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038 真相①(ダイヤード5歳)

楽しんでいただけると幸いです。

 ダイヤードは森で保護されてから二日間ほど馬車に揺られ、ようやく王都に帰って来ていた。

 王城の正門を抜け、中庭を通り、オリヴィアの住む離宮に到着した時には太陽が頭上を照らしていた。


「母上! ただいま戻りっ…… ワフッ」


 兵が扉を開けたタイミグで声を発したダイヤードであったが、やわらかい何かに声が遮られた。


「よく戻りました。無事で何よりです」


 オリヴィアはダイヤードの存在を逃がさないかのように強く抱きしめた。


「フゥー。母上。く、苦しいです。も、もう少し優しくしてください」


 どうにか胸から顔上げたダイヤードは、弱々しくオリヴィアに抗議した。心配をかけたことは十分に理解をしているため、あまり強く言えずオリヴィアの好きにさせてしまおうと考えた。


「ごめんなさいね。でも、本当に無事に帰れてよかったわ。私にしっかりと顔を見せてちょうだい」


 ゆっくりとダイヤードを拘束していた腕を解くと、優しく頬を撫でた。


「はい。色々と大変でしたが、何とか帰って来られました」


 ダイヤードはこれ以上オリヴィアに心配を掛けまいと、満面の笑みで答えた。


「ええ。報告では聞いています。かなり無茶をしたことも」


 無事に森から連れ出されたダイヤードの話を聞いた部隊長は、森での経緯を手紙にてしたため、副官にいち早くオリヴィアへと届けるように向かわせていた。


「で、でも。あれは仕方がなかったのです」


 怒られると思ったダイヤードの声は次第に小さくなる。


「私は怒っていませんよ。ダードは必死に生き抜いたことは分かっていますから」


 オリヴィアはそう言うと、ダイヤードの髪を撫でた。


「はい。はい。…… 頑張り……ました。グズッ」


 オリヴィアに撫でられたことで、緊張の糸が切れたダイヤードの目から涙がこぼれた。


「いくら知識があって、優秀だとしてもダードはまだ五歳なのです。大人になるまでは私がしっかりと守りますので、今はゆっくりと休みなさい」


「はい。…… はい」


 ひとしきり泣いたダイヤードは、いつの間にかオリヴィアの胸の中で眠っていた。その寝顔は森の中と違い、安心しきっていた。




 疲れていたダイヤードの目が覚めたのは翌日の朝だった。オリヴィアはダイヤードと一緒に寝ていたようで、起きた時目の前にオリヴィアの顔があることに少し驚いてしまった。


「詳しい話も聞きたいけど、もう少しゆっくりしようかな」


 ダイヤードは二度寝をするべく、再度目を閉じようとした。


「うーん」


 揺れるダイヤードの髪がくすぐったかったのか、オリヴィアはゆっくりと目を開けた。


「おはようございます。母上」


「…… うん? あら。早めに起きたのですね」


 オリヴィアはゆっくりとダイヤードの髪を撫でた。


「はい。流石に寝過ぎました。少し早いですが、着替えて朝食にしますか?」


 ダイヤードは二度寝を諦め、着替えてからオリヴィアと朝食を食べた後、ゆっくりとお茶を飲んでいた。


「母上。今日のお仕事は大丈夫ですか?」


「ええ。ダードが帰ってきたのですから、今日は一日中休みにしました。昼からはダンバルトも来ますから、よくお礼を言っておきなさいね」


「ダンにお礼ですか?」


 ダイヤードは首を傾げた。


「実は、ダンバルトはダードの付属式をこっそり覗いていたのです」


「え? そうなんですか。全然気づかなかったなー」


「そうです。いち早くダードの緊急事態を知らせに来てくれたおかげで、ダードの誘拐を隠蔽される前に気付くことが出来たのですよ」


 オリヴィアはダンバルトが泣いていたことは、本人のために内緒にした。


「あと、教会の大司教にもお礼を言わないといけませんよ」


 オリヴィアは続けて言った。


「大司教様にもですか?」


「ええ。彼がダードを治療しようと粘ってくれたおかげで魔法局もスムーズに動けず、結局後手に回りました。それにしても、いつの間に大司教と仲良くなったのですか?」


「いえいえ。ただ、聖術具を見せてもらう約束をしただけですよ」


 ダイヤードは勢い良く首を振った。


「教会関係者でもないのに、聖術具を見させてもらえるというのは非常に稀なことなのですよ」


「そうなんですか? 確か…… 量もあるから貴重でもないって言ってましたが……」


 ダイヤードは付属式での会話を思い出していた。


「量はあったとしても現在では再現が不可能な代物ですからね。本当に気に入られたようですね」


「そうなのですかね。そんなに気に入られるような会話をした覚えはないんですけど」


「それでもダードが築いた人の縁です。大事にしなさい」


「はい。必ずお礼を言いに行きます。それで、僕が倒れた原因は分かったのでしょうか?」


 ダイヤードは、まず聞きたかったことを尋ねた。


「どうやら、魔法局が用意した魔石が『子持ち』だったようですね」


「『子持ち』とは何ですか?」


「魔物のお腹に子がいた場合、初期の段階では魔石が融合されていることがあるのです」


「融合ですか?」


「ええ。親の魔石の中に子の魔石が隠されていることです。その魔石を付属で使うと、人間は二つの属性を受け入れられず死に至ってしまうのです」


「そんな危険な魔石があるのですか?」


「なので通常は、しっかり鑑定をして使用するのですが…… 今回は作為的に用意したようですね」


「作為的…… ですか。そんなに簡単に用意できるものなのでしょうか?」


「当初用意された魔石は鑑定で問題ないとの判断でしたので、どこかのタイミングですり替えられたのか、鑑定結果そのものを細工したのかは分かりません。困難さからすれば、後者だと思いますよ」


「そっか。雷属性の魔石の上、子持ちとなると簡単に手に入るものじゃないですね。それで鑑定人は分かっているんだから、そこから辿っていけば……」


「軍に調べさせているので、今は報告待ちですね」


 オリヴィアはきっぱりと言った。

 ダイヤードは、いつもは遮ることなく最後まで聞いてくれるオリヴィアにしては珍しいと思った。


レミ「やはりダード様も五歳児なのよね」

ダイ「やはりって何だよ」

レミ「普段から気を張り過ぎなんでのよ。大人になってから年相応になりましたが、子供のころからこれとは……」

ダイ「いやいやいや。やっぱり、知識があって理解する能力があると背伸びしたくなっちゃうって」

レミ「でも流石はオリヴィア様ですね。一瞬で子供のダード様に戻すんですもの」

ダイ「結構な割合で後書きで辱められてない?」

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