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彼女の別荘に行こう

学園での期末テストを終えて、僕は馬車に揺られてとある場所に向かっていた。


「ほら、レイ見てください!! 綺麗な海ですよ!!」


「うわぁ……本当に綺麗だ!!」


とフローレンスが指をさした方を見ると、そこには太陽に照らされて輝く大海原が広がっていた。僕の家、ハーストン家の別荘があるのは山の方なのでこの世界に転生して海は数える程しか見ていない。そのため海を見るたびに不思議とテンションが上がる。


「こらこら、2人ともはしゃぎすぎだよ。元気なのは良い事だけどそれだと別荘に向かうまで持たないよ?」


とアルクさんに笑顔でたしなめられるが目の前に広がる海に僕達はテンションが上がってしまって仕方ない。


今僕はフローレンスの家族と一緒にライシング家の別荘に向かっている。

前にアルクさんから“私達の別荘に来ないか”と言われて両親に聞いたところ、父さんは大泣きしたけど母さんが物理的にねじ伏せた。その代わりにライシング家の別荘で数日過ごした後はオピニルさんに迎えに来てもらい、そのままハーストン家の別荘に向かう事で父さんに納得してもらったのである。


「それにしても聞いたよレイ君」


「何をでしょうか?」


「今回の期末テスト、学年5位だったそうじゃないか」


「まぁ……今回は頑張りました」


この前の期末テストで僕は学年で総合5位を取れた。いつもの僕なら赤点回避だけを目指していたが今回は夏休みにライシング家の別荘に向かうことが決まっていたので死ぬ気で頑張った。その結果まさかの学年5位を取ってしまい周りに“カンニングをしたのでは?”と疑われてしまい少し困ってしまった。


「お父様、レイ凄いですよね!!」


「……何でフローレンスの方がレイ君よりも嬉しそうなんだい?」


「だって私と別荘に行くために勉強頑張って平均点どころか学年5位を取ったんですよ? 彼女として誇らしいです、後で頭を撫でてあげますね」


「って僕が5位って分かった日もずっと頭を撫でていたじゃないか……まぁ今回は別荘に行くというのもありましたが、他にも理由があったんですよ」


「他の理由とはなんだい?」


「それはですーー」


「ーー会長だからですよね、レイ? 会長は生徒の見本だから恥ずかしい点数ばかり見せれないからです」


僕が言う前にフローレンスがアルクさんにそう言った。


「……フローレンス、それ僕が言うやつ。というかよく覚えているね」


「当たり前じゃないですか、大好きな貴方の言葉ですから忘れるはずがないです」


「嬉しいんだから恥ずかしいのか分からないなぁ……」


面向かって“大好きな貴方”と言われて嬉しいと思う反面、彼女の親の前で言われて恥ずかしいのが心の中でせめぎ合っていて、何とも微妙な気持ちな僕。そんな僕の様子を見たアルクさんは少しイタズラを思いついた子供のような表情を浮かべるとフローレンスの方に向き直ると、開口一言目にこう言ってきた。


「じゃあフローレンス、レイ君が告白した際の発言は覚えているかい?」


「はい、今まで一番嬉しかった言葉ですから忘れるはずがないです。

ーー“僕は貴方が好きです

貴方さえ良ければ僕の彼女になってください”でしたよね!!」


と自慢げにアルクさんに答えるフローレンス。だがアルクさんは告白の現場にいなかったので僕がその時のどんな事を言ったか知らないはず。だからか彼女に答えられたアルクさんは少し困惑した表情を浮かべ、僕の方に話を振ってきた。


「いや、私に同意を求められてもその場にいないから分からないのだが……レイ君、そうなのか?」


「え、えぇ……多分そんな感じでした」


というか言った本人が覚えてないのに何で覚えているんだろうか、この子は。


「まぁでも僕も学園のみんなから承認を得て生徒会長になったので、少しぐらいは会長らしく他の生徒の手本になれるように頑張ってます。僕の場合は中等部から“学園一の問題児”なんて言われていたので評価はマイナスからの出発でしたが」


今回僕が会長になれたのはアクセルの件がみんなの勘違いで僕の評価が一気に上がったからだ。あの件が無かったらフローレンスの後ろ盾が無くなった僕は会長どころか役員をやってなかった可能性が高い。多分僕が役員で無くなったらアルは生徒会をやらず、僕と一緒につるんでいたかもしれない。


「何を言っているんだいレイ君、真面目なのは良いことだ。真面目にしていればいつか君を心から認めてくれる。それに君は心から信頼できる学友がいるのだろう? なら彼らと一緒に頑張れば良しだ」


「そうですよレイ。貴方の頑張りはわ・た・しを筆頭して生徒会役員は全員知っています。特に私は知っていますので安心してください」


何故か“私”という部分を強調してくるフローレンス。

そこを強調する必要があるのかは疑問だが自分を理解してくれる人がいるのは嬉しい。

なんて考えていると勝手に周りに壁を作って交流しなかった前世とは大違いだとふと思ってしまった。


(前世でも頑張れば僕を理解してくれる人がいたのかな……まぁ今更振り返っても仕方ないか)


今更前世に戻ろうとは思わないが、ただ唯一僕の事を案じてくれた兄には申し訳ないと思う。せめて最後に一言謝っておけば良かった。




それからしばらく他愛ない話をしていると


「ほら、着いたぞ。ここが私達、ライシング家が管理している別荘地“フルクトゥス”だ」


とアルクさんに言われて馬車の外を見ると、そこには海沿いに続く断崖絶壁が海岸線が変化に富み今までに見た事がない美しい景色が広がっていた。


「はぁ……すげぇ……!!」


語彙力が元々無い僕だがこの景色を見たら語彙力が更に無くなる。それぐらい絶景なのだ。そして険しい岩壁の続く地形を上手く使って段々畑、果樹園、放牧地など様々に活用している景色も良い。


「ここ凄く綺麗ですね!!

今回呼んでくれてありがとうございます!!」


僕が興奮したままアルクさんに言うと誇らしそうに答えた。


「だろ? 私も幼いころからこの場所に訪れているのだがこの景色は私のお気に入りでね。休みに来ると心が落ち着くんだ気に入ってくれたのなら嬉しい」


「いやいやここの景色は僕も好きですよ!! この綺麗な海、断崖絶壁の岩壁、そしてその地形を上手く活用した人々の住まい……どれも取っても好きです!!」


と興奮気味に僕が話すと目の前の親子は穏やかに微笑んだ。


「フフ、レイがここまで饒舌になるなんて余程この景色を気に入ってくれたようですよ、お父様」


「あぁ君に気に入ってもらえた様で私も嬉しいよ」


「あっ……すみません……つい興奮してしまって……」


「良いんだ、君が喜んでくれたら私も嬉しい。

ーーさぁまずは私達の屋敷に向かおう。その後は私が町を案内しよう」


「本当ですか!?」


アルクさんからの魅力的な提案を聞いた僕は彼女の屋敷に向かう道中もずっと心が落ち着かなかったのであった。

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