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お前達のせいだろ!!

ーーアクセル・フォン追走の王国騎士団、返り討ちに遭い重傷


 その情報を聞いた僕は、一目散にミラの家に走った。あのカインさんが率いる騎士団が転生者とは言えども子供に負けるとは信じられなかったからである。全力で走って彼女の家に行き、入り口の人は僕の事を知っている人だったので顔パスで通れた。


「カインさん!!」


「おう、どうしたレイ君」


 そこには身体のあちこちに包帯を巻いて、椅子に座っているカインさんだった。その姿で本当にアクセル・フォンに返り討ちにあったと理解してしまう。


「だ、大丈夫ですか……」


「これぐらいの傷は久しぶりだ、まぁ死んでないからいいだろう」


「他の皆さんは……?」


「部下も同じような怪我だ。アクセルの取り巻きを逮捕出来たのだが……あとは奴だけになったはずだったのだが」


「だが?」


「何故か私達の剣や魔法は奴に当たらないのだ」


「当たらない?」


 カインさんの剣さばきは流石騎士団長を務めているだけあって並大抵の人間どころか騎士でもさばききれるものではない。それを全て躱すなど普通ありえないはずだ。


「あぁ言葉が変だが軌道は当たっているはずなのだが、あいつが着ている服には一切傷がない。魔法も全てきかないのだ。そしてこちらがこの不可解な現象に戸惑っていると奴は雷の上級魔法“サンダークロス”を私達に撃ってきて、もろに受けてしまってこのざまだ。笑ってくれてもいいぞ?」


「笑うわけないじゃないですか、こんな大けがまでしているんですから」


 カインさんは“笑ってくれても”と言っているが、僕はそこまで性格悪くない。それに最善を尽くした人に対してその態度はやってはいけないだろう。なんて僕が思っているとカインさんはフッと笑った。


「やはり君はそういう人間だよな、いやでも今回は自分の力不足をここまでかと実感させられた……私は今まで数多くの戦場を超えてきたが、やつは今までの相手とは次元が違う、最早同じ人間なのかを疑うぞ」


 カインさんの剣さばきを躱した挙句、魔法一発で騎士団を撤退まで追い込むなんて普通の人間ではありえない。牢屋に収監される前はそんな強さは持ってなかっただろうから、牢屋に収監されている時に一体何があったのだろうか。


「とりあえず私は手当てが終わり次第自分の失態の報告を兼ねて、これから王に報告と今後の対応を話してくる。そしてレイ君」


「はい」


「君は特に気を付けろ。あいつは何故か君に執着している、その理由は不明だがレイ君が危ないということは分かる。私の部下を護衛につけるが、これまで以上に自分の身に気を付けて欲しい」


「分かりました」


 と僕はカインさんに別れを告げ、自分の屋敷に戻った。夜、珍しく夜遅くに帰ってきた父さんの顔は昨日以上に深刻そうである。腐れ縁のカインさんが返り討ちにあったという事実は父さんにとって予想以上にダメージが大きいのだろうと思う。ただ僕が悩んでいても状況は変わらない、とりあえずその日は寝る事にした。


(これからどうすんだ僕……カインさんが敗れた……となるとどうすればあいつは止められる?)


なんて思いながら、僕は目を閉じた。



「ん……ここは……?」


 目を覚ますと僕は何もない真っ黒な世界にいた。そしてこの空間はとても見覚えがある。この場所だともれなく()()()が来るだろう。


「--久しぶりじゃの」


「お前か、くーー神様さん」


 ここは僕が()()()で殺されたあとたどり着いた場所であり、あのクソ神と始めて出会った場所であるからだ。


「お主、今“クソ”といいかけたじゃろ」


「気のせいだろ、神様さん」


 おっと思わず本音が出かけてしまった。ただ僕はこの神を尊敬など全くしていない。寧ろ自分よりも下に見ている。


「まぁワシの行いが原因だから仕方ないの……」


「分かってんじゃん、で今回は何で呼ばれたの?」


 この神は僕とただ雑談をしたくて呼んだとは到底思えない。なると何か僕と話す必要が出来たということだろう。まぁ何となく予想は着いてしまうが。


「今回呼んだのははお主と同じ転生者のアクセル・フォンの件だ」


「やっぱりか」


 僕の予想的中。何故か最近当たって欲しくない予感ばかり当たるのは何故?


