夏祭り 2
「さぁ3個買ってください。さぁさぁ!!」
手を引かれるがまま近くの屋台に立ち寄る僕達。
「はいはい、分かりましたよ。
ーーすみません、じゃがバタ3個」
と僕はお店の人にフローレンスのじゃがバタを注文した。そこの店は僕達と同年代の女の子が料理を作っていたのだが何となく見覚えがある雰囲気だなぁと思っていたのだがその勘はすぐに判明する。
「は~い、分かりま
ーーってレイじゃん~」
そこにいたのは同じ生徒会のメンバーであるチャスであった。
「そういう事かよ……」
僕達がたまたま寄った店はまさかのチャスの実家の店だった。そう言えば事前に出るって話は聞いていたが何も考えずに入った先がまさかに知り合いの店というゲームにありがちな展開……いやこの世界ゲームだったな、この世界。
「あらアルマンダさん、こんばんわ」
「我らが会長の彼女のフローレンスさんじゃないですか~流石何着ても似合いますね」
と手を口に当ててニヤニヤとした表情を浮かべるチャス。
「ありがとう、アルマンダさんも浴衣着たら似合いますよ」
流石にチャスのからかいに対して耐性が出来たのかフローレンスはそのからかいを軽く受け流した。
「またまた御冗談を~レイもそう思うよね?」
「僕に話を振るなよ……でも僕もそう思うよ」
「おっ、流石我らの頼りになる会長さん。話が分かる~」
「チャス、思ってないでしょ絶対。じゃなくて僕が賛成したのはフローレンスの意見だよ」
「へっ?」
どうやら僕の反応が予想外だったらしくポカンとした表情を浮かべるチャス。
「いやチャスも浴衣来たら似合うってことだよ。君も普通に可愛いんだから浴衣着たら可愛いと思うんだけどな」
チャスだって日頃の問題行動こそあるが見た目は可愛い。流石メインヒロインの1人なだけある。
「お、おぉ……」
「まぁでも日頃の生活態度を直して欲しいのだけーー」
「えい」
ぐっ
「痛っ!? 一体何をするのさフローレンス!?」
可愛らしい掛け声とは裏腹にかなりの勢いで僕の足を踏んでくるフローレンス。浴衣なので僕は草履なのだが、彼女は下駄。踏まれたらかなり痛いのである。足を踏んだ犯人の方を見ると、頬を膨らませてそっぽを向いていた。
「レイが悪いんです、私悪くないです」
「えぇ……僕何かした?」
多分僕が何かをしたから彼女が怒っているのだが、僕には全く心当たりがない。なんて僕らの妙な雰囲気を察したのかチャスが仲裁に入る。
「あ、アハハハ……まぁまぁ2人ともせっかくのデートなんだから笑顔、笑顔~
ーーってなんで私が仲裁に入っているんだろう……おかしくない?」
うん、チャスの言う通りだと思う。
「ごめんチャス、じゃがバタ3個頂戴」
「はいよ~ちょっと待っててね」
とチャスは慣れた手つきでジャガイモを蒸し器から取り出すと、バターをかけている。
「チャスは毎年手伝っているの?」
「うん、そうだよ~なんせこのお店の看板娘なので
ーーほい、お待ち!!」
そうしてチャスからじゃがバタを3個受け取る。出来たてなので容器越しに結構熱い。
「ありがとうチャス。はい、フローレンス。熱いから気を付けてね」
「ありがとうございます。でも大丈夫です、魔法で熱さ和らげてますから」
「羨ましいなぁ本当……僕も魔法使いたいな……」
こういうところでも魔法が使える・使えないの差が出てくるのがこの世界だ。まぁ僕は生まれてこのかた魔法を使えた事がないのだが。
「まぁでもレイの場合は日頃トリスケール君と殴り合っていたり、組手していたりするから他の人よりも手の皮厚いんじゃないの~知らんけど」
「知らんのかい」
少しはフォローしてくれるのかと思っていたがまさかの投げやりだったことに傷つく。
「まぁ適当に言ったからね~それに私なんかよりも隣の彼女先輩の方が分かっているんじゃない?
ーーですよねフローレンスさん?」
「そうですね……確かにレイは他の人よりも手の皮厚そうですね。でも握っているととても安心する大きな手なので私は好きですよ」
とニコリと微笑みながらチャスに言う我が彼女。ここまで真っ直ぐ言われると恥ずかしいと思っているとチャスは急に両手で目を覆い始めた。
「くっ……眩しい……煽ってみようと思ったら素で惚気られただと……!! これが学園での“お似合いカップル”の投票で堂々の1位を取った貫禄!!」
どうやらチャスは急に話を振ってフローレンスを困らせようとしたらしいのだが、僕の彼女はそんなチャスの思惑を知ってか知らずか惚気で返してしまい逆にチャスを困惑させたようである。
「てか“お似合いカップル投票”ってなんだよ、まさかチャスさ変な事してないよね……?」
「何もしてないよ~だってあまりにも1位と2位で差が出来ちゃって賭けがーー
ーーあっ……」
しまったと思ったのだろうチャスの目線が明後日の方を向いている。だが時すでに遅し。なぜなら僕は学園の生徒会会長なのだから悪事を見逃すわけにはいかない。
「チャスは夏休み終わったら少し話そうか。
ーーしばらくは早く帰れるなんて思わないでね?」
「えぇ~少しは許してよ生徒会長~」
「あのなぁ……自分が何をしようとしていたのか分からないのかい?」
「まぁまぁ今回のじゃがバタ代は賄賂にして許してちょ」
「まぁまぁレイ、今日ぐらいは許してあげましょう。じゃがバタをいただけるとのことですし」
「フローレンスがそう言うなら。
ーーあっ、追加で焼き鳥、かき氷、ラムネももらっていこうか。勿論タダでね?」
「鬼がいる!! 鬼が!!」
失敬な、誰が鬼だ。





