昔の父さん
とある休日
「やぁレイ君こんにちわ」
「アルクさん今週もお邪魔します」
僕はフローレンスの屋敷に訪れていた。
平日は僕が生徒会の仕事やらで忙しいため休日はフローレンスか僕の家に行くことになっているが専ら僕が彼女の家を訪れる事が多い。ちなみに今フローレンスは用事で席を外している。
「あぁ君なら大丈夫だよ。それを言うなら毎週私の娘のわがままに付き合わせてしまって申し訳ないね……あの子、意外と頑固で強情だから」
「ま、まぁ長い付き合いなので慣れました」
「これからも娘を宜しく頼むよ
ーー本当に頼む」
「は、はい、頑張ります……」
普通なら“娘はやらん!!”なんて言われかねないがフローレンスのお父さんからは逆の事を言われている。
ちなみにだが本来のフローレンスのルートだと付き合い始めると父であるアルクさんが主人公のアクセル・フォンに対して“身元が不明の男に娘を任せれない”と交際を大反対されるのが流れだ。アルクさんに認めてもらうために色々と頑張って最後はアルクさんに認めてもらい、アクセルがフローレンスの卒業式にプロポーズして大団円を迎える。
……という流れだが、僕は既に幼いころからの付き合いもあってアルクさんからかなりの好印象を受けている。なので逆に“娘を頼む”とまで言われている。
(あれ、これって僕もうエンディング迎えているんじゃないか?
いや~数か月前は人生終わったと思っていたけど頑張った甲斐があったなぁ~)
転生して当初は悪役のレイ・ハーストンになったことで絶望し、アクセル・フォンが転生してきて絶望してきた人生もようやく報われるようになったのかと思うとここまでの道筋は長かったと思う。
「どうしたんだいレイ君? なんかお年寄りの方が昔を思い出している表情をし始めて」
「い、いや……つい数ヶ月前死にかけてからここまでの記憶を振り返っていて、つい」
僕がその様に言うとアルクさんはあぁというと口を開いた。
「そうか、確かにレイ君は転校生に命を狙われたんだったな。
ーーでも、まさか大人数人しかも戦闘を本職をしている連中に1人で挑んだのは凄いよ」
「ハハハ……まぁ頑張りましたけど酷かったです」
途中までは頑張っていたつもりだが、実際は倒されたフリをしていただけだであり、ただアクセルの掌で踊らされていただけだった。
「今では君は学園の英雄扱いだろ?
ーー“学園の危機に1人で立ち向かった副会長”なんて言われているらしいじゃないか」
「なんかそう呼ばれているらしいですね……あまり呼ばれても好きではないですが」
「そこまでの偉業をしてまでも謙虚だとは本当に不思議だよ君は、そう言うところもアークさんとそっくりだ」
「そうですかね……」
「私はアークさんとカインさんの後輩なのは知っているよね?」
「えぇそれは知ってます」
父さんとアルクさん、ミラのお父さんのカインさんは僕達が通っている学園のOBであり、会長と副会長の関係だったらしい。そのためか未だに仲が良いのだが、ゲームだと仲が悪かったはず。だがこの世界だと仲が良い状態が続いているようだ。
「あの頃のアークさんは君と同じ問題児みたいな扱いだったんだよね。頭良し、家柄良しなのに常に問題行動ばかりで教師達も手を焼いていたよ」
「親子揃って先生達に手を焼かせているんですね……」
「正直言うと私はアークさん達が羨ましかった。私はライシング家の長男だったから跡取りで勉強しかしてなくてね、自由に楽しんでいる2人が。でもある日にいきなり声をかけられてね、“暇だから付き合え”と」
「うわぁ……横暴の極み」
「ハハ、君もそう思うかい? 最初こそ嫌々だったけど、いつの間にか私も一緒にするようになっていてね。毎日が楽しかった、それはもう今までの学園生活がどうでもよくなるぐらい」
とその頃が懐かしいのか穏やかな笑顔になるアルクさん。
だがその表情が一気に暗い表情になった。
「お互いが学園を卒業して、それぞれの家の当主になってから久しぶりにあったアークさんは変わった。あの頃の楽しそうな笑顔はどこにいったのか、久しぶりにあった先輩は不機嫌で出世欲の塊のような人になっていたよ」
多分アルクさんが言っているのは父さんが出世欲に取りつかれていた頃の話だろう。
確かに父さんは昔出世欲に取りつかれていたが、それには母さんを本心から笑わせたいという父さんの考えがあってのことだったのだが赤の他人が見たら出世欲の塊に見える。
「最初こそおかしいと思っていたけど、アークさんは優秀だったから油断なんてするとこっちの家が潰されかねないから、そこまで気を配れなかった」
「……」
「で、それから数年。丁度ラウラさんがレイ君の妹になって1年ぐらいかな、アークさんの屋敷でパーティーが開催されたので行ってみたらさ衝撃の光景が広がっていたんだ」
「衝撃の光景……?」
と僕が言うとアルクさんは少しニヤッとした表情を浮かべた。
「あぁ私は衝撃の光景を見た。
ーーアークさんがレイ君とラウラさんを溺愛している光景をね」
「……は、はい?」
アルクさんが衝撃の光景と言うものだから一体どんな物なのかを気になり構えていたが、その口から出てきたのはまさかの僕とラウラを溺愛している父さんというのだから拍子抜けしてしまった。そんな僕の気持ちが分かったのかアルクさんは笑いながら続ける。
「そう、それそれ。まさにその通りの表情を当時の私も浮かべていたと思うよ。だって数年前に見た時の表情とは真逆なんだから、でもその時の表情は学生時代の頃の表情とそっくりだった」
「まぁ僕達兄妹は愛されてますね……」
確かに僕達は愛されていると思うがたまに度を越えてラウラや母さんにしばかれているのを見る。いつもやられているので学ばないのか、仕事で見せる優秀な頭脳はどこにいったと思う。
「多分だけどね、アークさんが変わったのはレイ君、君だよ」
「僕ですか……?」
「まぁ私の予想でしかないんだけどね。
君はなんか不思議な能力があるのかなって思ってしまうことが時々あるんだよ」
「僕に不思議な能力なんてないですよ、あったら嬉しいですけど」
「本当かい? なんかレイ君が関わった人達は不思議と良い方向に変わっていくんだよね。
ーーまぁ娘は変わってないんだが……はぁ少しは変わって欲しいものだがなぁ」
「ハハハ……」
確かにフローレンスは昔からあまり変わってない。
他の人達が良い方向に変わっていく中で自分の娘だけ変わらないのは不安になるのだろう。
「まぁでも君といれば流石に娘は変わるだろう。
ーーだからこれからも娘を頼む、いやお願いするよ」
と深々と頭を下げるアルクさん。
……なんか必死さを感じるのは気のせいということにしておこう。
それに僕自身、フローレンスと別れるつもりは毛頭ない。
「はい、分かりました。
これからもフローレンスに愛想を尽かされない様に頑張ります」
せっかく命の危機を乗り越えて彼女と付き合えたのだから、これからも勉強などを一生懸命頑張ろうと思う。
これといった人に比べて特出した才能がない僕に出来るのは人以上に努力し続けることだけなのだから。
「うん、頼んだよ。
ーーあっ、ところでさレイ君、夏休みなんだが何か用事はあるかい?」
「夏休みですか?」
まぁ大方“フローレンスと遊んで欲しい”とかだろうと思っていたのだが、アルクさんの口から出たのは驚愕の発言だった。
「もしレイ君さえ良ければさ
ーー私達の別荘に来ないかい?」
「……はい?」
次回から夏休み編に入っていきます





