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お祭りに行こう

 そしてついに楽しみにしていた祭り当日になった。浴衣に着替えて僕はフローレンスの屋敷に向かった。待ち合わせの時間よりも大分早かったのだが待ちきれず、彼女の屋敷に向かったのだが……。


「あっ、レイ!!」


「フローレンス」


 屋敷の前には既にフローレンスが立っていた。彼女は青い生地に黄色の花の模様が描かれている浴衣を着て、髪型も後ろでかんざしでまとめておりいつもと違う印象を抱く。この世界では浴衣というのは大陸の東方の国の民族衣装という扱いだ。まぁ町並みや文化が西洋風なので浴衣の扱いとしては中々良いと思う。


(浴衣可愛いーー!!)


 自分の彼女補正もあるだろうけどとにかく浴衣が似合い過ぎていたので思わず僕は心の中でそう叫んだ。


「早いですね」


「それを言うならフローレンスも早いよね」


 叫びそうな気持を悟られない様に普段通りの口調で返事をする。時計をを見てみるとまだ集合時間の30分前、どうやらお互い考えている事は同じだったのだろう。するとフローレンスは胸を自慢げに張った。


「ふふっ、レイと初めて2人っきりのお祭りだったので楽しみすぎて、3時間ぐらいしか寝てません!!」


「寝てよ!? もし体調不良で倒れたらどうするのさ!?」


 まるで次の日の遠足を楽しみにしている子供のような事をする僕の彼女。楽しみにしてくれるのは嬉しいけど何かあったらとても困るのだが、今目の前で目をキラキラさせて笑顔のフローレンスを見たら許してしまう。


「さぁ行きますよレイ。お祭りを楽しみます!!」


「そうだね。あっ、そう言えば」


 そのままお祭りに行きそうになったが、1つ言い忘れていた事を思い出した。


「何ですか?」


「浴衣似合っているね」


 さっきまではあまりの衝撃で叫びそうだったので口から言えなかったが、少し落ち着いてきたので浴衣が似合っていることを言った。


「……」


 僕がそう言うとフローレンスはきょとんとした表情を浮かべた。どうやら僕はまたやらかしてしまったようである。


「あ、あれ……フローレンス? 僕やらかした?」


 またやらかしたと思い、後悔していると首をブンブンと勢いよく振る彼女。


「い、いえ全く間違ってませんよ!? ただレイがその言葉を言うことに意外だったので……」


「そうかな……? 僕結構自分が思っている事を結構素直に言うようにしているんだけどなぁ……」


「えぇ確かにレイは自分が思った事を結構素直に言いますが、“可愛い”や“綺麗”なんか私が言って欲しい言葉をあまり言わないというか鈍感ですから」


「確かに……あまり言ってこなかったな。

ーーうん、可愛いよ」


「レイ……今のはあまりにもとってつけたような言い方ですよ」


 とジト目で言われる僕。確かに今のはかなり強引に言った気がする。


「ごめん……」


「まぁ今の失言はこれからのお祭りでのエスコートでどこまで挽回できるか楽しみですね」


「う、うん頑張るよ僕!!」


 なんせせっかくフローレンスと2人でお祭りを見れるのだから色々とプランを考えた。これで失敗しようものならしばらく立ち直れない自信がある。僕は結構心は繊細なのだ。


「そうですか、じゃあ楽しみにしてますね」




 そうしてフローレンスの屋敷を離れた僕達は手を繋いでお祭りの会場に向かった。会場に近づくにつれ、賑やかになり人が増えていく。


「人が多いですね」


「まぁ一年で一番賑やかな日だからね。みんな騒ぎたくなるかな」


「レイ、はぐれないでくださいね?」


「あの……フローレンス、その言葉そっくりそのまま返すよ。

ーーはぐれないでね?」


「うぐっ……」


 と心当たりがあるのか押し黙るフローレンス。実は彼女、重度の方向音痴なのである。学園生活ではそこまで迷子になる場面はないが、こういうお祭りなどのイベントだと迷う可能性があるので大体は僕が常にフローレンスから目を離さないようにしていた。


「だ、大丈夫です。今日はレイと手を繋いでいるので絶対迷子になりません!!」


「まぁ大丈夫かな……って、あれはミラ?」


 僕の視線の先にはミラが立っていた。そう言えば昨日パトロールを行うと言っていたなと思い出す。


「あらルネフさんですね、挨拶しましょう。

ーールネフさん、こんばんわ」


 フローレンスが声をかけるとミラはこちらに気づいたのかと軽く頭を下げてきた。


「ん? レイにライシング殿ではないか」


「こんばんわミラ、何か事件起きた?」


「こらレイ、いきなり不謹慎な事言うんじゃありません

ーーそれにいつも問題を起こすのはレイとトリスケール君、アルマンダさんですよね?」


 そう言われる僕。僕自ら問題を起こしていないのだが、まさかの付き合いの長い彼女にまで言われてしまうとなると少し落ち込む。何度も言うが僕は結構心は繊細なのだ。そんな僕達の会話を見たミラは穏やかに笑った。


「そう言えば2人はデートか

ーー任せろ、2人の楽しみは私が守ろう。事件は私が起こさせない」


「うん、お願いね。あとで何か買ってくるよ、何がいい?」


 と言うとミラは目を輝かせて


「本当か!? そうしたら綿あめ、チョコバナナ、りんご飴、クレープ等々、あぁ……迷うな!!」


「……少しは量を遠慮して欲しいなぁ」


「す、すまない……何を食べるか決めてなかったので迷ってしまう」


「でしたらルネフさん、先ほど貴女が言っていた食べ物の中で私達がいくつか選んで買ってきますね」


「すみません会長……」


「ふふルネフさん、既に私は会長ではないですよ。今はレイが会長なんですから」


「あっ、失礼しました……」


 まぁ僕達はフローレンスの事を結構長い間“会長”と呼んでいたのでミラが言い間違えるのも仕方ないだろう。僕なんてまだ会長になってから3か月程度だが、フローレンスは中等部から合わせて4年ぐらい会長職を務めていたのだから。


「じゃあ僕もフローレンスの事を“会長”って呼んだ方がいい?」


「ふふっ、レイ

ーー怒りますよ?」


「何で!?」


 ミラは許されたのに何故か僕は許されない。


「ルネフさんはしょうがないです。ですがレイは駄目です」


「何故なんだろうか……」


 納得はいかないがここは僕が調子に乗ったのが悪いのだと思い、渋々納得することにした。


「ま、まぁ2人ともせっかくのデートだから喧嘩はそれぐらいにしておいて楽しんできたらどうだろうか?」


 とミラに促された僕達は彼女に手を振り、屋台の方に足を運ぶのであった。

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