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親の権力には親の権力を

始めこそ少し機嫌が悪かったフローレンスだが手を繋ぎながら歩いていると大分機嫌が直ってきた。


「ねぇレイ、次はあそこに行きましょう!!」


「はいはい、行こうか」


元気なフローレンスに連れて行かれるまま色々な場所に行く。

雑貨屋、本屋なんかを2人で回るだけなのに、フローレンスがいると何もかもが楽しくなる。

……あぁ本当最高に幸せです。この笑顔を見ているだけでここまでの人生頑張ってきた意味があると思う。


「どうしたんですかレイ? なんか満足そうな顔をして」


フローレンスが僕の顔を覗き込んできた。

改めて整った顔だなぁと思う。


「ん、いや何でもないよ」


流石に今の状況が幸せ過ぎて顔が緩んだとは言えないので何事もなかったかのように取り繕う。


「そうですか、変なレイ」


「そうかなぁ……フローレンスほどじゃないつもりだけど」


「ちょっとそれってどういう意味ですか!?

もう私怒りました、本当ですからね」


と頬をぷくーと膨らませて怒るフローレンス。

何だろうこの可愛い生き物、動作の1つ1つが可愛いんだよなぁ。

学園だと完璧超人で大人びているフローレンスだが、たまに見せるこの年相応の動作が良い。

こうやって彼女をからかうのにはこういう彼女の面を見たいがためにやっている。


「お~いフローレンス」


「ぷい」


とそっぽを向くフローレンス。

……ヤバイ、僕の彼女可愛すぎる。リアルで“ぷい”なんて言うの初めて聞いた気がする。


「あの~フローレンスさん?」


「ぷい」


「怒っているとせっかくの可愛い顔が台無しだよ」


「……あの店」


「あそこの店?」


フローレンスが指をさした方をみると、そこでは屋台で美味しそうなドーナツが売っていた。店名をみると学園でも美味しいと話題になっていた店だった気がする。


「ドーナツ?」


「買ってきたら許してあげます……買ってこなかったから今日ずっとこのままです」


随分可愛らしい要望である。

勿論僕がその願いを叶えないはずがなく。


「それは困った。うん、分かった買ってくるよ。1つでいい?」


「2個お願いします……」


「分かった」


と僕はフローレンスを近くのベンチに座らせてドーナツを買いに行った。

少し怒らせ過ぎたかなぁ……と考えながら並ぶ事、数分無事にフローレンスと僕の分のドーナツを買えたので彼女の元に戻ることにした。


「フローレンス買ってーー」


「あっ、レイ!! 助けてください!!」


僕の声が聞こえた途端、こちらに向かってきて、そのまま僕の後ろに隠れてフローレンス。


「助けてってどうしたのーー」


一体何があったのだろうかと思い、さっきまでフローレンスがいた方を見ると、急に目の前が少し暗くなった。


「ーーおい、お前がその女の連れか?」


と目の前に僕と同年代ぐらいのガラの悪そうな男子が3人立っていた。

……あぁ何となく状況を察してしまう僕。


「聞いてくださいレイ、この人達しつこいんです!!

何度私が断ってもしつこく誘ってきます!!」


「なるほどね……」


どうやらフローレンスはこの3人からナンパをされたいたようである。

まぁ確かに彼女のような可愛い子がいたら誰だって声をかけたくなるだろう。


「おい、お前」


3人の内の一人が僕の方に向かって出てきた。

多分だがこの男がこの3人の中ではリーダー格の様である。


「僕かい?」


「痛い目あいたくなきゃその女置いてどこか行け」


とよくゲームでいるようなヒロインをナンパする野郎が言うようなセリフを言うリーダー格の男。


「さっ、行こうかフローレンス。怖かったよね?」


僕は彼らを無視してその場を去ろうとした。

大体こういう輩は無視することが一番である。

それに今一番やらないといけないのはフローレンスのフォローだ。


「怖かったです」


と怯えた様子のフローレンス。

自分より体格の良い男子達に囲まれて怖いのは当たり前だろう。だって未だに僕の服を強く握りしめているのだから。そんな彼女に対して僕は出来るだけ優しく声をかける。


「だよね、ごめんね1人にさせちゃって。ドーナツ買ったから食べようか」


僕はさっき買ってきた揚げたてのドーナツを1つ渡すと、彼女は笑顔になった。

とりあずこの場から去ろうと僕は彼らに背を向ける。


「はい、食べます!! レイも一緒に食べましょう」


「俺の話を無視すんじゃねぇーー!!」


「ーー無駄な動きが多いね」


と僕は後ろから殴りかかってきた相手に対して振り返り際に裏拳をみぞおち付近に当てた。


「ぐほっ……!!」


振り返る際の勢いをそのまま使ったので結構痛そうである。


「殴るのなら喋らず最速で相手に当てるようにしたら?

それに君は無駄な動きが多い上に、変なところに力を入れているね」


「お、お、お前身体能力強化系の使い手か……!!」


僕の一撃をくらった男は他の2人に支えてもらいながら立ち上がりながら、そう言った。


「さぁどうだろう」


実際僕はただ魔法使えないので体術を鍛えただけなんだが。

だが相手が誤解したままなら、こちらから何かを言う必要はないのでそのままにしておく。


「だ、だがなこっちは3人だ……!! 数ではこちらが勝っている!!

