No.17 [私、剣術を始める]
「しずく殿、そろそろ『剣術』をやりませぬか?」
ある日、アールガイが言った。
自分の身は自分で守る為に、約束はしていた。
「うん、そうだね。色々一段落ついたし。」
「では、動きやすい格好をして………門の外でお待ちしてますぞ。」
▪▪▪
「アールガイさん、お待たせしました。」
「では、この木刀を。」
アールガイは二本ある木刀の一つを、しずくに渡した。
「これ………もしかして、手作り?」
「ええ。合間を縫って、ですがね。」
木刀、初心者が作った物とは思えない程しっかりしている。
「では、始めますぞ。」
「はい!」
▪▪▪
まずは、『構え』の姿勢から入る。
「しずく殿、結構良い『構え』をしますな。」
「私、これでも剣道を私生活で習っていた時期があるんです。もう大分前の話ですけど。」
「なら、我輩の立場は要らないのでは……?」
「いいえ、身体が鈍っていると思うので…とりあえず、お手合わせ願います。」
「早速ですな………では!」
木刀を持って向き合う。
「開始!」
「おりゃぁぁぁ!」
木刀が重なる。
カチカチ、と音が鳴る。
一旦離れると、もう一度向かう。
「隙有り!」
アールガイの木刀が、しずくの脇腹に当たった。
「うー、やっぱり身体が鈍っているな…。」
「いやはや!鈍っていたと言うが………なかなかのスジですぞ、しずく殿。」
「本当、ですか?」
「ええ!練習あるのみですぞ。」
▪▪▪
それから、しずくは自主練を少しずつ始めた。
それに合わせて、早起きも頑張るようにした。
ジジジ…ジジジ…
目覚まし時計を止める。朝の6時。
「う…………よし、起きよう。」
重い身体を起こし、洗面台で顔を洗って目を覚ます。
朝ごはんは7時と決めているので、それまではとにかく素振り。
「………なんだか、朝練みたいね。」
練習中、ふと思った。
初日は張り切りすぎて、筋肉痛になったっけ。
準備体操を怠ったせいかもしれないが、それ以前にあまり運動とかしないからかな。
「しずく殿、ご飯ですぞ。」
アールガイが呼びに来た。
「あ、はい。」
最近、少し運動をするようになってから………ご飯が美味しい。
「そう言えば、しずく殿。」
アールガイが話しかける。
「何ですか?」
「以前、剣道とやらをやっていたと言ってましたよな。」
「ええ。」
「始めたきっかけって、あるのかと思いまして。」
「きっかけかぁ。私、RPGゲームが好きで。その、剣士みたいになりたいなって思って始めました。……子供っぽい、でしょう?」
アールガイは首を横に振った。
「まぁ、何もきっかけが無いよりはマシかとは思いますぞ。……で、辞めてしまった理由、とは?」
「その道場が無くなってしまって。それで自然に辞めてしまったの。」
アールガイは成る程、と頷いた。
「遮ってしまって済まぬな。さ、ご飯を食べましょう。」
しずくは頷いた。
(我輩が剣士なのも、その影響かも知れないですな…。)




