No.38 [ルシアル、剣術の腕を磨く]
契約書にサインをした翌日。
[ルシアル]と、[ヤンバ]の天界人と魔術師の能力が無効化された。
一般人とは変わりが無くなったらしい。
追放、とは違うみたいだが………しずくにはそこら辺の話は分からない。
けれど、これで少しはのびのび暮らせるのかな、二人は。
▪▪▪
数日後、しずくは[ルシアル]に家に呼ばれた。
家の玄関のベルを鳴らすと、[ルシアル]が対応した。
「こんにちは、[ルシアル]さん。」
『お待ちしていましたわ、しずくさん。』
二人は中へ入り、リビングの机に座る。
「あの、今日はどうかしましたか?」
『…………その、わたくしからこういう事を言うのはアレですけど、剣術でしたっけ。それを身に付けたいと思いまして。』
「………へっ!?剣術を!?」
しずくは驚きを隠せない。
まさか、[ルシアル]からそんな発言を聞くとは思っていなかったからだ。
「もしかして、私に弟子入りとは言いません……よねぇ?」
それを聞いた[ルシアル]は頷く。
『ええ、そうでなければ呼んでいませんわ?』
「え……えぇぇ!私で良いんですか!?そこはアールガイさんに頼むべき事案では!」
『落ち着きなさい、しずくさん!』
そう言われ、しずくは用意されたお茶を飲む。
「………ふぅ。」
それを見た[ルシアル]は、笑う。
『しずくさん、驚くのオーバーですわよね………本当に。』
しずくは顔が赤くなるのがわかった。
『ごめんなさいね。………それはそうとして、教えてくれませんか?剣術を。』
「は、はい!喜んで!」
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その日から、練習を重ねた。
構え方、剣の振り方、動き方………。
木刀で、何度か相手もした。
一週間の練習を費やして、とうとう実際の剣を扱う事となった。
『き、緊張しますわ。』
「流石に当たるのはキケンなので、寸止めの所で止めましょう。」
[ルシアル]は頷く。
「………いざ、開始!」
二人は剣を振った………のだが、剣が当たったと思ったらしずくの剣の刃先が「バリーン」と割れて、数メートル先に刺さった。
割れた際の、振動がしずくに伝わる。
「う………う~。な、なに、この感触。は、刃先が割れるのもびっくり………。」
剣は普通、少し当たったとしても割れない筈なのに。
「元天界人のせい、なのかな。………でも、力はもう無い筈だよね。」
『本当………!どうしてなのかしら!?』
どうやら、[ルシアル]も驚いているらしい。
「これ、改造して[ルシアル]さん用に剣を作ってもらったらいいかも。」
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その日のうちに、鍛冶者の所に赴いた。
「やぁ、しずくさんに[ルシアル]さん。」
ワイダが挨拶をした。
「こんにちは。」
[ルシアル]も会釈をする。
「今日はどうしたのだね?」
「あの、[ルシアル]さん用の剣を作ってほしくて。実は~………。」
割れた剣を見せ、事情を話した。
それを聞いたワイダは驚く。
「おいおい、この剣はなかなか刃毀れしないと評判だと言うのに。」
その言葉に苦笑いする。
「でも、逆に………新たに作り替える必要は無いのでは?」
「えっ………?」
「俺達が、個人の剣を作るのは………その人の個性があってこそのモノだがな、[ルシアル]さんの場合は、そもそもどの剣にも通用する力があるのではないかと考えるが。」
ワイダの考えには一理ある。
『…でも、自分の剣が欲しいわ。』
[ルシアル]が寂しそうに言う。
それを見たワイダは少し考える。
「………分かりました。作って差し上げましょう。切れ味がとんでもない物になりますがな!」
それを聞いた[ルシアル]は笑顔を見せた。
「楽しみに待っていますわ♪」
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後々あれこれ調べたが………力の加減等々は、一般人とは変わりはないらしい。
結局、その力はなんなのか謎のままになってしまった。




