しばしの別れ
久々の投稿となりました。
お待たせしてしまい申し訳ございません……!!
海で遊んだ次の日以降はアルクさんやテリアスさんに様々な事を教えてもらったり、フローレンスと一緒にイチャイチャしたりと充実した日々を過ごせた。ただ充実していると時が経つのが早いようで……。
「この4日間お世話になりました」
気が付いたらフローレンスの家の別荘地から離れる日がやってきた。最初こそ夏休みの大半をこちらで過ごそうかと思っていたのだが父さんが大人げなく駄々をこねたので諦めたのである。あの様子は本当にこの国のナンバー2が見せる姿なのだろうかと子として悲しくなった。
「いやいや私もレイ君と久しぶりに沢山話せて楽しかったよ。だがこれ以上君をこちらにいるとアークさんを敵に回すから勘弁したいな」
と苦笑するアルクさん。この人には別荘地にいる間に政治の仕方や様々な知識を教えてもらった。僕個人この人の事は1人の大人としてかなり尊敬しているのでその人に“話せて楽しかった”と言われて少し嬉しい。
「テリアスさんも色々と教えていただきありがとうございました」
「俺も楽しかったよ。妹の彼氏と腹割って話せたのは中々無い経験だからな。また来いよ」
「はい、また来させていただきます」
「ーーレイお坊ちゃまお待たせ致しました」
とライシング家の方々と別れの挨拶をしていると僕の家の執事オピニルさんが馬車を操作しながらこちらに向かってきた。
「あっ、オピニルさん」
オピニルさんが今日ここに来た理由は僕の迎えだ。これから僕はオピニルさんが操作する馬車に乗ってハーストン家の別荘地に向かうのである。僕の家の別荘地まではここから結構距離があり、1日と半日は馬車に揺られて向かう
「ライシング家の皆様、レイお坊ちゃまが大変お世話になりました。この場をお借りしまして感謝を申し上げます」
「オピニルさん、久しぶりです」
とオピニルさんを見つけると軽く頭を下げるアルクさん。僕の父さんとアルクさんは学園時代と付き合いのため執事であるオピニルさんの事も知っているのである。
「おぉ……アルク様でしたか。旦那様もアルク様が来るのを楽しみにしておりますのでお時間があれば」
「えぇその際には何か手土産を持っていきます
ーーで、いつまでお前はレイ君にくっついているんだ?」
アルクさんが呆れたように言う視線の先には……。
「むぅ……」
明らかに不機嫌なフローレンスが僕の腕をがっちりホールドしている。
「あのフローレンスさん……?」
「私も行きます」
「いやいや何を言っているのさ!?」
「だってこれから2週間レイと離れ離れは嫌ですぅ……」
と更に強く僕の腕を掴む。と言うかフローレンスってこんなに力強かったっけ? さっきから僕の腕が地味に悲鳴を上げているぐらい痛い。
「僕も寂しいけーー」
「じゃあ私も行ってもいいですよね!!」
「いや人の話を最後まで聞こうか君は」
「むぅ……」
再び不機嫌な表情になる。さっきからこの状態だ。
「こらフローレンス、レイ君が困っているじゃないか」
「レイは甘いから許してくれます」
「私の娘ながら凄い理論だな……。
ーーすまないレイ君」
「いえ……」
謝ってくるアルクさんに対して“フローレンスだからしょうがないか”で許してしまいそうな自分がいることが否定できない。だがいつまでもここにいる訳にはいかないので僕はフローレンスに語り掛ける。
「ねぇフローレンス、夏休みの最後にお祭りがあるだろ?」
「えぇありますね」
僕達が住んでいる首都のアスフェルトでは毎年夏の終わりに大きなお祭りが開催される。沢山の屋台が並んで踊りや様々なイベントが目白押しでアスフェルトで1年で一番騒がしい日だ。昨年は生徒会の面々で楽しんでいた。
「その日一緒に回ろうよ」
「本当ですか!!」
僕の提案に目をキラキラさせるフローレンス。
「こんな事で嘘つかないって」
「他の皆さんはいないですよね!? 2人だけですよね!!」
「うん、いつもなら皆に声をかけるけど今回は2人で楽しもう。
ーーなんせ恋人になって初めてのお祭りだからさ」
昨年も僕達はお祭りに参加したが、その時は生徒会のメンバー全員で、中等部まではフローレンスとラウラの3人で参加していたので、フローレンスと2人きりというのは初めてだ。
