生徒会室にて
「ごめん、僕ちょっと会議出てくるからみんな任せた!!」
と言って慌てた様子で出ていくレイ。
今日は生徒会顧問の先生との話とのこと。
「今日も忙しそうだね我らが会長~」
「だな、毎日何かしらあるよな」
トリスケール君とアルマンダさんはつまらなそうに呟く。日頃よく一緒にいる2人からすると毎日彼と遊べないのはつまらないのだろう。逆にラウラさんとルネフさんは書類に黙々と目を通している。
……本当に対極的なペアだ。
「ほらトリスケール君に、アルマンダさん、彼が帰ってくる前に出来る限り仕事減らしてあげましょう」
「へぇ~い……頑張りまぁす……」
「少し坊ちゃんの仕事減らせば遊べるか……ほいっす」
私がそう促すと渋々といった感じで目の前の書類に取り掛かる2人。
(まぁ一番寂しいのは私なんです!!)
役員のみんなの前では表さない様にしているが私はとても寂しい。
せっかく長年の思いが募って付き合い始めたのに彼は同時期に会長に就任したこともあって全然2人で恋人らしい時間を作れてない。お忍びデートも彼が町中で同年代数人を相手に立ち回ったので顔が知れ渡り、お忍びデートが出来なくなってしまった。
(でもあの時のレイはカッコ良かったです!!)
私を落ち着かせようとする穏やかな笑顔としつこく誘ってきた男子達に対しての冷たい目のギャップが私の心をとても興奮させた。レイは基本的にあまり怒らない性格なので怒ることが珍しい。
(でもやっぱり彼は穏やかな笑顔が一番良いですね、もう最高です)
「会長ーーってあっ、そう言えばもう会長はレイだったんだ。会長のことはなんて呼べばいいですか?」
アルマンダさんに言われて呼ばれ方を考えてみると確かに今までは殆ど“会長”と呼ばれていた気がする。私を名前で呼ぶのはそれこそ親かレイぐらいだった。
「私の事はライシングでもフローレンス好きな呼び方で構いませんよ」
私がそう答えるとアルマンダさんは少し考えるそぶりを見せると、少しにニヤッとした表情を浮かべた。
「じゃあハーストン夫人?」
「「ブッ!!」」
私を含めて数人が吹いてバランスを崩した。
吹いていなかったのはベスランドさんとトリスケール君のみ。
彼女達以外は全員吹いて驚いていた。
「あ、アルマンダさんは一体何を言っているんですか!?」
「いずれはそうなるんですから今のうちに慣れておかないと~」
「い、いずれって……ま、まだ早いですよ!!」
いつかはそうなりたいと思っているけど、まだ早い。
それに私達はまだ学生だ。流石にまだお互いの両親が認めてくれないだろう。
「あれ? じゃあ遊び?」
「そんな訳ないじゃないですか!! 本気ですよ本気!!
私はレイの事が大好きなんですから!!」
「「おぉ……」」
「あっ……!!」
しまったと思ったが時すでに遅し。
生徒会のみんなの前で自分の思いを叫んでしまった。
「こんな一途な彼女に愛されているレイは幸せですなぁ~
ーーそう思いませんかトリスケール君やい」
「その通りですなぁチャスさんよ」
「2人とも止めてください、恥ずかしいじゃないですか!!」
後輩2人におもちゃにされて恥ずかしい私。
いつもはレイが身代わりというか、そのポジションにいるが今日は運が悪くいない。
「まぁライシングさんの反応は予想通りとして、最近後輩クンカッコよくなったわね」
とベスランドさんが思い出したかのように言った。
私はその発言を聞いて、彼女の方を軽く睨む。
「ベスランドさん……? レイは私の彼氏ですからね? 奪おうなんて思ってませんよね?」
「奪う……フッ……燃えるわね」
何故かやる気を出してしまうベスランドさん。
「燃えちゃダメですからね!?」
「嘘よ、嘘。私人の恋人を奪おうなんて悪い趣味は持っていないわ」
「本当ですかね……貴方は色々と前科がありますから、心配です」
彼女は前からレイにちょっかいを出していたのを知っている。
そして私とレイが付き合い初めてからもちょっかいを出しているので気を抜けない。
「まぁ冗談はそれぐらいにしておいて、最近後輩クンがカッコよくなったと思わない?」
「貴方はどこまで冗談か分かりませんが……レイがかっこよくなった?」
レイは前からカッコいいのにいきなり何を言い出すのだろうかろ疑問に思っているとアルマンダさんが元気よく手を挙げた。
「あっ、それ分かります~!! 前から顔はカッコよかったのーー」
「“顔は”ですか?」
「ひっ……!!」
私は普通に彼女の方を向いたのに何故かアルマンダさんは怯えた表情を浮かべている。何か私の後ろにいるのだろうか?
