一年生 1話
プロローグ
「太一!。なんで私のイチゴ食べるの???」
雪乃のショートケーキからイチゴだけが無くなっている。
「雪乃。いいかい?ここは戦場なのだよ。分かってないな
ぁ」
「太一・・・。」
雪乃はすーっと息を吸った。
「バカヤロー!。どこが、どこが!。この埼玉県に戦場なんてあるのよ!」
太一は言い返した。
「だって、入間基地とかあるじゃん。」
「離れてるよ!。もう車で1時間くらい離れてるよ!。」
「わーかったわかった。俺のケーキからイチゴ取っていいから静かにな。」
雪乃はグイっと、太一のケーキの「半分」をもぎ取った。
もちろん、イチゴも一緒に取り去った。
そこで、太一は気づいた。
「雪乃?。なんか目が赤いよ?。ちょっと見せてみ?」
太一は近くに寄って雪乃の眼球を見た。
(太一・・・、顔近いなぁ。)
「雪乃?これ、なんかの病気かもしれないから眼科で見てもらった方がいいよ?。これ充血してるよ?。それともイチゴ取られたの泣くほど嫌だった?」
なんだろう?
雪乃は鏡で自分の目をみる。
確かに赤い。しかも痒い。
これは土曜に眼科だなぁ。
ここは某・埼玉県の某・高等学校の生徒たちが集う頭のいい学校である。
これはヒロイン「篠崎雪乃」の物語。
とはいえ、なぜ埼玉県なのか・・・。特に理由もないし、海もない。
そして嫌なほど空気が悪い。
とはいえ、東京は近く、情報も多い。金持ちもいるし、高い車に乗った社長達も沢山いる。
そんな、「埼玉ストーリー」。
始まります。
思ったより、学校への距離は長い。
とはいえ、足がくたくたになる程でもない。
思えば、すでに6月も終わろうとしている。
この学校の入学して、雪乃も太一も、大分学校に慣れた。
雪乃はバンドミントン部。太一はマンドリン・ギター部に入った。
だが、中学時代から太一は駅前にある音楽スクールに通って、大分エレキギターが上手くなった。
「シャー」っと、あのやたら歪むエフェクターでギターソロを弾くと、すごくカッコがつくものである。
もうすでに3回はステージに立った。これも、高等学校を受験するときに、非常に利点があったのも確かである。
受験の緊張も、ステージに上がったときの緊張感と比べたら、大したことはないのである。
入試の一番は太一だった。日頃どこで勉強をしてるのか分からないほど頭が良い。
雪乃も釣られて勉強して、同じ高等学校にはいることができた。
太一は1番だが雪乃は10番手と言ったところか。
雪乃は眼科にきた。
何か病気かと思うと気が滅入る。
「篠崎雪乃さ~ん。先生の前の椅子でお待ちくださ~い。」
しかし眼科らしい眼科。
ここの眼科医の先生の腕はいいと昔から評判である。
ただ、待ち時間が長いというのも逆に評判だったりする。
診断の結果、
「うん。花粉症だね。パタノー〇出すから、これを一日〇回付けて。でも、上限無いから痒かったら何回付けてもいいよ。」
「はい・・・。」
この先生は怖い。
サッカーボールを目に当てたときに、昔来たけど、落ち着きがなかった私を叱ったりしたっけ・・・。
「あの・・・。」
「なに?」
「こっ、っ、コンタクトって。こん・・・。コンタクトレンズってすぐ作れますか?
こ、コンタクト。ポスター見て・・・。ワンデーの・・・。メガネより外見とか見え方というか、イメージ変わるかなって。」
「作れるけど?メガネから替えるの?」
「ぽ、ポスター見てたら、なんだか、いいかなって。」
「うん。じゃぁ。視力検査からだね。レンズはワンデーでいい?」
「はい。ソフトのワンデーで。」
「じゃぁ、視力検査」
運良く、合う度数のレンズがあった。
装着の練習もした。
御母さんからもらった医者代で足りるよね?
会計はギリギリだった。
次の日、太一から怒られるとは思っていなかった。
「雪乃!!!!!」
声が聞こえた。
次の瞬間、脳天に痛みが走った。
太一のチョップだ。
「なに色気づいてんだよ!」
「えー、コンタクトダメ?コンタクトダメ?」
雪乃は思った。
(えー、えー、えーーーーーーっ)
「雪乃!お前はメガネが似合う女子だ!コンタクトなんかにするんじゃない!」
「えー、コンタクトダメ?コンタクトダメ?」
「昨日、おばさんが言っていたぞ。雪乃が色気づいたって。もう、俺は夜も眠れず・・・。ってのは嘘だが、なんでコンタクトなんかにした?」
「だってさ~、試してみたかったんだよね。コンタクトレンズのポスター綺麗だったし。ちょっと日に焼けてたけど。」
雪乃は悪びれる様子もなく、言った。
太一は不機嫌そうに、一言だけ、
「勝手にしろ。」
と言って、去っていった。
だが、このコンタクトレンズ事件は、ちょっとした波紋を生むのだった。
「雪乃。」
友達が話しかけてきた。
「雪乃さ、メガネ取ったよね。いいんじゃない?かなり可愛く見えるよ。男子の評判もいいみたいだし。」
「そうなの?よくわからないけど。」
「ちょっと明るく見えるよ。まえは、もさ~とした感じだったし。」
「そうなのかな」
「でもさ。うちら、この学校にいるの、勉強のためじゃん?。進学校だし、恋愛事は邪魔かもしれないよ。」
「それはそうなんだけど。ずっと子供の頃からメガネだったから、取ったらどうなるのか気になっていたんだ。」
「そうなんだ。ただ、男子が見せるあの視線がねぇ~。若干気持ち悪くない?」
「それは分からないけれども・・・。」
「いや絶対そうだって。外から見てれば分かるって。」
友達は小さな声でつぶやいた。
「太一君、結構ヤキモキしてると思うよ。」
「え、なに?」
「いやぁ、なんでもない。」
お昼休みになった。
「し、篠崎さん。ちょっといいかな?」
男子が話しかけてきた。
「御弁当一緒に食べない?」
それを聞きつけた他の男子が、
「俺も、俺も。」と。
男子が4、5人くらい集まってきた。
男子がくだらない話をしていった。
「土日は、いつも何してるの?」
特に、嘘をつく必要もないので言ってしまったが、
「ん~、太一と私の家で勉強してるかなあ。」
男子がテンプレな言葉を放った。
「あれ、太一と付き合ってるの?」
雪乃は驚いた。
「ええ~!。それはない、それはないって。」
「そうなんだ~良かった~。結構学校ですごく仲良さそうにしてるから、てっきり付き合っているのだと思ったよ。」
「ん~、太一は腐れ縁。太一がモテるのは知ってるけどね。」
「へ~。太一ってモテたっけ?」
後ろから声が聞こえてきた。
「ん~?なんだって?。誰がモテるって?」
後ろには太一が立っていた。
「雪乃。余計な事言わない。」
「ん~、ていうか、モテる話、何回も言ったじゃん。B組のカナちゃんだったかな。気になってるって聞いたし。」
ちなみに、太一と雪乃はA組だ。
「雪乃、俺はなぁ・・・。まぁ、いいか・・・。」
太一はその場から去っていった。
そのあと、雪乃は他の男子と話をしていった。
次の日、噂には尾ひれが付き、学校中に広まっていった。
それは、
「学校イチ可愛い女の子は『雪乃』だと。」




