ワシなりの責任
約一ヶ月ぶりの更新です
フローレンスと話したその日の夜、僕はこの世界に来て初めて自らあの神とコンタクトを取ろうと思った。ただ……
「やり方分からねぇ……」
いつもはあっちからコンタクトを取ってくるのでどうやってコンタクトを取ればいいか分からない。今更ながら説明があれば聞いておけばよかったと思う。とりあえずベットに勢いよくダイブする。ふわっと丁度いいぐらいに反発してくるマットレスが気持ちいい。
「でもいつもは僕が寝ている時に来るよなぁ……会いたいと思いながら寝れば会えるか?
ーーまっ、そんな訳ないよな」
なんて思いながらも予想以上に疲れていたのだろう、心の中で少しそう思いながら目を閉じて意識を手放した。
「--まさかお主から会おうと思ってくるとはの」
次に目を開けると、そこには例の神と思われる光の球体があった。
「げっ、本当に会えたのか」
自分でそう思ってなんだがまかさ本当に会えるとは思わず落ち込む。神も僕が思ったことにため息をつきながら答える。
「……お主、自ら呼んでおいて酷くないのかの。まぁよい、なんじゃワシを呼んだ理由は?」
「そうだった、僕決めた。
ーーあいつ、アクセル・フォンと戦う」
僕がそう言うと神は少し間を開けて口を開いた。
「前はあそこまで拒否をしていたのに自ら戦うと言い出すとは……何があったとは聞かない。お主には迷惑をかける」
「先に言っておく、僕はお前達のために戦う訳ではない。僕は僕の大切な人たちのために戦うだけだ」
正直、こいつらがどうなろうと知ったことない。だが今日のフローレンスの涙や親しい人達が傷つく姿はもう見たくない。そうするためには僕が戦うしかないのだろう。
「それにお前が僕に“戦ってくれ”と言った際には何か勝算があってのことなんでしょ?」
「まぁの……」
と少し申し訳なさそうな神。こいつが前回わざわざ僕に会ってまで頼んできたということはこいつの仲間やこの世界の人間に対処できないかもしくは僕に何かしら勝算があって声をかけてきたと思いたい。
流石に何も考えずに“自分の担当だから”で声をかけてきてないと願う。
「アクセル・フォンはな、厄介な事に能力でこの世界、要するにお主が好きなゲームの世界の人物に対して“絶対負けない”という能力を持っている」
「詰みじゃん僕」
忘れがちだが僕が転生したのは“レイ・ハーストン”序盤で退場するがこの世界の人物である。そんなチート能力に僕はどう勝てと。てかこいつ本当に“自分の担当だから”で頼んできただろ……なんて1人で落ち込んでいるのを尻目に神は不思議そうに続けた。
「それがの、お主には何故かその能力が効かなようなのじゃ」
「へっ?」
まさかの神が発した発言に唖然とする僕。
「そうじゃ、何故かお主にはアクセルが持っている能力が効かないようなのじゃ。まぁ効かないのはその能力だけなので、それ以外の能力はお主にも効くみたいだが」
「何で……?」
「多分じゃが、お主の転生したキャラは序盤で退場するキャラじゃろ? そして丁度今の時期はお主は退場している時期。予測じゃが退場済み=この世界の人物ではない、と判断されたのではと思っている」
神の言う通りで、この時期はアクセル・フォンと各ヒロインルートに入っている時期であり、既にレイ・ハーストンは亡き者になっている。そうなると僕は本来はこの世界に既にいない存在だ。
「なるほどね……うっかりのお前にしては鋭い考察」
「うるさいの、でお主が現状アクセル・フォンに対峙できる唯一の存在になっているわけじゃ」
「まさかお前のうっかりがこんなところで役に立つとはなぁ……人生どうなるか分からないものだなぁ」
最初の頃はかなり落ち込んだが、まかさここでそのうっかりによって勝算が出来るとは思ず、感慨にふける僕。だがすぐに冷静になる。
「でもどうやってあいつに勝つか……」
アクセルは原作通り規格外の魔力を持っているので強力な魔法を連発出来る。逆に僕は原作より何故か劣化して魔法が全く使えない、魔法を無効化出来る能力を持っているが使用すると体力を結構使うので実質回数制限付きなのである。結構無理ゲー感あるぞ、これ。なんて思っていると神は笑いながら言った。
