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大事だから

 アクセル・フォンと出会った次の日、父さんに彼の件は任せた僕は生徒会の面々と一緒に学園にいた。


「アリーヌ先輩、お久しぶりです~!!」


「あらアルマンダさん、お久しぶりです。元気にしてました? 私は後輩クンと会えなくて寂しくて毎日枕を濡らしてました」


「うわぁ……レイ酷い人」


「おいおい坊ちゃん、意外と酷いんだな」


「……何で僕が攻められているのか教えてもらっていい?」


 集まって早々、謎の理由で叩かれる僕。確かにアリーヌ先輩とは夏休み中は会ってなかったと思う。だが毎年夏休みは僕は家の別荘地に戻る事を知っているはずだ。


「フフ、ごめんなさいね。最近後輩クンと会えてなかったから嬉しくて遊んじゃいました」


「ベスランドさん、私の彼氏で遊ばないでくださいね?」


 笑顔で注意するフローレンス。だがアリーヌ先輩はそんな様子の彼女を無視して続ける。


「で、後輩クン今日皆さんを呼んだ理由は?」


「あ、あぁそうでした。今日皆を呼んだのは昨日の件のことなんだ」


 僕がそう言うとさっきまで賑やかに話していたみんなの表情が変わるのが見えた。昨日その場にいなかったアリーヌ先輩もどうやら昨日の事件の事は耳に入っているみたいである。


「とりあえず僕達生徒会の面々とその知り合いに怪我は無かったのは幸いだね」


 幸いなことに知り合いに怪我人はいなかった。ただ昨日は祭りの最中での出来事だったので街の方々に怪我はあったかどうか正確な被害状況は不明である。なんて思っているとラウラが少し呆れ気味にいってきた。


「あのお兄様……お兄様怪我されてますよね?」


「まぁ僕はかすり傷だし、かすり傷はつばつけておけば治る!!」


「いや治りませんから……」


「まぁまぁラウラさん、レイは昔からこんな調子なので今更気にしてはいけませんよ?」


「ですよね……お兄様は昔からそうでしたね」


「なんか僕が馬鹿にされている感がするのは気のせいかな?」


 いつもならフローレンスがフォロー入ってくれたりするけど、今回はラウラに同意している。それどころか他の面々もうんうんと頷いている。どうやらここに僕の味方はいないようだ。


「僕、生徒会長なんだけどなぁ……」


 前から僕が生徒会長として扱われていないのは分かっているが、ここまで味方がいないと結構へこむ。


「まぁまぁ~でもさ上が間違った判断をしたらたしなめてくれる素晴らしい部下持って幸せでしょ? いやぁ~レイって幸せ者だねぇ~こんな誇らしい部下を持っているなんて」


「ミラやラウラが言えば素直に納得するんだけど、チャスが言うと説得力が皆無なの分かって言ってる?」


「まぁ私はレイを上の立場だって思ってないしねっ!!」


「よし、外に出ろチャス。一度どっちが立場が上か決めようじゃないか」


 こいつとは一度上下関係をしっかりと分からせた方がいいだろう。僕がそう言うとチャスもニヤッとした表情を浮かべる。


「おっ、やるかい? たまには本気でレイと戦ってみたいんだ~」


「はいはい、後輩クンとアルマンダさんそこまで。2人が喧嘩したら備品の破損申請が1,2個では済まないわよ。それに後輩クンは私の質問に対する回答してないわ」


「あっ、そうでした。すみません先輩……」


「そうだ、そうだアリーヌ先輩に感謝しろよ~レイ生徒会長」


「チッ」


「わぉ、凄い大きな舌打ち」


「わざとだよ、ったく。

ーー今回の事件、アクセル・フォンが絡んでる」


「「えっ!?」」


 僕からの報告を聞いた途端、驚きの表情を浮かべる役員達。


「いやいやお兄様、彼は今地下の牢獄にいるはずですよね? しかも出てこれないぐらいの地下に」


「そのはずなんだよ、ラウラの言う通り。でも昨日ね、僕は会ったんだよ。見間違えるはずがない」


 あのとき見た彼は間違いなく僕がなりたかったこの物語の主人公アクセル・フォンだった。何で脱獄出来たのか分からないが、あの時目の前に立っていたのか彼である。


「まさかあの時にレイに強力な魔法を撃ってきたのはアクセル・フォンだったのですか……丁度私の方からは顔が見れなかったので」


「で、彼が脱獄したのが僕の見間違いだったらいいんだけど彼が脱獄したのが本当なら対策をしないといけない。夏休みが終わるとこの学園は学園祭の時期に入る、ってことは彼がここを狙ってくる可能性がある」