「“初めて”……えぇ、良い響きです」
“初めて”という言葉が良いのかうっとりとした表情を浮かべるフローレンス。あともう少しでなんとかなりそうだ。なので僕は一気に畳みかけることにする。
「もし僕の家の別荘地に向かうのが遅れると父さんが癇癪起こしてお祭りに参加できなくなっちゃうかも……」
勿論、予想でしかないのだが父さんの場合は本当に僕やラウラを溺愛するあまり、本当にやりそうなので怖い。それを知ってなのかアルクさんは目線を逸らしながら苦笑している。
「そ、それは困ります!! せっかくの2人でのお祭り参加なのに!!」
「でし? だから今日僕が家の別荘地に向かえば、祭りの頃には戻ってこれるはずなんだ。
ーーだから許して欲しいなぁ」
「む、むぅ……悩みどころですね」
と顎に手を当てて結構真剣に悩む僕の彼女。
「いやそこ悩むのか……?」
「父さん、それは俺も思うけど今のフローレンスに何を言っても意味がないと思うが」
そしてその様子を見て、別の意味で悩んでいる彼女の父と兄。確かに僕も同じ立場だったら同じような態度を取ってしまうだろう。
「しょうがないですね。今日のところは許してあげましょう
ーーお姉さんは寛大ですからね!!」
と何故か自慢げに宣言するフローレンス。
「「何故上から目線なんだ……?」」
とアルクさんとテリアスさんの声がハモった。それは僕も同意する。
「ありがとうフローレンス、じゃあ次はお祭りで。
ーーアルクさん、テリアスさん、数日間お世話になりました」
と僕は最後に2人に頭を下げた。
「私は気にしてないから大丈夫だ。
ーーそれよりも娘の件で、頭を下げないといけない気がするな……」
「だな、父さん。まぁ俺達は気にしてないからレイ君は気にすんな。これからも頼む」
「はい、こちらこそ」
2人との別れを終えて、僕はオピニルさんの方に向かおうとした。すると……
「レイ」
「ん? 何ーー」
チュ
「えっ?」
彼女に呼ばれて振り向こうとした時、不意に頬に何か温かいものが触れた。驚きの表情を浮かべながらフローレンスの方を見ると真っ赤な顔をしている。
「おぉ……やるじゃないか」
「はぁ……何をしているんだ……」
ニヤニヤと笑うテリアスさんに、呆れて頭を抱えるアルクさん。そして今自分に起こっている出来事が分かってない僕。
「ち、ちょっとフローレンス!? い、今のって……!?」
「わ、分かっているなら言わないでくださいよ!! 本当、レイは昔から乙女心が分からないですね!!」
「まぁ坊ちゃんは昔からそういう心には鈍感ですからなぁ……」
「ち、ちょっとオピニルさん!? それってどういう意味なの!?」
「フォッフォッ、執事として次期当主のレイ様の事を思っての言葉ですぞ」
「絶対面白がってるでしょ!?
ーーじ、じゃなくてフローレンス」
「何ですか……?」
と少しムスッとしているフローレンス。流石に少しの別れであっても彼女が不機嫌なままで別れたくないので僕は改めて彼女の方を向き直った。
「その……鈍感でごめん。だからそのお詫びというか……やり直しをしてもいいかな……?」
「いいですよ……」
僕のやりたいことが分かったのだろうか彼女は目を閉じて、顔をこちらに近づいてきた。その綺麗な顔に自分の顔を近づけて、そして……
「ん……」
今度はきちんと唇と唇でキスをした。
「「おぉ……」
何か周りが騒がしい気がするけど、今は無視をする。多分馬車でオピニルさんにからかわれそうだが今は考えないことにした。それに今は大好きな彼女とのキスを優先する。
そしてキスを終えると僕達は顔を離した。フローレンスの顔はさっきよりも真っ赤だが多分僕も同じぐらい真っ赤な自信がある。
「じゃあ行ってくるね、フローレンス」
「えぇ行ってらっしゃい、レイ」
そう言ってくれたフローレンスの顔をは笑顔だった。よく小説で“女性は笑顔が一番”という表現を目にするが今の彼女はまさにその通りだろう。やっぱりフローレンスは笑顔が一番だ。
「では、皆さんこの数日間お世話になりました!!」
と数日間過ごした土地を離れることにするのであった。