「今お主の世界でアクセルが暴れているであろう?」


「あぁ何故か牢屋から脱獄して、各地で暴れているよ」


「やっぱりか……」


「まさか今回もお前のうっかりじゃないよな……?」


「ち、違うぞ!! 今回はワシではない!!」


 と必死に否定する神。この神はうっかりだが嘘はつける性格ではない。ここまで否定するとなるとどうやらこいつのせいではなさそうである。


「“ワシではない”って、じゃあ一体誰なんだよ?」


「ワシ以外にも神は他にも沢山おるんじゃ」


 まぁそんな気がしていたでないとアクセル・フォンがこの世界に飛んでこないだろう。


「へぇ……他にもいるのか。他もお前と同じうっかりなのか?」


「うっかりはワシだけだと思いたかったのだが……今回はそうでもなかったようじゃ」


「はぁ?」


「少し前じゃ、アクセルが地下牢に入れられてしばらくして奴は神の能力を奪ったんだ?」


「奪った?」


「あぁ、やつは自分の担当の神をそそのかしてワシ以外の神の能力を奪ったのじゃ」


「はぁ!?」


 この神の話をまとめると

・アクセルの担当の神はアクセルが捕まったことにより彼らの中で立場が無かった

・それでアクセルと結託して、僕の担当以外の神の力を自分の力にしたのだが、アクセルは自分の担当の力すら奪った

・そのため現在アクセルに勝てる神は誰もいない


「ワシは丁度その時にその会議にいなくてな、奪われずにすんだ」


 どうやらこのおっちょこちょいも今回だけは良かったようである。勿論褒める気は一切ないが。


「お前の仲間も大概だな、で僕に何の用?」


「アクセル・フォンを倒して欲しい」


「断る」


 僕は神からの依頼をすぐさま断った。僕の様子に慌てる神。


「ま、待て、断るの早すぎじゃないかの? もう少し話を聞いて……」


「いや話を聞いても僕は断るし、拒否する」


「だ、だがなお主がやらないとこの世界が危険に……」


「そんなのお前達がやれよ、お前はまだ力取られてないんだろ? なら頑張れよ」


「ワシがそんな力無いのは知っているであろう?」


「知るか馬鹿、お前達の自業自得でしょ? 僕達を巻き込むな」


「本当に申し訳ない……だがーー」


「ーー何度も言わせるな、断る」


 イラっときたので僕は先ほどよりも強めに断る。



「いい加減にしろ!! お前は自分がどれだけ身勝手なこと言っているか分かっている!?

ーー“アクセルに騙されて、僕達の手で負えなくなりました~そのため同じ転生者のレイ君に討伐頼みたいなぁ~”ふざけんのもいい加減にしろ!!」


 僕は自分の感情にままに怒りをこの神にぶつける。


「お主の言う通りじゃな」


「というかこっちは甚だ迷惑なんだよ!! 最初はあんたのミスで殺されて、転生先でもお前の手違いでハズレの悪役キャラ、しかも魔法が使えない人物に転生させられて僕がどれだけ辛かったか分かるか!! 毎日陰で“魔法が使えない”って言われてさ、何をやっても“家柄のおかげだろ”って言われる僕の気持ち分かる? 分かる訳ないよなぁ!? だって僕にこんな事してあんたは平気なんだから!!」


 僕はこの世界に転生する際にそんな大層なことな望んでなかった。ただモブとしてヒロインと主人公が絡んでいるのを遠くから友達と呼べる存在と見ていたかった。


 ただそんな僕の些細な願いは間違いによって消えた。よりによって悪役のキャラに、そして魔法が使えないといういらないオマケ付きで。今でこそ彼女もいる親友と呼べる存在もいるが、それまでは僕にとってこの世界はただただ“辛い”としか思えなかった。


「……」


 僕の剣幕に何も言えないのか押し黙る神、だが僕はそのまま続ける。


「元はと言えば全てお前達のせいだろ!! 自分達で起こした出来事なら自分達で解決しろよ!!」


「すまない」


「“すまない”じゃねぇよ!! いくら謝られたって僕は引き受けないからな!!

そっちで勝手にやれよ!! 僕は絶対やらない……特にお前らの頼みならなおさらだ!!」


 いつもなら人の頼みは大体引き受ける僕が今回だけは意地でも引き受けない。自分でも意固地になっている自覚はある、だがそれでも僕は首を縦に振るつもりはなかった。


「てかさ、僕が転生失敗した際に他の連中がいるなら僕の能力を変更しろよ!! で、いざ自分達が困ったら僕に助けを求めるってさ自分勝手すぎるだろ!! この世界の連中もそうだし、お前達もそうだ!!」


「一応、ワシらは自分の担当以外は干渉しない決まりでな」


「じゃあ関係ねぇだろ!! アクセルの失態はあいつの担当が処理しろよ!!」


 多分僕の状況を見て、交渉は不可能だと思ったのだろう神は少しため息をとった。


「とりあえず今日は諦めよう」


「今日だけじゃなくてずっと諦めろ」


「ではまたな」


「二度と出てくんな」




次の日


「イチ!! ニ!! サン!! 」


 僕は珍しく朝早くから起きて1人で剣を振っていた。昨日の夢の中であのクソ神から言われたことが未だにイライラが収まらないのでストレス発散のためである。なんて思いながら剣を振っているとオピニルさんが珍しそうに僕の方を見て声をかけてきた。


「おや、朝早くから鍛錬とは感心しますなレイお坊ちゃん。

ーーで、何かありましたか?」


「ちょっとイライラしたことがあってね……!! こういう場合は身体を動かす方がいいって誰かが言っていたのでっ!!」


 流石に夢での会話をするわけにはいかないので“イライラしたことがあった”ぐらいで誤魔化す。どうやらその僕の答えに納得しなのかオピニルさんは手を顎にあてて頷いた。


「なるほど理解しました。

ーー坊ちゃんさえ良ければ私がお相手致しましょうか?」


 とオピニルさんから組手の誘いがあった。正直願ってもない誘いだったので僕は乗ることにする。


「じゃあお願いしたい、手加減は無しだよ」


 なんて言うけどオピニルさんは僕相手に今まで本気を出したことがないだろうと思う。多分だがオピニルさんが本気を出そうものならカインさんに匹敵するぐらいなのだろう勝手に思っている。


「ハハ、かしこまりました。それに貴方様を相手にして手加減などできますまい」


「じゃあ行くよオピニルさん!!」


「えぇ、お相手致しましょう……!!」

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