 この世界、もしくは僕に恨みがあるなら彼はこの学園を標的の1つに選択しかねない。そして運が悪いことに学園祭が近い、なるとアクセルはここを狙ってくる可能性が高いだろう。


「レイが嘘を言うような性格ではないと分かっているが……どうしても信じられない。だってアクセルがいる箇所は凶悪犯が絶対出てこれないようにしている箇所だぞ? それをただの学生が出て来れるものか?」


 正確に言うとアクセルは僕と同じ転生者なのでただの学生ではない。だがミラ達に言っても通じないので言いかえる事にした。


「アクセルは普通じゃないさ。あの高い魔力があるし、身体能力も結構高い。考えたくないけど、何かしら僕達に隠している能力があってもおかしくないからね」


 隠している能力は僕達を転生させた“神”達の能力だ。僕の? 神は思わずクソだと言いたくなる能力だが彼のは僕よりも優秀だろう。


「で、僕がみんなを呼んだのは何かあった際に皆を頼りたいと思ったからなんだ」


 僕がそう言うとみんなは真面目な顔になった。いつもなら僕がこういう話をするたびにチャスなんかは茶化してくるけど、僕の表情を見たのか彼女も珍しく真面目な表情になっている。


「僕を含めて生徒会のメンバーはこの学園で生徒の中ではトップクラスの実力を持っている面々だと思っている。正直、教師や騎士の人達に今回の件は全て任せたいけど、そうはいかない時にみんなの力を借りるかもしれないからさ」


 フローレンスは防御、ミラは身体能力強化、アリーヌ先輩は攻撃、アルは攻撃系と身体能力系に置いては大人顔負けの能力を持っており、ラウラは魔法よりも頭の良さを使った参謀、チャスは全体的な補助が得意。僕は魔法キャンセルが使える以外は、アルとミラに役割が似ている。


「みんなは僕にとって大事な人達だし信頼できる仲間だから、こういう話も先にしておこうかなと思って今日はみんなを呼んだんだ」


「「……」」


 無言の面々。まぁいきなりこう言われて反応も困るだろうなんて思っているといきなり笑い声が聞こえた。


「おいおい坊ちゃん、自分で恥ずかしいこと言っているって実感あるか?」


 そう言いながらアルはクスクスと笑いをこらえられないのか笑いだす。


「あれ、そうなの?」


「って気が付いてないのかよ!! 流石坊ちゃんだぜ」


 どういうことか全然理解できずに戸惑っていると他の面々も笑いだす。


「いやぁ~レイがどんな事いうか楽しみにしていたらさ、まさかのこっちが恥ずかしくなるセリフを真面目な表情で言うもんだからこっちが恥ずかしいよ、まったく」


 どうやら僕は前にアクセルと対峙した時に言った事と同じ感じのセリフを言っていたようである。成程、アルが笑いだすのも分かる、そして一向に勉強しない僕。


「あぁ恥ずかしいが親友として誇らしいぞ」


「全く……お兄様は恥ずかしくないのですか? まぁ私はお兄様の妹ですから妹は兄を助けると決まってますから私は助けますよ」


「フフ、後輩クンから熱い言葉で囁かれたらやる気を出すしかありませんね、お姉さん頑張ります」


「アリーヌさん、レイは貴方に囁いていませんからね?」


 とフローレンスはアリーヌ先輩の肩を笑顔で掴んだ。ただ表情は笑っているがこめかみがピクピクしている。


「あら違うのかしら?」


 多分アリーヌ先輩はフローレンスがこめかみピクピクの理由を知っているのだろう、だから少し煽る様に言うのだろう。それでもなおフローレンスは笑顔で続ける。


「えぇ、違いますね、大いに。

ーー良いですかレイ? 貴方の真っ直ぐな性格は素晴らしいと思いますが見境そういうことを言うのは止めましょう。勿論、私には言っていいですよ? 寧ろ私だけに言ってください」


「う、うん……分かった」


「--ここにいたかレイちゃん」


「あれ、父さん?」


 そこには本来この時間は城にいるはずの父さんが立っていた、ただ顔はいつもの笑顔ではなく深刻な表情だった。その表情でこれから父さんが言うセリフが想像出来てしまう。


「レイちゃん、ラウラちゃん、それにご学友達。よく聞いて欲しい

ーーアクセル・フォンが脱獄した」


 僕にとってどうか僕の勘違いであって欲しいと願っていた事が、勘違いでないことが父さんの口から出てきたのであった。

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