんて言われるけど、その対価として芋虫、毛虫が大量発生する。春夏秋冬、唯一秋だけに齎された祝福(くぎょう)だった。

春は花粉、夏は暑い、秋は毛虫、冬は寒い。だから春夏秋冬、好きな季節なんてありはしなかった。どの季節も大嫌いだった。でもとりわけ秋が嫌いになったのは、この一件があったから。


小学校から帰ると、颯爽と横引き戸を開けて家に入るのが日課だった。早く帰って、宿題を終わらせて、ゲームをやるのが常だった。故に取っ手に目をやる事なんか、殊更なかった。今日も颯爽と扉を開けて、階段を駆け上がろうとした時。指先にフワフワした完食、それからむくりと這いずる感触がした。

「ひぃっ」

毛虫が、茶色の毛が隙間なくに生えた毛虫が、取っての上をゆっくりと動いていた。咄嗟の出来事だった。なんの心構えもない状態だった。それも原因の一つ。けれども最も精神を抉ったのは、大嫌いな毛虫に直に触れた事だった。

「おばぁちゃん!! 毛虫!! 毛虫がいる!! 腫れちゃう!! 気持ち悪い!! 死んじゃう!!」

「死なないから、手洗っておいで」

そう淡々と言って、私を洗面所に突っ込むと、玄関の扉を締めた。戸締りの悪い、歪な悲鳴だけが木霊した。


それから数日後、また毛虫がいた。今度は白い壁を懸命に歩いていた。

「ひぃっ」

何度も言う様だが、毛虫、芋虫の類は大嫌いだった。目に入れたくもない。何処かに行って欲しかった。けれども今は手の届かないところにいたし、害も加えて来ない。だからさっさとその場を後にしようとした。

「どうしたんだい?」

「あ、お婆ちゃん。壁に毛虫がいて……」

世間話をしたつもりだった。ただ秋だから毛虫がいっぱいで困っちゃうね。と苦笑いをするつもりだった。けれども……。

婆ちゃんは持っていた手を壁に向けた。それを乱雑に振りかざすと、懸命に壁を這っていた毛虫を叩き落とす。落とされた毛虫は身動ぎをし、身を屈めてもがいていた。……小さいながらも痛そうで、その様は何だか可哀想で、大嫌いながらも思わず顔を顰める。

「あっ」

婆ちゃんの右足が毛虫を踏み付ける。余りにも無慈悲に。そして地面に向かって足を擦り付ける。汚れを地面に擦り付けるように。

そうして過ぎ去った後、丸められた死骸と体液だけがそこに留まった。

幼少期、蟻の行列を蹴散らす遊びをした。踏み付けて、ゴマ粒になった死骸を見て笑った。でもその一件以降、殺す事が出来なくなった。

自分だって同じ事していたのに、無慈悲で不気味で残酷で、幼いながらに恐怖を感じたものだった。


「あぁ、最悪……秋なんて大嫌い」

俺の前には死んだ目のまま紅葉を眺める女がいた。緋色に燃え上がる森は大層美しいのに、それを侮辱する様に眉間に皺を寄せる。

「紅葉は綺麗だがな」

「……。秋って、芋虫、毛虫一杯出るでしょ? でも私、そいつらだけは殺せないの。……お婆ちゃんが無慈悲に踏み付けたから」

神社って木を植えてるところが結構あります。

森森しているところは大抵神社があると思って散歩してます。

そこで秋口に経験するのが、毛虫の群れ( '-' )

数メートル歩く事に毛虫。階段にも毛虫。境内にも毛虫。

頭上から降って来ないかが不安になります。SAN値直葬です。


でも踏み付ける事は出来ません。


ただ足元を歩いていて、気になったから蟻を潰す。

そこに 可哀想 という気持ちがなかったあの幼少期。

その時初めて 残酷だ と気が付いたのがこの出来事です。



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