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黄泉國之戦乙女  作者: 天草次郎
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プロローグ

地獄、悪行を為した者が行き様々な罰を受けるといわれるとされている世界。天国と対になる世界。もちろん死者が行く世界なので生者は想像でしか地獄を見ることができない。しかし、今男の前に広がっているのはまさに地獄だった。

 燃え盛る街、、死体、火薬のにおい、飛び交う銃弾、陸を闊歩し空を舞う兵器。そう、戦争である。男は妻と子供を敵国に殺され、復讐のために兵士になり、今この戦争の最前線にいた。しかし、志願したころの威勢のよさは戦闘のたびに失われていき、今ではどうやって生き延びようかだけ考えていた。逃げるわけにもいかないが戦って必ず生きて帰れるかもわからない。もうどうせなら家族の待つあの世に行ってしまってもいいのではないかとさえ思ってしまっていた。でも自殺をする度胸もない。なので今日も男は戦場を走る。

 運命の日は案外早くやってきた。その日は男の所属する部隊が敵の食糧調達路を強襲し強奪する作戦で、予定通りにやってきた車を予定通りに襲い、予定通りに食料を奪っていった。そしてその帰りに予定外のことが、それは空から降ってきた。男ははじめその落ちてきたものが墜落した戦闘機だと思った。しかしそれは人の形を成しており、胸のあたりには敵国グランデルの紋章があった。

「ハ、ハボックだ・・・」

一人がおびえた声で言った。

撃てええええええ! 声とともにあまたの銃声と金属音が辺りに鳴り響く。男も勢いのままに乱射する。ハボックと呼ばれた機体は眼前の兵士たちの焦りとは反対にゆっくりと立ち上がり、そして辺りをより一層大きな銃声が包みこんだかと思うと、死神は飛び去って行った。男は朦朧とした意識の中辺りを見渡した。先ほどまで仲間だった者が何も言わない物に代わっていた。しかし男を包んでいたのは安らぎであった。ああ、ようやく家族に会える、ありがとう。飛んで行った天使の幻影を見続けながら目を閉じることなく男は旅立ったのであった。

 「新型の調子はどうだい?天才パイロットのライデン君」

コックピットの中にえらく明るい声が響く。

 「前の型のほうが動かしやすい。」

ライデン、そう呼ばれた男が落ち着いた声で返す。

 「天才なのは認めちゃうのね。じゃなくて!前のほうがいいってどーゆーことだ!このハボック試作3型は天才である僕が1から設計してだね。そもそもこいつは(以下省略。尚この一方的な会話はこの後5分に及ぶ)・・・であるから前の2型よりもいいの!わかった?」

 「はいはいよく分かりました。で、先の戦闘のデータは役に立ったのか?」

 「うむ、非常に有意義なデータだったよお。今後の研究に役立てさせてもらうよ。」

 「敵の命どころか味方の食糧補給車すら犠牲にしたんだ。あたりまえだろ」

ライデンの声は少し怒りの感情を含んでいた。もちろん。と軽い言葉が返ってきて通信は終わった。敵の兵士から放たれる銃声、遠目に見てもわかるそいつらの恐怖の表情がライデンの脳裏にこびりついていた。もう殺しなれたはずだと自分に言い聞かせ、操縦桿を強く握りしめるのであった。

 2大超大国、グランデルとキーラによる世界の統治は1600年ごろから始まり、22世紀は折り返し、2150年までこの2国は大きな衝突なく世界を収めていた。しかし2151年、突如グランデルはキーラに対し宣戦布告。2大国戦争が始まり、戦火は瞬く間に広がっていった。数多の戦場が生まれ、数多の兵器が投入され、数多の命がなくなっていった。戦いが始まり1年が経過したころ、グランデルは対地空人型兵器ハボックを戦場に送り出し、火の海を広げていったのだった。これは2大国戦争の結末を決める男と少女の物語である。


 


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