012 今後の予定(ダイヤード4歳)
楽しんでいただけると幸いです。
ダイヤードの五歳の誕生日まで一か月を切った時、オリヴィアにお茶に誘われた。
「ダードも五歳になりますから、今後の予定について話をしますね」
言ったオリヴィアの表情が硬いことにダイヤードは気付いた。
「はい」
「一か月後のダードの誕生日ですが、いつも通り身内でのお祝いとなります。ただ、貴族と周辺国への御披露目が三か月後のユークリッド王子と合同となるようです」
オリヴィアは、夫の国王であるアースウィッドが御披露目会をユークリッドに合わせたことに腹を立てていた。正妃の子供であるユークリッドに合わせるのはあながち間違いではないのだが、ダイヤードが不遇に晒され続けている状況をオリヴィアは許せないでいた。
「はい」
オリヴィアの気持ちをある程度理解できているダイヤードも感情を交えず返事をした。
「御披露目会から一か月後に魔法の付属式があります。そこでもユークリッド王子と行うそうです」
「分かりました」
しばらく時間を置いた後、オリヴィアは口を開いた。
「私の力が足りず、ごめんなさい」
オリヴィアが謝ったことに、ダイヤードは驚いた。この二か月オリヴィアの様子がおかしいこと、アースウィッドと頻繁に会っていたことを知っていたからだ。
オリヴィアとの勉強時間が減ったこと、オリヴィアがいない時に彼女の行方を侍女がボカしたことから推察したのだった。
「いいえ。母上が謝られることではありません。母上が僕のために動いておられたことは知っていますから」
そう言うと、オリヴィアはギュッとダイヤードを抱きしめたまま何も話さなかった。
「それにユークリッドに会う機会です。報告ではなかなか優秀なようですし、良い関係を築いてきますよ」
ダイヤードもオリヴィアを抱きしめながら話をした。
「…… 分かりました。ダードがそう言うなら、もう何も言いません」
ダイヤードの頭を優しく撫でたオリヴィアは、ゆっくりと抱きしめていた腕を解いた。
「ダードの誕生日の一週間後にリューデック王国から賓客が参ります。交流会という名目であちらのカートニー王子とナディア王女との顔合わせがあります」
「え!? リューデック王国の王子と王女ですか?」
「はい。何故か幼い子供を連れてくるそうですよ」
オリヴィアは訝しげに話をする。
「我が国とリューデック王国に特別な関係はありませんでしたよね?」
ダイヤードはリューデック王国の歴史や地理を思い浮かべる。
リューデック王国はマクダーラン王国の東に位置する縦に長い国で海に面していることもあり、海産物が有名な国だ。
「そうですね。リューデック王国は船での貿易が盛んな国で、我が国の輸入が多いのが問題点ですが、特別仲の良い国ではありませんよ。ただ、メインは陛下と向こうの王弟殿下との会談ですね。私には聞かされていませんが、何度か外交を通じて話があったようですね」
オリヴィアは話しながら手を顎に当てて何かを考えている。どうもしっくりとしないみたいだ。
「それだけで、八歳の王子と五歳の王女が外国に来ますか?」
「そうなのですよね。今は考えても分からないですが、リューデック王国も何らかの意図があるのでしょう」
オリヴィアは顔を上げた。
「僕がリューデック王国の言葉を片言でも話せるのは秘密にしたほうが良いでしょうか?」
「挨拶程度にとどめておきなさい。王弟殿下と王子のほうは我が国の言葉を話すことが出来るようなので、問題ないでしょう」
「分かりました。注意しておきます」
「ええ。私とタターニア妃も参加しますので、安心してください」
レミ「……」
ダイ「どうしたの? 今日はやけに静かだね」
レミ「私、気付いてしまいましたの」
ダイ「何に?」
レミ「私の出番がない事ですわ!」
ダイ「……」
レミ「何で顔を逸らしますの?」
ダイ「……」
レミ「私、ダード様の婚約者ですわよね? ダード様は主人公ですわよね?」
ダイ「そ、そうだね」
レミ「ということは、私ヒロインですわよね?」
ダイ「……」
レミ「何か言ってくださらないと、折檻ですわよ」
ダイ「これは恋愛小説じゃないから…… ドンマイ」