「それじゃが一応お主の魔法無効化の能力は体力の消費を無くした、それとお主の身体能力をワシの独断で能力を上げた。これで少しはアクセルに勝てる勝算が増えるじゃろ」
「“ワシの独断”? それってどういう意味?」
「なに上に相談なしでお前の身体能力を全体的に上げただけじゃ。この件が終わったらワシは何かしらの処分くらいそうじゃの」
「おいおい、それはこれからのお前の立場が悪くなるだろ」
僕がそう言うと神はカッカッカッと高笑いをしながら言ってきた。
「別にワシだけで済むのなら楽なものじゃ。お主には最初から迷惑をかけてばかり、それに今回のワシ達の失態でお主達を厄介ごとに巻き込んだのは事実。で、あればこれぐらいお主にしてやらんと道理が合わない」
「確かにお前には迷惑をかけられてばかりだが、いいのか? お前はこれからもそいつらと一緒にいるんでしょ? だったら……」
“僕の強化なんてしない方がいい”って言おうとしたのだが神に止められた。
「ワシの心配はいいのじゃ、うっかり者のワシなりにお主に義理を通すそれだけじゃ。
ーーそれよりもお主こそいいのか?」
「僕?」
「お主の彼女はお主以上に身の回りの人間が傷つくと悲しむ性格じゃろ? いくら強化されたといってもアクセルと戦ったらお主は無事では済まん、大けがをする可能性が大いにある」
神が言っているのはフローレンスのことだ。彼女は周りの人が怪我をしていることでかなり精神的にきている。それにもし僕が怪我をしようものなら最悪な場合寝込んでしまうかもしれない。
「だよね……それはどうしようか」
正直、アクセルとの戦いも悩みの種だがフローレンスにどう話すかも
「アクセルとの戦闘はワシが援護できるが、こればっかりはワシでは解決できない。お主が解決しないといけない問題なのは分かっておるだろ?」
「まさかお前から正論を言われるとは思わなかったよ、さてどうするか……」
「この状況でゆっくり話し合えとは言えないが、お主にとってあの娘は命よりも大切なんじゃろ。あの娘もお主のことを同じぐらい大切に思っているのは明白じゃ」
「……」
神から正論を言われて何も言い返せない僕、それでも神は続ける。
「しない後悔は絶対やってはいけない。お主はそうなってはなって欲しくないのじゃ」
「お前にはそんな経験があるのか?」
「ワシにはないがの、でもお主はその問題を解決しないと多分アクセルには勝てない」
「だよな」
「朝起きてお主なりに考えみるんじゃ。それでそのあと娘に話すんじゃ。それまではアクセルはワシなりに止めてみよう……。
ーーまぁワシ程度でどこまで止めれるか分からんがの」
「分かった、話してみるよ」
ある意味フローレンスを説得するのはかなり大変だ。僕が戦うと言ったら彼女は絶対反対するだろう。
ーー反対する彼女を振り切っていけるのか?
ーー泣いてすがってきたら僕は耐えられるのか?
ーーそもそも勝算の件はどう説明する? この国の最大戦力の父さんやカインさんが負けたのに僕に勝率があるなんて納得できないだろう。
ーー最悪の場合、僕がこの世界の人間ではないことを説明しないといけないがそうなった場合彼女は今までの様に僕と接してくれるのだろうか?
といくら頭の中で考えても彼女が納得する場面が想像出来ない。
「お主には散々迷惑をかけて済まぬの。
ーーさてそろそろ時間じゃ、娘とゆっくり話せ。後悔せぬようにの」
「ん……」
目が覚めると外は朝になっていた。どうやらあの後、本当にベットで寝てしまったようである。
「お兄様、朝でーー
ーーあれ自分で起きているなんて珍しいですね」
いつものように僕の事を起こしにきたラウラが驚いた様子で言ってきた。
「あ、あぁたまには自分で起きないとね。一応生徒会長だからね」
「良い心がけですね。ご飯の準備が出来たので着替えたら下に降りてきてくださいね」
「分かった……」





