013 誕生日会(ダイヤード5歳)
楽しんでいただけると幸いです。
予定通りダイヤードの五歳の誕生日は身内のみで開催された。
(やっぱり物によっては、地球の現代に近いんだよなー。本当にちぐはぐでよく分かんないな)
子供用として用意してあった青の礼服に着替えさせられながら、ダイヤードはこの世界の検証を行っていた。
流石にプラスチックや化学繊維はなく、ボタンは金や銀を装飾したものが使われていた。シャツはシルク、ジャケットはリネンが使われていた。
ダイヤードが食堂に向かうと、オリヴィアや乳母のマルガネットとその息子のダンバルト、スターザー侯爵夫妻にオリヴィアの兄にあたる侯爵嫡男が席についていた。
ダイヤードが上座に赴き、銀のタンブラーを手に取ると、集まった皆が席を立った。
「お集りの皆様、私の誕生日会にお集まりいただきありがとうございます。まだ幼く私自身で企画したものではありませんが、楽しんでいただけると嬉しいです」
そう言うと、右手を背中に隠し目礼を行った。
右手を背中に回すのは、武器を使用しないことを示すこの世界における礼儀作法だ。立礼を行うさいにも右手を隠すのが通例だった。
「立派な挨拶でしたね。ダード」
「ダード様はまだ五歳なのに礼儀作法もきちんと習得しているのですね」
侍女に手伝ってもらって子供用の椅子に座ったところ、オリヴィアと侯爵夫人に褒められた。
「ありがとうございます。最近は母上に色々と教えてもらっているのです」
スターザー侯爵家とはあまり交流を取ることがなかったため、緊張をしながらダイヤードは答えた。
「フフッ。それだけじゃなく、ダンバルトも勉強を教えているのよね?」
オリヴィアは家族の会話に入れないであろうダンバルトに会話を振る。
「はい! ダード様は僕が難しい事でも直ぐに理解されるので、本当に凄いです」
ダンバルトはダイヤードの自慢をする。
「いえいえ。ダンもすっごく勉強していますし、しかも剣術や魔法まで習っていますから、ダンのほうが凄いですよ」
「そうですね。ダンバルトに教わった内容を私に教わることも多いですからね」
あまり目立ちたくないダイヤードの気持ちを汲みオリヴィアは即座にフォローをした。
「なるほど…… な。私の耳には非常に優秀だと聞こえてきたが、心配のしすぎだったかな?」
スターザー侯爵はダイヤードを見ながら言った。
ダイヤードは内心を見抜かれているようで居心地が悪くなった。
まだ五十歳の侯爵は目も鋭く、気の抜けない男だと思い知らされた
「それでもダード様は凄いんです! 色んなこと知ってるんです!」
ダンバルトの一言に張り詰めた空気が少し和む。
「ハッハハー。父上でも幼子には勝てませんね」
侯爵嫡男でダンバルトの言葉に乗ることで、場の緊張感が完全に薄らいだ。
「うむ。儂としてもヴィアとダード様を心配してだな」
「はいはい。分かっていますわよ。お父様は顔が怖いだけで子や孫を想っているのですよね?」
オリヴィアは場の空気を崩すと思い毒のことを言わず、公爵を揶揄うことで食卓が笑いと笑顔に包まれた。
オリヴィアの目論見は成功し、これを機に和やかな雰囲気で食事が進んだ。
食事を楽しんだ後は、娯楽室にて男性はブランデーを楽しみ、女性はお茶とお菓子を楽しんでいた。ダイヤードも五歳になったということもあり、ダンバルトと一緒に参加を許された。
「そういえば、お父様。近々来られるリューデック王国の方々の意図について何か分かりました?」
オリヴィアはダイヤードの今一番の聞きたいことを質問した。
「リューデック王国側に探りを入れてみたのだが、最初は王弟と王女だけだったそうだ。そこへ王子が無理を言って同行することになったらしいぞ」
「そして交流会ですか……」
「ちなみに、王子は妹をことのほか可愛がっているそうだぞ」
「となると目的は推測できますね。…… ただ、リューデック王国がそれを行う理由が分かりません」
「そうだな。近年の不作で我が国はリューデック王国に食料を輸入する割合が増えているからな。向こうが願い出てくることが思いつかんな」
ダイヤードは侯爵夫人にお菓子を取ってもらいながら、オリヴィアと侯爵の話を聞いていた。
「そうですか。他の領も大変と聞きますが、侯爵領の小麦の備蓄は十分ですか?」
「今のところは問題ない。小麦商とも話をして価格も抑えるよう話をしているので、問題なかろう」
そう言うと、侯爵は嫡男に続きを促した。
「そうですね。我が領周辺で運良くカールデット公爵領は豊作だったため、安く小麦を仕入れることも出来ましたし、来年までは余裕がありますよ」
「それならば、一安心ですね。農業の不作・豊作は天任せだと聞きますし、来年は豊作であることを願いましょう」
そう言うと、オリヴィアはダイヤードが何か言いたげに見つめていることに気付いた。
「…… こ、こちらでも何か方策がないか調べてみますので、追って連絡いたしますわ」
「そうしてくれるとありがたい。なにやら、ローマン道路という面白いことも企んでいるようだし期待しておこう」
ダイヤードはスターザー侯爵の情報収集能力に驚きを隠せなかった。
ダイ「痛たたた」
レミ「どうかされましたか? ダード様」
ダイ「え?」
レミ「それはそうと聞きたいことがありますの」
ダイ「え?…… うん。何かな?」
レミ「何で侯爵家の名前が出てこないのですか?」
ダイ「それは……」
レミ「それは?」
ダイ「……モブだからだ!」
レミ「……」
ダイ「……」
レミ「名前を考えるのが面倒だったと素直に言うべきですわ」
ダイ「ごめんなさい」




