005 毒事件の結末(ダイヤード3歳)
楽しんでいただけると幸いです。
「それにしてもダイヤード様が無事にご回復されたようで、一安心ですね」
ダンバルトと遊んでいるダイヤードを横目にマルガネットは微笑んでいる。
「それで犯人として、廃爵された男爵家だった侍女が処罰されたと聞きましたが、どこまで本当なのですか?」
続けてマルガネットはオリヴィアに問うた。
「実行犯はその侍女でしょうが、黒幕がいることは確実でしょうね。ダードがマルガネット達から離されたのも偶然。ダードの傍にその侍女しかいなかったのも偶然となると、むしろ疑ってくれと言わんばかりでしょう」
オリヴィアは話しながら眉を顰める。
「法務局も厳罰に調査してくれてはいたのですが、犯人が毒を飲んでしまい、これ以上の捜査は難しいでしょうね」
「毒……ですか」
「ええ。みすみす毒を飲んで自死されたのでは体裁が悪いということで、処罰したと発表したそうよ」
「それは……なんともお粗末な」
マルガネットは一旦お茶を飲む。
「やはり、正妃様が?」
声を潜めてオリヴィアに問う。
「それとその派閥の方々でしょう。ダードの成長が早いのが気に食わないのでしょうね」
オリヴィアは優しくダイヤードを見つめながら答える。
「確かに。ダイヤード様は舌足らずなところはありますが、しっかりと受け答えなさいますものね」
「最近は侍女と一緒に絵本を読むのが好きなのだけど、特別賢いわけではないと思うのよね。それにあちらも優秀と聞きますし。」
もちろん、『あちら』とはユークリッドのことだ。
「まあ。ダイヤード様はすごく賢いですわ。ダンもですが、ダンの兄も三歳で長時間絵本を大人しく聞くことなんて出来ませんでしたわ。すぐに飽きて走り回るのですもの」
マルガネットは苦笑を漏らす。
「なら、ダードは天才なのかしら?」
オリヴィアとマルガネットは、顔を見合わせ「クスクス」と笑い合った。
「ただ、これからは一層目を光らせてダイヤード様をお守りいたします。先日のような失態は犯しません」
「ありがとう。ただ、何度も言うように此度の件はマルガネットに落ち度はないと、私が思っていることは覚えていてちょうだい」
オリヴィアの一言にマルガネットは頭を下げる。
「あなたも頑固ね。ただ、お父様から陛下に抗議がいったようなので、タターニア様も当分は執務に専念なさるでしょう」
「スターザー侯爵閣下の抗議ですか。脅迫ととらえられなければよいのですが……」
スターザー侯爵の娘への溺愛は有名だ。王家に嫁がせるのも側室だから蔑ろにされるといった理由で反対していたぐらいだ。
マルガネットは背筋の冷汗をはっきりと感じた。
「その心配はないわよ。いくらお父様でもいきなり王家への反意はお示しにならないでしょうし、反意は直前まで隠しておくものよ」
扇で口元を隠しながら「フフフッ」と笑うオリヴィアを見て、マルガネットは内心で溜息をつく。あの親にしてこの子あり、と。
「それでも宮廷の権力者を取り込もうと躍起になっているとの噂も聞きますので、十分お気を付けください」
「そうね。お父様も領地での仕事があるので完全には防げないでしょう。ただ、ダードを今後も狙うならとびっきりの嫌がらせをしてやることにしましょう」
「まあ。はしたない。ただ、我が家も微力ながらお手伝いさせてもらいます」
再び「クスクス」を笑う二人だったが、マルガネットはその嫌がらせの内容までは聞けなかった。
そして、同じ部屋にいて二人の会話を聞いていたダイヤードは「怖っ!」と思った。
ダンバルトは一瞬固まったダイヤードが今の遊びに飽きたのだと思った。
「ダード様。次は何して遊ぶ?」
ダイ「母上こわっ!」
レミ「そうかしら?」
ダイ「どこから見ても怖いだろ!」
レミ「普通だと思いますわよ」
ダイ「マジ?」
レミ「貴族の家なら普通ですわ。それにダード様も弟を蹴落として王位を狙われるのでしょう?」
ダイ「そ、そうだけど……」
レミ「その延長線上みたいのものですわよ」
ダイ「そう考えるレミが一番怖いです」
レミ「饅頭怖い…… ですわね」
ダイ「なぜ落語に精通しているのでしょうか…… ?」