「ライシングさん、貴方の顔今とても怖いわよ……」
「そうですか?」
「まぁ鏡を見ない限りは自分の表情なんて分からないと思うから仕方ないのだろうけど……後輩クンの人気があの事件以降高くなっているのは勿論分かっているわよね?」
「えぇ、それは勿論。彼女として誇らしいです」
レイはアクセルとの一件があるまで学園での扱いは“魔法が使えない学園創立以来の問題児”だった。でも彼はあの一件で今までの評価を一変させた。なんせ学園を脅かそうとしていたアクセル達相手に1人で立ち回り、この学園を守ったからである。
「今までお兄様を悪く言っていた方々が手のひらを反すのは見ていてあまり気分の良いものでは無かったですけど……全く調子がいいんですから」
と不満そうにつぶやくラウラさん。
レイの事を幼い頃からみている彼女からしてみれば、今の状況はあまり気分の良いものではないのだろうと思う。
「そのためか最近お兄様は人気があるんですよ……
ーー女子生徒から」
「は、はい!?」
「あっ、私の学年でも人気急上昇中だね」
「何ですって!?」
「私達の学年は……言わなくても大丈夫よね?」
「ま、ま、ま、まさかレイが女の子から人気出ていたなんて……!!」
それぞれの学年でのレイの評価が上がっている事を聞かされて不安になる。
前々からレイの評価が変わり始めたのは分かっていたがまさか異性からの評価も上がっているとは思わなかった。
「いや普通だと思いますよフローレンスさん。だってレイは顔良し、性格良し、家柄良しですからね」
確かにレイは結構な美形であり、あの穏やかな笑顔で見ると女子には効果抜群。性格はお人好しで滅多に怒らない。家柄は言わずもがなこの国の有力貴族のハーストン家。
「で、でもレイは魔法が使えないですよね……?」
「レイの強さはフローレンスさんが良く分かっていると思いますが……」
「え、えぇそれは勿論……」
彼は魔法が使えないので代わりに体術を鍛えている。元々彼に体術の才能があったのか今では学生間の戦いではまず負けない。大人が相手でもかなり普通に戦える。
「それだけの能力を持っていて女子が狙わない訳ないじゃないですかぁ~フローレンスさん」
「い、いやでもレイは……」
「レイは?」
「結構ズボラなところありますよ!! 朝弱いですし、気弱ですし」
と何故かレイの悪口を言ってしまう私。本能的にレイが奪われてしまうかもしれないと思ったのか、もしくは普段思っていたことが思わず口から出てしまった。
「確かにお兄様は未だに朝弱いです」
「あれ、そうなのラウラ?」
「はい、最近は少し改善されたのですが前は中々起きなかったです」
確かにレイは朝にとても弱い。
ラウラさんがいないと彼は何度遅刻しかた分からないだろう。
(私もレイを起こしたいです!!
彼の無防備な寝顔を毎日見れたら幸せです!!)
「確かにレイは前から朝に弱かったな。私が朝の練習に誘ってもあまり誘いに乗ってこなかった」
「ルネフ様、それはお兄様が朝起きたくないからです」
「なるほど……そうだったのか、断る時は毎回申し訳なさそうな態度だったのでそれ以上追及しなかったが、まさかそれが理由だったとは」
「朝弱い、気弱、魔法が使えないレイが今では生徒会長だとはねぇ……お姉さん驚きだわ」
「あのチャス様? 貴方様、お兄様と同学年ですよね……?」
「朝弱い!! 気弱!! 魔法使用不可!! 改めてレイ変わったなぁ」
「朝弱い!! 気弱!! 魔法使用不可!! のレイも成長したな」
と調子に乗る2人。
「ふ、2人ともこんな事レイに聞かれていたらどうするんだ!!」
流石にマズいと思ったルネフさんが2人を止めようとするが調子に乗り始めた2人は中々止まらない。
「いやぁ~ミラ大丈夫だって。今レイは会議だよ?」
「だな、まさか聞かれるなんて小説みたいな話があってーー」
「ーーごめんね、朝弱い、気弱、魔法使用不可の僕で」
「「えっ」」
と私達が声のした方を振り向くと、そこにレイがいた。
「やぁ、2人は好き勝手に言っているじゃないか」
ただいつもと違うのは笑っているが目が全く笑っていない。
そしてこの表情を見て、彼と親しい人間は察する。
((あっ、これ絶対怒ってる……))
彼はあまり怒らない。
だけど怒るときはとても怖い。
「あ、あれお兄様は先生との打ち合わせだったのでは?」
そう言われ部屋の中にある時計をみるとまだ彼が出てから10分ぐらいしか経っていない。いつも打ち合わせだと30分ぐらいはかかる。終わるには早すぎるのではなんて思っていると。
「あぁ、先生との会議が先生の用事で中止になったから戻ってきたんだよ。
ーーというか、みんな随分僕のこと酷評してくれるじゃないか?」
どうやら私達の話を最初の方から聞いていた感じだ。
(あっ……そう言えば私“結構ズボラなところありますよ!! 朝弱いですし、気弱ですし”なんて言っていましたね……ひょっとしてマズいのでは?)
「あ、あの……その……ですね……え、えっと……」
「だ、だな……あぁ」
「アリーヌ先輩とミラ、1年生達は今日は帰っていいですよ。
ーーそれ以外は残ってね?」
「「はい……」
と私達はレイに怒られるのであった。





