011 コークス(ダイヤード4歳)
楽しんでいただけると幸いです。
「よく頑張りましたね」
オリヴィアはニッコリと笑ってダイヤードを褒めた。
「はい。ありがとうございます」
普段ハッキリとした表情を見せることのないオリヴィアから褒められたことがダイヤードは嬉しかった。
「では、後は私の出番ですね。土木局の大臣に簡単に打診しておきました。好奇心旺盛な方ですので現物はまだかと急かされていますよ。フフッ」
オリヴィアはダイヤードが褒められているようで上機嫌だった。
「この先が楽しみですね。今回は手作業で行いましたが、魔法で補える箇所もあるかと思います。それはそうと商会のほうはどうですか?」
「スターザー侯爵家のお抱え商家で人材を紹介してもらいましたから安心なさい」
「分かりました。では後は母上にお任せしますね。ただ、今後の勉強のためにも進捗を教えてください」
ダイヤードはこれを機に大臣たちとの手続きや対応の仕方を学ぼうと考えた。
「ええ。上手くいけば半年後には予算がおりて工事計画が立てられることになるでしょう。それで名称は【コンクリート】道路でいいですか?」
「いえ、ローマン道路でお願いします」
「ローマン…… ですか? コーキの知識の言葉なのですか?」
「はい。光輝の世界で古代【コンクリート】の名前です」
「ええ。この世界で初めての【コンクリート】に丁度いい名前ですね」
オリヴィアと細かい今後の予定を決めていく。
「そういえば、母上のパリジット子爵領は石炭の産出地でしたよね?」
「ええ。よく勉強していますね。領都は炭鉱の街で有名ですよ」
「でしたら、【コークス】が作れますよ」
「詳しく聞きましょう」
ローマン道路の件でダイヤードの持つ知識は、こちらでも通用することを確信したオリヴィアは続きを促した。
「まず洗った石炭を赤ん坊の拳くらいの大きさに揃えます」
「小型の魔石くらいの大きさですね」
ダイヤードは魔石を見たことなく、その質問には答えられなかった。
「…… それで、木炭を作る要領で蒸し焼きにすれば一応は完成です。【コークス】で作られた鉄は【鋼】と呼ばれ、鉄から不純物を取り除いた金属となります。そのため、鉄より強度のある金属が出来ますよ」
ダイヤードは不安げな表情で話す。光輝の知識でも詳しいことは分からなかった。
「一応ですか。ローマン道路より多くの研究が必要ということですね」
オリヴィアはダイヤードの表情からほぼ正しく理解した。
「はい。蒸し焼きにする温度や状況が不明です。また、【コークス】ができるさいに体に害のある煙や液体が出てくるので、注意が必要です」
「体に害ですか。ということは、街からは離れた場所で実験する必要がありますね」
オリヴィアは即座に周辺へ及ぼす害について考えが至る。
「作業員にもマスクの徹底と肌をさらさない服装に勤めてください。後、安全な炉の設計も早急に進めていく必要があると思います」
光輝の知識からは【公害病】という単語が警告を発してくる。
「実験を行い、見通しが立ったとしても稼働は設計図が完成してからにしましょう」
「そうですね。僕としては魔術具に可能性があると思ってます」
「魔術具…… ですか? あの魔術具ですか?」
オリヴィアは信じられないような目で見ている。
この世界における魔術具師は魔法を使いこなせない者が付く職業であり、魔術具も装備や魔法の威力を若干強化してくれる道具に過ぎない。
「はい。光輝の知識は創造物としての魔法や魔術具が存在してます。この世界の人々が考え付かない使い方が知識として蓄えられているのです」
「あの魔術具が、ですか……」
自信満々のダイヤードに対し、オリヴィアは光輝の知識を妄信しているのではないか不安を覚える。
「やってみないと分かりません。とにかく優秀な魔術具師を探してください」
ダイヤードは立ち上がって、言い切った。
レミ「納得いきませんわ!」
ダイ「え! また?」
レミ「何でコンクリート道路の施工を他人任せにするんですの?」
ダイ「何でって言われても……」
レミ「監督するのが普通じゃありませんの?」
ダイ「普通って言われても……」
レミ「それにコークスなんてアイデア出しただけじゃないですの!」
ダイ「だって、危ないじゃん……」
レミ「私、納得いきませんわ!」
ダイ「普通に考えてさ。王子、しかも子供に何が出来るんだよ?」
レミ「Σ(・□・;)」




