003 夢の世界(ダイヤード3歳)
楽しんでいただけると幸いです。
「……ウゥン」
「やっと目が覚めたようだな」
ゆっくりと目を開けると、草原に立派な若木、その傍らには弱々しく光る玉のようなものが浮かんでいる。
「俺が誰かは分かるか?」
光る玉が揺れながら話しかける。
「ぼく!」
何故か玉が自分であると疑っていないし、その玉が自分自身であることが分かる。
「ハハッ。生まれてからずっと一緒だからな。俺はお前みたいなもんだ。それで、自分自身が何者かは分かるか?」
「ぼくはダイヤ! 三歳でしゅ……うゅ」
ダイヤードは光る玉の自分と違い、滑らかに喋れない自分に首をかしげる。
「ああ。その通りだ。何でこの場所にいるか分かるか?」
玉は揺れながら点滅しながら話しかける。
「分かりましぇん。……ありぇ? 母しゃまは? ダンは?」
悲しそうにキョロキョロする。
「もうじき、母上にもダンにも会えるさ。それより時間がないからよく聞いてくれ」
玉は少し小さくなってきている。
「覚えてないかもしれないが、お前は毒を仕込まれたご飯を食べて倒れてしまったんだ」
「毒?」
「ああ。誰が仕込んだかは分からんし、犯人は下級侍女で片付けられるだろうがな。トカゲのしっぽ切りってやつだ」
「他のみんにゃは大丈夫?」
ダイヤードの目に涙がにじむ。
「ああ。安心しろ。お前以外は皆無事だぞ。逆に自分自身を心配しろ」
「よかった~」
「ったく。本当に時間がないから簡潔に話をするぞ。
毒で死にかけてるが、毒の全てを俺が引き受ける。だから目が覚めたらもう俺はいないと思って生きていけ」
「え! 死んじゃうの? ウゥゥ~」
ダイヤードの目から大粒の涙が零れ落ちる。
「泣くな! ちゃんと聞け!
今までの状態がおかしかったんだ。だが、まだ俺が消え去るまで時間がある。そこで俺の元居た日本って国の知識をお前に託す。今までも少し共有してたから何となく分かるだろ?」
玉の光が強くなる。
最後の力を振り絞るかのように。
「グスッ。グスッ。…… ヒック。…… うん。ズズッ…… 少し(ちゅこち)ずつ(じゅつ)変なのが入ってきてた…… きてりゅ?」
何度も目を擦りながら、会話をつなげていく。
「だろ。今、俺と会話が成立している時点でかなりの恩恵だと分かるだろ?」
「う、うん。何とにゃくだけど意味は分かりゅ。……グスッ」
涙をこらえようとしても次から溢れてくる。
「現実に戻ってから知識が定着するまでには時間が掛かると思うが、いきなり大人と会話出来ても気味悪がられるから丁度いいだろう」
「しょ、しょの知識を使えるようになるまで、……ヒック。ちっかり勉強ちゅる」
「ああ、よく分かってるな。偉いぞ。でも賢いことを周りにバレないようにしろよ。また狙われるからな」
玉はどんどん小さくなる。
「……(コクコク)……うん」
「まずは自分の身を守ることを考えろよ」
「……(コクコク)……」
もう相槌を打つことも出来ない。
「そして大人になったら城から逃げて、自分の力で生きてもいい」
玉の光がどんどん弱くなる。
「城の中で力を発揮して、王になったっていい」
もうそこに玉があったことすら判別できなくなった。
ダイヤードは悲しくて俯いてしまう。
「お前の好きな道を歩め」
芝生にどんどん黒いシミが広がっていく。
「ダード! 顔を上げろ!」
初めて言われた愛称に思わず顔を上げる。
「笑え! 男同士の別れは笑って見送るもんだ!」
ダイヤードは泣き笑う。
「……じゃあな」
レミ「3歳のダード様、可愛い~」
ダイ「ちょ、恥ずかしいんだけど」
レミ「『しゃししゅしぇしょ』……ですわよ~」
ダイ「レミさん聞いてる?」
レミ「それに『うゅ』って!(バシバシ)」
ダイ「い、痛い! 扇でたたくのやめて! お願いだから」
レミ「(バシバシ)」
ダイ「ここ泣けるシーンだから! 大事なシーンだから!」




