009 コンクリート(ダイヤード4歳)
楽しんでいただけると幸いです。
「他には何かありますか?」
「最後に秘密で使えるお金が欲しいので、僕が自由に動かせる商会を作ってください。そしてその商会を動かす初期投資がありませんので、お金を貸してください」
ダイヤードは無茶を言っている自覚はあった。
「お金儲けがしたいと?」
一瞬でオリヴィアの目が厳しくなる。
この世界の貴族は商人のような金儲けをよしとしていない。王侯貴族は人々を魔物から守るために立ち上がった集団が起源となっているからだ。税金を民から徴収しているため、それ以上お金を稼ぐのはみっともない行為として認識されている。
「いえ。この世界でまだ目の向けられていない分野や技術に投資するためです。横やりが入るのは好ましくないので、実用化されるまでは隠しておきたいのです」
ダイヤードは慎重に答えた。
「詳しく聞かせてちょうだい」
「はい。光輝のいた日本という国は、魔法や魔術具がない代わりに【科学技術】が発展しています。特に【化学】や【物理学】といった、この世界で注目されていない学問を成長させ、【科学技術】を発展させていく必要があります」
ダイヤードは緊張のあまり早口で答えた。
「少し待ってちょうだい。【カガクギジュツ】とは何なの? 【カガク】と【カガクギジュツ】は違うものなの?」
オリヴィアも混乱の余り、口調が乱れる。
「えーっと。【化学】は物質の本質を追及する学問です。こちらでは錬金学がそれに相当します。【物理学】とは自然現象を追及する学問です。こちらにはない学問ですので、名前を付けるなら魔法学といったところでしょうか?」
「物質の本質に自然現象の追求…… ね」
オリヴィアは意味を理解するのを放棄した。
「【科学技術】というのは、錬金学と魔法学を統合して実証された技術のことです。この世界の言葉にするなら、魔技術となるかと思います」
「その魔技術の発展が重要ということですね」
オリヴィアの口調が戻ったことにダイヤードはホッとした。
「この世界は光輝の世界の歴史に比べ、どこかちぐはぐなのです。技術に偏りがあり過ぎます。僕は魔法の影響かと推察しているのですが、そういった技術を体系化し研究することで魔技術は発展するでしょう。その魔技術を基に魔術具を作っていけば、民だけでなく貴族の生活にも欠かせないものが出来るはずです。そしてそれは力になります」
「完全に理解したと言えませんが、ダードには道が見えているのでしょう。投資するための資金をどうやって稼ぐつもりですか?」
オリヴィアの言うことはもっともだ。商会を作ったからといってお金が湧いてくるわけではない。
「まずは土木事業です」
「なるほど、土木局の大臣を私の派閥に引き込み、作った商会に工事を受注させる訳ですね」
ダイヤードの一言だけで、オリヴィアは回答した。
「それだけではありません。一例ですが【コンクリート】と呼ばれる材料を使うことで、今の街道が快適になるように整備をすることが出来ます。荷馬車もスムーズに進むため商業の活性化につながります」
「なるほど。それに貧民街に対して雇用も生まれますね」
「はい。最後に魔技術の発展にも寄与できるかと思います」
最後まで言い切ったダイヤードは、オリヴィアの判断を待つことにした。
「……いいでしょう。私が初期投資を出資しましょう。信用のある商人に連絡して職人組合から人を引き抜く手はずも整えましょう」
「はい! ありがとうございます」
「安心するのはまだ早いですよ。まずは、その【コンクリート】の作成と庭園の隅に見本となる道を敷いてちょうだい。話はそれからです。必要な材料は明日までに言ってくれたら用意します」
「はい!」
ダイヤードは元気よく返事をした。
「これで最後でしたね。ではダード」
「なんでしょうか。母上」
「仕方ないとはいえ、茶会の途中からの口調は可愛くありません。他の者に聞かれても差し支えるでしょう。元に戻しましょうね」
意味が分からず首をひねっていたダイヤードだが、四歳児が使わないであろう単語と大人びた言い回しだったことに気付き慌てて周囲を見渡した。
ダイ「前回の続き!」
レミ「コンクリートや魔技術については話さなくていいですの?」
ダイ「また話す機会もあるでしょう」
レミ「案外その場しのぎなんですのね」
ダイ「ノリで喋ってるからね」
レミ「ノリでしたのね……」
ダイ「さて、ギルドの話だったと思うけど、実は…… この世界の冒険者ギルドは国営です!」
レミ「そんな~。自由を愛する冒険者ですわよ。未知を既知に変える冒険者ですわよ」
ダイ「う、うん。そうだね」
レミ「なんでそんな冒険者が自由からほど遠い、国から縛られてますの?」
ダイ「だって、国に管理されてない軍事力なんて脅威でしょう。きちんと国に帰属させないと」
レミ「正論ですわ!」