ーー俺達を怒らせたこと後悔するなよ!!」


と3人はこちらに対して喧嘩を吹っかけてきた。

その様子を見た僕は手に持っていたドーナツをフローレンスに渡すと軽く準備運動を始める。

……ちょっと今日の僕は機嫌が悪いので手加減出来るか分からない。


「そうなんだ……じゃあ僕も。

ーーデートを邪魔したこと後悔しないでね?」




2分後……


「さっ、フローレンス行こうか」


「え、えぇ……行きましょうか。

はい、ドーナツです」


「ありがとう」


フローレンスからドーナツを返してもらう。

良かったまだ温かい。

そして……


「ちくしょう……」


僕らの後ろではナンパ3人組が倒れている。


「それにしても貴方って強いですよね……」


「僕は普通のつもりだよ」


まぁ僕の場合、いつもの練習相手がミラのお父さんかオピニルさんなのだが2人とも異常な強さを持っていて、一撃がかなり重いミラのお父さん、手数が多くて且つその一撃一撃が結構な威力があるオピニルさんなので結構鍛えられている。なので学生程度ならあまり苦戦せずに戦える。


「お、お前……よくも!!」


と倒れていたうちの1人がフラフラと立ち上がった。


「へぇ……まだやるの?」


「うるせぇ……庶民の分際で俺に恥をかかせやがって!!」


「恥をかかせてって、そっちがふっかけてきた事でしょ?」


それに僕は庶民ではない。

フローレンスの頼みで庶民のフリをしているだけである。

そしてこの男多分貴族の息子なのだろう。


「お、俺の親父はこの国の有力者なんだぞ!! 息子の俺が親父に言えばお前みたいな庶民は痛い目みるぞ!!」


「へぇ……そうなんだ」


僕の父さん、この国のナンバー2なんですけど?

それこそ僕が父さんに告げ口すればこの男の父親の立場が危うくなるかもしれない。

父さんは僕やラウラにだだ甘なので本当にやりかねないの今は我慢。


そんな僕の気持ちを知らないのだろう、目の前に男はまくしたてる。


「ほら怖いだろ!! ここで俺に謝って、その女を大人しく渡せば許してやるよ!!

俺は貴族の息子だからな寛大な心を持っているんだ!!」


と言っていると他の2人も元気を取り戻したのか同じように調子に乗ってきた。


「そうだ、こいつの親父は国の中でもかなり上にいるんだぜ!!

庶民のお前らとは格が違うんだよ!!」


「お前ら庶民が貴族の俺達に逆らおうなんて馬鹿なんじゃねぇの?」


「はぁ……」


僕は思わずため息をこぼす。


「れ、レイ?


「ごめんフローレンス、お忍びはもう出来なくなりそう」


「どういう事ですか?」


「まぁ見てて」


と言うと僕は再び彼らの方を向いた。


「さっきから聞いていれば君達は“貴族の息子”や“親父が~”とか自力で手に入れた物を何1つ語っていない。君達はそれ以外に取り柄がないのか? いや無いからそれでしか話せないのか」


「何だと……庶民の分際で!!」


「一応聞くけど君達は王立アスフェルト学園の生徒かい?」


「それがどうした!!」


「じゃあこの顔覚えているよね?」


と僕はお忍びデート用に着けていたメガネと帽子を外し、お忍びデート用に整えた髪型をいつものに戻した。すると彼らは途端に慌て始めた。


「お、お前まさか……!!」


「では改めて自己紹介を。

ーー王立アスフェルト学園、高等部生徒会会長、レイ・ハーストンだ

さて僕も君達の事を父親に言おうかな~? 僕の父親、かなり僕に甘いから君達どうなるかな?」


彼らもどうやら自分が置かれている状況を察したようである。

僕の父親アーク・ハーストンはこの国のナンバー2。

それこそ僕の父さんに命令できるのはこの国の王か母さんだけだろう。

……こう考えると王と同じ立場の母さんって一体何者?


「くそっ……」


彼らはマズいと思ったのだろう、その場から悔しそうに去っていった。

個人的にはもう少し慌てる姿を見ていたかったのだが問題が解決したので良しとしよう。


「ふぅ……全く時間の無駄だ」


「お疲れ様ですレイ、はいドーナツ」


一度外した帽子とメガネを付け直すと後ろで見守っていたフローレンスからドーナツを渡された。ふと彼女の方を見ると2つあったはずの彼女のドーナツが1つ無くなっていた。

……この子、いつの間に食べたんだ?


「ありがとフローレンス。まさかあいつら僕の顔分からなかったのかよ」


僕がメガネや帽子を外してようやく分かったようで、戦闘時は全く気が付いていないようであった。


「それだけレイは変装が上手かったんですよ」


「何とも素直に喜べないなぁ……」


フローレンスは同年代の庶民の少女が着ていそうな服を着ているのにも関わらず、明らかに庶民じゃない雰囲気をまとっているのがすぐ分かる。それに比べて僕はなぁ……と思うと何とも言えない気持ちになるのであった。

次回もお忍びデート続きます

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