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004 目覚め(ダイヤード3歳)

楽しんでいただけると幸いです。

 目が覚めて体を起こし、辺りを見回す。天蓋付きの豪華なベッドにフカフカな掛布団。明らかに自分の部屋でないことに不安を覚える。

 辺りを見渡し、少し落ち着いたときに自分の目が濡れていることに気が付いた。

 胸から大事なものを抜け落ちていることが、凄く悲しくなる。


「グスッ。…… うわぁぁぁん! ()んじゃったー!」


 鳴き声を聞きつけた侍女がダイヤードをあやすが一向に収まる気配がない。


「ダイヤ! ようやく目が覚めたのですね。よかった……」


 話を聞きつけて駆けつけてきたオリヴィアがダイヤードを抱きしめた。

 「死んだ。死んだ」と泣き叫ぶダイヤードの背中をさすりながら話しかける。


「大丈夫ですよ。ダイヤはちゃんと生きています。だから泣く必要はないのですよ」


 誰が死んだか分かるはずのないオリヴィアは、毒を飲んで自分が死んだと勘違いしていると思い、ダイヤードに的の外れた声をかける。


 ダイヤードが倒れてから、ずっと治療にあたっていた医者と聖人が呼ばれた。

 医者からは問診を受け、聖人からは回復力を高める魔法をかけられた。

 医者とオリヴィアの会話で一週間寝込んでいたこと、毒からは完全に回復し終えたことが分かったが、ダイヤードはグズっていたため状況がまるで分っていなかった。




 目が覚めて一週間が経ち、ダイヤードのようやく気持ちも落ち着いてきた。


「ダイヤード様も少しずつ笑顔が増えてきましたね」


 母の若い専属侍女が今のダイヤードの遊び相手だ。

 ダイヤードを心配したオリヴィアが一時でも離れるのを拒んだため、オリヴィアの居室で生活をすることになった。


「そうね。まだ夜はクズるかもしれないから、当分は母上と一緒に寝ましょうね」


 侍女に絵本を読んでもらい、密かに文字を覚えようと奮闘していたダイヤードを見ながら、オリヴィアは静かに微笑んだ。


(はは)しゃま。僕はもう大丈夫(だいりょうぶ)でしゅよ。ちょれにダンと一緒(いっちょ)(あちょ)びたい」


 普段のダイヤードは、宮廷の離れに乳母とその息子のダンバルトと生活をしていた。

 ブリクラング子爵夫人であるマルガネットは元々オリヴィアと仲が良いこともあり、ダンバルトを身ごもったさいに乳母に選ばれた経緯がある。


「ならこの部屋にマルガネットとダンバルトと呼んで、お茶を楽しみましょう。これならダイヤもダンバルトと遊べるでしょう?」


 オリヴィアの声が心なしか弾んでいるように聞こえる。

 この一週間でダイヤードが聞いた限りでは、正妃タターニアがドレスラン帝国から連れてきた侍女に嫌味を言われ、タターニアからも嫉妬からか皮肉を言われているのを不快に感じているようだ。


「ダードはダード。ダイヤ違うます」


 ダイヤードは自分の半身の別れ際に読んでくれた愛称を気に入っていた。知識から判断するに、【ダイヤモンド】を連想させる愛称が気恥ずかしかったのか、気に食わなかったのだろうと思っている。

 【ダイヤモンド】はこちらの言葉で『デイ・ラット』というので、宝石を連想させる心配はないのだが、ダイヤードにとっては半身である光の玉が言う言葉が優先された。


(わたくし)はダイヤって愛称のほうが可…… 分かったわ。これからはダードと呼びましょう」


 オリヴィアも我が子の見上げてくる潤んだ目には勝てないようだった。ダイヤードの頭を撫でながら「ダードも可愛い愛称ね」と優しく話しかける。


「はい!」


 元気よく返事をすると、再び文字の習得のため絵本の読み聞かせをせがんだ。


ダイ「懐かしいけど、この頃のことはあまり覚えてないんだよな」

レミ「ところで聖人がいたら医者はいらないのではないですの?」

ダイ「いやいや、聖人や聖女って病気を治せるわけじゃないんだ」

レミ「そうなんですの?」

ダイ「間違われやすいけど、あくまでも自己治癒力を高めるだけだ」

レミ「後は結界を張るのでしたわね」

ダイ「だね。ただ、それも張れるだけで、張り続けられるわけじゃないんだ」

レミ「そうなのですね。聖人や聖女も万能じゃないんですね」

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