夏祭り 4
フローレンスと一緒に屋台で遊んだり、食べ物を食べながら楽しく過ごしているとお祭りも終わりに近づいてきた。
「そろそろお祭りもおしまいですか……寂しいです」
なんて言いながら綿あめを頬張るフローレンス。その様子を見ていると寂しいと感じるのが祭りが終わるなのか綿あめを食べ終わってしまうからなのか、はたまた両方なのか分からない。そんな彼女に僕は告げる。
「フローレンス、まだ最後のイベント残っているよ」
「はむ、あれ、まだありましたっけ?」
と綿あめの最後の一口を食べ終え、少し寂しそうな僕の彼女。
「花火だよ、花火」
「あぁ花火!! すっかり忘れていました」
と思い出したかのように言った。この祭りの最後には夏祭りらしく花火があがる。友達がいないので夏祭りが苦手だった前世でも家のベランダから見る花火は好きだった。
「でもレイ」
「ん?」
「今から場所を取りに行くのは厳しいのでは?」
「あぁそれね、大丈夫」
フローレンスが言っているのは花火の場所取りのことだろう。毎年花火が綺麗に見える場所は取り合いになるので早朝から場所取りをしないといけない。まぁ貴族の連中は自分の屋敷から見たり、“祭りなんて庶民の催しなど興味ない”って言う輩もいるので貴族達はあまり場所取りに来ない。
「大丈夫……ですか?」
「そうそう、付いてきて」
「え、えぇ……」
と僕はフローレンスの手を取ると、とある箇所に向かう。勿論花火をベストポジションで見たいのならこんなところで遊んでいる暇はないのは僕も知っている。なので僕も僕なりに色々と考えた。それとはというと……。
「あっ、いたいた」
「おや、レイ坊ちゃまとフローレンス様ですな」
「貴方様はレイの家の執事のオピニルさん? どうしてここに……?」
僕達が向かった場所にいたのは僕の家の執事長のオピニルさん。僕達を見ると穏やかな笑みを浮かべてきた。
「はい、レイお坊ちゃまの願いを頼まれましてここにおります
ーーさっ、お二方ここですと花火がとても綺麗に見えますぞ」
なんて言うとオピニルさんは手に持っていた鞄から布を取り出すと地面に敷いた。僕がオピニルさんに頼んだことはとても簡単、花火をとてもよく見えるポジションの場所取りである。
「ありがとうねオピニルさん」
「レイ、貴方自分の家の執事、しかも執事長に何をさせているのですか……!?
ーーごめんなさいオピニルさん、レイが無理を言ってしまって」
「いえいえ私は構いませんぞ。確かに私は執事長ですがハーストン家の使用人達は皆優秀で私が1つ1つ指示を出さなくても大丈夫なのです」
「オピニルさんがそう言われるのでしたら……」
「それに花火を見る際にお茶とお菓子を持ってきました。お口に合うか分かりませんが」
というとオピニルさんは再び鞄に手を入れると今度は銀色の小さな棚を出してきた。多分だがあの中にはお茶とお菓子が入っているのだろう。正直これは頼んで無かったがありがたい、ちなみに隣のフローレンスはさっきまで僕を睨んでいたのだが“お菓子”と聞いた瞬間、目をパァッと輝かせたのを見逃してない。
「さっレイ、花火を見ますよ!!」
「はいはい、本当にありがとうねオピニルさん」
「いえいえこれぐらいは大丈夫です、では」
僕達に一礼して去っていくオピニルさん。そして僕達はひかれた布に座る。多分あと10分足らずで花火が始まるだろう。なんて思いながら僕はオピニルさんから預かった小さな棚を開けるとそこには入っていたのはポット、カップ、お菓子。ポットを持つと丁度いいぐらいに冷えていた、僕はそのままカップにお茶を注ぎ、フローレンスに渡す。
「ありがとうございます」
と僕からカップを受け取るとそのままカップに口を付けて飲み始めた。その飲む仕草だけでも絵になるのが不思議なのである。いつもはポンコツとか少しだらしないところばかりを見ているが流石はメインヒロイン。
「どうしたんですか私の横顔を見て?」
「いやぁやっぱりフローレンスは綺麗だなぁって思って」
日頃の負の面を見なければ素直に言えるのだが。
「いきなり何を言い出すんですか貴方は」
と苦笑するフローレンス。まぁいきなり横顔を褒められても困るのでその反応は妥当だろう。
「うぅ~ん、癖かな。僕が変な事を言うのはいつものことでしょ?」
「……それ自分で言いますか普通? 思っているなら少しは改善しましょうと……言いたいのですがそうなると私も人の事を言えませんよね」
「それね、本当だよね、うん」
「何でそこは大きく頷くんですか!? 今の流れ的に流すところでしたよね!?」
「ほら、花火始まるよフローレンス」
「またこの流れですか!!
ーーもぅ、私の方がお姉さんなのに~~!!」
なんて言うフローレンスの叫びと丁度のタイミングで祭りを締めくくる打ち上げ花火が打ちあがり始めたのであった。





